二十五通目　＃宛先のない手紙

死後の世界での生活はどうでしたか？あなたも現世での未練を晴らし、無事成仏することができて良かったです。

私があなたと出会ったとき、私はそれまでの人生で経験したことのない深い闇を彷徨っていました。そんなとき私を救ってくれた一筋の光が、あなたの歌う唄でした。

あなたも生前、理不尽な世界に憤り、未練を残したままこの世を去ったのでしょう。私も当時は世界の不条理さを嘆き、自分の無力さにやるせなさを感じていました。その苦しみの中で、あなたの紡ぐ歌詞が私の心の支えになり、あなたの歌声がそっと寄り添ってくれました。

それから数年経ち、改めてあなたの歌を聴き直してみました。同じ作品を時間が経ってから鑑賞するとまた違った感じ方をする、っていうのを身を持って体験しました。

当時は世界を嘆き憎んでいるように聞こえた唄も、今ではそれだけじゃなく世界の美しさも歌っている唄だと感じました。それだけこの数年で自分自身も大きく変わったんだということに気づかされました。

あのとき私を闇の中から救い出してくれてありがとうございました。そして、改めて世界の優しさと温かさに気づかせてくれてありがとうございます。これからもずっとあなたのファンです。