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■龍馬が語る『龍馬百話』~第四章「日本の洗濯➀」~

今回から龍馬が語る『龍馬百話』は、第四章「日本の洗濯」に突入です。第33話「薩摩藩」から。

【第33話 薩摩藩】

私が脱藩後、まず目指していたのは薩摩藩だ。かつて小龍さんから、薩摩のことを聞いていた。反射炉があって大砲を造っていて、桜島湾には軍艦が浮かんでいる…。だから、ぜひこの目で見てみたいと思っていたのだ。

そして、庇護を受けている西郷さんや小松さんに、自分たちが海軍塾で身につけた航海術や海運業で儲ける仕組みを提案したところ、カンパニー創りに協力してくれるという。やはり薩摩は、新しい国づくりに欠かせない、と感じたものだ。もっとも薩摩のほうにも、思惑はあったようだが…。

【第34話 亀山社中】

慶応元年閏5月、小松さんや小曾根さんの支援で、亀山社中が長崎に創設された。私はその時、薩長連合に向けて動き回っていたから、同志の近藤長次郎や高松太郎たちが頑張ってくれた。亀山社中は、貿易商社兼海軍、給与は皆3両2分。陸奥なんかは、給与が少ないと文句を言っていたようだが、不足なら自分たちで稼げ、ということだ。

【第35話 薩長連合のつまずき】

亀山社中結成の頃、私は薩長連合計画を実現させるため、中岡や土方久元らと協力していた。まず大宰府に向かい、三条卿らに謁見して時勢を論じ、薩長連合の話もして賛同を得た。そして長州に行き、桂さんに薩長連合の必要性を説いて、下関で西郷さんと会談することを承諾させた。骨の折れる説得だったが…。

あとは、中岡が西郷さんを薩摩から連れてくるのを待つだけになっていたのだが、西郷さんは途中、急遽佐賀関から京都に向かってしまい、下関には来なかったのだ。当然の如く、桂さんたちの失望と怒りは凄まじかったが、中岡と二人でなんとか鎮めた。自分らも落胆したが、まだ機が熟していなかった、ということだろう。

【第36話 苦心の工作】

私は、亀山社中を活用した和解策に動き出した。長州からは、薩摩名義を借りてままならない最新兵器の購入をしたい、と要望が出ていた。そこで、社中の仲間に武器購入の手配を任せ、私は西郷さんと交渉だ。西郷さんからは、名義貸しの代わりに兵糧米の補給を願いたい、との希望があった。その運搬を社中が引き受けるとして、桂さんに伝えた。

両藩それぞれに異議はなく、これをきっかけに接近を深めていくことになった。長崎では、社中の仲間が活躍した。まずグラバーから最新兵器を購入して、薩摩の船で長州への入港に成功。そして長州藩は、薩摩名義で汽船ユニオン号の購入にも成功した。実際にこの時、長次郎は本当によく頑張ってくれたのだが・・・。

【第37話 近藤長次郎の自刃】

長次郎さんのことは、本当に残念でならない。小さいころから秀才で、あの小龍先生の弟子にもなった長次郎は、私と一緒に海軍塾で学び、亀山社中でも苦楽を共にしてきた。長州藩の武器購入の際は、その斡旋に大活躍してくれた。しかし、それが仇になってしまったか…。

長次郎は、長州からの謝礼でイギリス密航を企てたが、それを社中の仲間に秘密にしていたのがバレて、腹を切らねばならなくなった。どうして私や仲間に相談してくれなかったのか。本当にイギリスに行って学びたかったのなら、ほかにやり方はあっただろうに…。結局は、企みが多く、誠実さが足りなかった長次郎自らが、この結果を招いてしまったのかもしれない。

(「日本の洗濯」つづく)