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"落日"-スタートアップの終わりに思うこと-

先日、決済サービスのOrigamiがメルカリに買収されることが発表されました。各メディアの方々が取材して、その詳細も明らかになってきました。

康井義貴社長をはじめ、オリガミ幹部は資本調達に走り回ったが、出資先が見つからずに八方ふさがりとなり、最後にたどり着いたのがメルカリだった。康井社長は1株1円という破格での売却の代わりに従業員の雇用維持を申し入れたが、従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」(オリガミ元社員)という。

僕は、この記事に感情移入しすぎてしまってるとは思う。この記事を見て、Origamiに対して心無いことを言う人たちをみて、悲しくて悔しくて、勝手に涙が出てくる。TwitterやFacebookに感情にまかせて書いたんだけど、なんだか自分の思考を整理するためにもここに書きたいと思って。

一応、僕はOrigamiの経営陣やスタッフ、株主の方々と一切利害関係はありません。ただ単に、この風潮ってどーなんだよ、それでいいのかよって思いで書いてます。勝手に。

失敗を叩く風潮

今回のOrigamiの件が起こる以前にも、友人、知り合いのスタートアップがいくつか経営破たんしました。その度に、そのことを叩く/批判する方々が少なからずいます。僕はそれを目にするといつも、スタートアップの終わりに対する評価が、これでいいんかなって思うわけです。

スタートアップの性質

"スタートアップ"とは、今まで世の中に無かった新たな価値を世の中に生み出し、新たな市場そのものを創造し、もしくは既存市場を奪い、爆発的な急成長を目指す企業体のことを指す。と思っています。

それは、例えて言うなら、道もないジャングルや荒野を、運転の仕方も分からない状態で、車を組み立てながら、それでも最初っからアクセルベタ踏みで、その先の夢に描いた楽園を目指す集団です。

いろんな障害物にぶつかるよ。てか障害物しかないよ。ひとときも安定することはなく、常にギリギリのところをベタ踏みで攻め続けていくんだ。

だから、終わるときはホントに派手に終わる。大クラッシュする。アクセルベタ踏みだもん、当然。夢の楽園にたどり着けるのは、1割以下。9割以上失敗するんだよ。そもそも、そういうチャレンジ。

チャレンジと結果

確かに、スタートアップの失敗によって、多くの従業員はリストラされ、生活基盤が崩れて大変な思いをされるだろうし、投資家は多大な損害を被る。正すべき経営方針や、間違えた経営判断もあったかもしれない。「経営者は結果が全てだ」という意見もわかる。わかるよ。でもさ、こういう終わり方をした会社はホントにダメな会社?ダメな経営者?許されないような罪を負って、二度とチャレンジの機会は与えられないの?寄ってたかって死体蹴りみたいな事やって楽しいかよ。

そんなんやってたら、この国でチャレンジするやつは増えやしないって。
僕らは"チャレンジしたこと自体"と"結果"を切り離して評価できるでしょう。したり顔で「オフィス賃料ガー」「戦略ガー」とか言う前にさ、

「ナイスチャレンジだったね。おつかれさま」

って言おう。一言でいい。最初に、それ言おうよ。それから"結果"に対して、分析や評価、批評すればいいじゃん。リスペクトをもって。

そういう文化でありたいよ。これはもう、僕の願いだ。

自身の体験から

僕自身も、このnoteで何度か触れてますが、今経営してるこの会社を潰しかけてます。Origamiに比べると、とても小さな規模ですが、調達した資金を使い切って、ギリギリの状態まで追い込まれた。
それでも、なぜいま、このリーボが残って、新しいチャレンジができてるかっていうと、周りの方々が、温かい言葉をかけてくれたからなんだよ。
「ナイスチャレンジだった」「もう一回できる」「だいじょうぶ」
そんな言葉だけで、本当に救われるんだよ。勇気が湧いてくる。
もちろん、迷惑をかけた方々には正面から向かわないといけないし、責任も負うのですが。

Origamiのことについていうと、一番悔しかったのは、きっと康井社長だとは思う。別の記事にはVCから株を買い取った上で買収に応じた、ともあった(定かではないけど)。一生懸命経営してきた会社の価値を1株1円にしてでも、なんとか従業員の雇用を守ろうとした。
僕には、最後まで経営者としての責任を全うしようとしたように見える。
それでも従業員の方々からしたら理不尽な解雇かもしれないけどね。

挑戦者たちへの讃歌

僕は、新しいことへの挑戦はすべからく素晴らしいことだと信じてる。
たとえ、その先に失敗したとしても、その挑戦自体は誰にも否定することはできず、輝きを持っていて、リスペクトされ称賛されるべきだと思っている。
だから僕は、これからもすべての新しいことに挑戦する人たちを応援する。

幸いにも、いまのクリエイティブの仕事を通して、いくつかのスタートアップのお手伝いができていて、これは本当に楽しく、やりがいを持ってやれている。もちろんスタートアップに限らず挑戦している方々はいらっしゃるし、クリエイティブは常にそのサポートとなる。

僕自身、リーボ自身も、今はまだ爪を研いでいる時期だけど、必ずまた大きな挑戦に踏み出していく計画です。

最後に、素晴らしい挑戦で僕らに勇気を与えてくれた、康井社長を始めとしたOrigamiのスタッフの方々、本当にお疲れさまでした。ナイスチャレンジでした!