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■龍馬が語る『龍馬百話』~第六章「世界の海援隊②」~

前回に引き続き、第六章「世界の海援隊」。第56話「海援隊の事業内容」から。

【第56話 海援隊の事業内容】

海援隊はその約規に掲げた通り、「運輸・射利・開拓・投機」といった商事活動や運輸、貿易業が主要な業務であったが、「隊中修業分課」とあるように学校も兼ねていたのだ。「政法(法律や経済)・砲術・航海学・語学」など、各々の適正によって隊士を学ばせていた。

この商法(貿易ビジネス)と教育、それに軍事を合わせた三つが、事業内容の三大柱だった。さらに後に、これに出版事業が加わることになる。

【第57話 かきがら(牡蠣殻)人生論】

海援隊が結成された頃、乙女姉さんへ近況報告をしたことがある。そこでは、自分を「浮き木の亀」に、世の中を「かきがら」に見立てた。順風満帆ということなどなく、理不尽な世の中に生きてはいるけれど、突き詰めてみればそれはそれで面白い、ということだ。しかし、まさかこの後間もなく、いろは丸の処女航海で事故が起きてしまうとは・・・。

【第58話 いろは丸事件、勃発】

♪今日を始めと乗り出す船は、稽古はじめのいろは丸♪と、船歌を奏でて長崎を出港したいろは丸が、いきなり衝突沈没事故に見舞われる。相手は、紀州藩船の明光丸だ。

双方、鞆の港に上陸して交渉を開始したが、紀州側は御三家の威光を笠に、実に不誠実な態度に終始した。その態度に怒った隊士が、斬り込みをかけようするのを私は、勝算があるから堪えるようにと制したけれど、私にも怒りが沸き上がっていたのは当然である。

それから、大阪にいる隊士への手紙を皮切りに、以後2か月の間にこの事件対策に関わる手紙を十数通、様々なところに送り、その解決に精力を注いだものだ。

【第59話 いろは丸事件、談判】

紀州藩との交渉は、命懸けになると覚悟していた。だから下関の伊藤家には、守ってほしいことを、三吉くんにはお龍のことをお願いする手紙を書いたのだ。

交渉には、万国公法を使って戦うと決めていた。国際法にある海上航法に照らして、有無を言わせぬ論法を前面に出していくと。私の人脈も駆使した。様々な有力者や実力者に情報を流したり、また後藤象二郎や五代才助には交渉の前面で働いてもらったりした。

そしてこんなPRソングまで作って、世論を味方に戦ったのだ。♪船を沈めたその償いは、金を取らずに国を取る♪

【第60話 いろは丸事件、解決】

紀州側に非があることは、衝突の際、甲板に一人も士官がいなかったこと、そして、二度も我がいろは丸に衝突してきたことを見れば、明らかだった。しかるに紀州藩や、明光丸船長の高柳楠之助の態度は甚だ無礼であり、いたずらに交渉の日時を延ばしてにかかっていた。

それでも、後藤と共に紀州の奉行へ出かけて議論を進め、いよいよ英国海軍の提督まで関わるところまできた。そこまできてようやく紀州藩は、薩摩の五代才助に調停を依頼したというわけだ。その調停によって、賠償金八万三千両という圧勝を獲得した。

(「世界の海援隊」おわり)