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十通目 #宛先のない手紙

初めて君に会ったときには今もこうしてつながっている関係になるとは思っていませんでした。ただ同じ期間に同じ場所で働いて、それが終わればさよならする、それが当然だと思っていました。

と言っても頻繁に連絡を取るわけでもなく、普通に仲がいいというのともちょっと違う不思議な関係ですね。それは君の重大な秘密を僕にだけ教えてくれたからでしょうか。確かに前々からいろんな相談には乗っていたけど、なぜその話を僕にだけしてくれたのかはいまだに理解できないでいます。

その秘密を知ることで今までの君の話に一本筋が通ったのは確かです。なんだかそれが昔の自分を見ているようで、放っておけない存在になりました。年端もいかない少女が自分の人生を諦めているのはやっぱり悲しいです。

僕にも特に死ぬ理由がないから生きていただけの時期がありました。でも今は違います。明日死んでもいいと思えるほど充実した日々を過ごしています。

そういえば君に手紙を書くのは初めてじゃなかったね。そのときにも書いたけど、君には死にたくないと思えるほど幸せな人生を送ってほしいし、そのために僕ができることはなんでもしてあげたい。君はもっと幸せになっていいし、なれると思っています。

君と出会ってまた一つ自分の中に明確な指針ができました。大切な人を幸せにするためにお金が必要ならそのぶん稼げばいい。お金で解決できることはたいした問題じゃない、と言えるまでになろうと決意しました。

会おう会おうと思いながら結構な時間が経ってしまったね。いつ何があるかわからないから、会いたい人には早めに会いに行こう。そう思った雨の日の午後九時。


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