十八通目　＃宛先のない手紙

お元気ですか？あれから一度もお会いしていないので、もうかれこれ10年以上もご無沙汰していますね。

あなたは今回書いている手紙の中では、一番古い付き合いの人になります。それはすなわち、自分の人生の中で一番初めに大きな影響を与えた人ということになるかもしれません。

あなたは生徒に人気がある先生として校内で有名で、クラス替えのときにあなたのクラスになれたことが嬉しかったことを覚えています。

あなたは非常に教育熱心なうえに、休み時間は生徒に交じってドッジボールをしたりと、とても生徒思いの良い先生でした。後にも先にも、あなた以上にかっこいい先生に出会うことはありませんでした。

あなたとのエピソードでとても印象に残っているものが一つあります。中学受験が近づき、休み時間も友達と遊ばずにずっと勉強していたときのことです。そんなある日、あなたはホームルームの時間にこのようなことを言いました。

「みんなが野球やサッカーを頑張っているように、髙橋は勉強を頑張っているんだぞ。みんなの中では勉強よりもスポーツしている方が偉いと思っている人もいるかもしれない。でも髙橋は自分の将来を考えて、みんなと遊びたいのを我慢して勉強を頑張っている」

うろ覚えですが、このような感じだったように思います。本当はみんなと遊びたいのにも関わらず、断らざるを得ない状況を察して、うまくフォローしてくれました。それがとても嬉しかったことは今でもよく覚えています。

あれから10年以上経ちますが、今も元気で先生を続けているのでしょうか？他にも様々な教育者に出会い、自分自身も人に教える立場になってみて思うのは、あなたは教育者の鑑だったということです。

今後同窓会とかでお会いできる機会もあるのでしょうか？私もいい歳になったので、お酒を飲みながら色んなことを語り合えたらいいなと思います。