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「丹後の天酒、至極なり」”ソロの細道”Vol.26「京都」~47都道府県一人旅エッセイ~

京都と言えば、修学旅行の主要な行き先の一つであり、沖縄の高校生にとってもそれは同じだった。

そのタイミングで初の京都へ行き、あまり寺社仏閣が無い沖縄人が金閣寺や清水寺といった有名なお寺を見て感動する、ということも多い。

といいつつ私の高校はというと、生徒の投票によって「東京&北海道プラン」が選ばれ、京都へ行くことは無かったのだが。

ただ私自身は小学生の頃に家族で北陸と京都へ旅行をしたことがあり、その際に初めて「御朱印帳」の楽しさに気付き、金閣寺や銀閣寺、清水寺などのお寺を祖父母と共に回ったことは良い思い出だ。


そんな京都には、仕事で数年に一度くらいのペースで訪問することがあり、その度に空き時間を使って寺院巡りを楽しんだり、大阪出張のついでに初の祇園祭を見物したり、親を連れて嵐山に紅葉狩りへ出かけたりと、なんだかんだちょくちょく訪れているのだけれど、記憶に残っているものの一つが京都の丹後地方での思い出だ。

数年前の年末年始に一週間の旅をした際、新潟→富山→石川→福井と回って来て最後に訪れたのが京都で、福井の小浜市から舞鶴市へ。

そして宮津市の天橋立や伊根町の舟屋が最終目的地だったのだけれど、そこで出会いがあった。

最後の夜の宿泊場所というのが、天橋立駅の旅館。楽天トラベルで宿泊先を探していた時に偶然見つけた宿だった。

私は長期の旅においては、その土地の居酒屋をハシゴして夜遅くにホテルに戻り、そして始発で出発するという行程がデフォルトなので、宿泊先は駅の近くで安いところを探すことが多いのだが、その宿はそれなりの値段がしたものの「日本で唯一、日本酒ソムリエの店主が厳選した日本酒を振る舞う」と説明があり、旅の最後の夜の締めくくりにうってつけだと考えたのだ。

その日は朝に敦賀を出発し、舞鶴を観光しつつご当地グルメのホルモンうどんを食し、そして宮津の名酒場でほろ酔いになった後に天橋立駅に到着。

そして駅から歩くこと数分、出会いの場となる宿へと到着したのだった。

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事前の予約時に「食事を済ませてから到着するが、日本酒だけは楽しみたい」ということを伝えていたので、夕食無しプランではあるものの店主厳選の日本酒と自家焙煎珈琲が楽しめるバー”珠庵”を開けて待っていてくれた。

年始の時期ということもあって客は私のみ。店主と1対1で日本酒の素晴らしさについて語りながら、店主が振る舞う京丹後地方の酒を嗜む。

店内はジャズが流れ、ゆったりとした時間が流れる。酒好きにとっては正に至福の時だった。

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この出会いの中で知ったことといえば、「丹後の酒は旨い、そして歴史がある」ということと、店主がプロデュースするイベント”丹後天酒まつり”が開催されているということ。

それを知った時に頭に浮かんだのは、全国津々浦々で美味しい肴と酒を求めて共に旅をしてきた飲み仲間達の顔だった。

そしてその場で店主に「今年の天酒まつりの時期に、仲間を連れてまた来ます」と約束を交わす。

その約束が果たされたのは、それから約5カ月後のこと。第6回丹後天酒祭りでのことだった。

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日本各地の出張先から集った4人の仲間たちと共に参戦したこの祭りは、我々の想像以上に楽しく、そしてこうした日本酒イベントの素晴らしさを知るきっかけになった。

丹後地方にある9つの酒蔵全てを周り、その場所場所でお酒とフードを楽しむ。

バスや電車での乗り換えもサポートされているので、参加客はほろ酔いになりながらも移動を苦にせず、二日間を思い思いに楽しめたこのイベントは、主催者側の苦労を察しながらも、参加したからにはと全力で楽しませてもらった。

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それぞれの酒蔵で美味しい銘柄との出会いもあり、なかなか東京の酒場では見かけない丹後の日本酒を嗜み、また真摯に酒造りに向き合っている杜氏さんとも会話を交わし、そして大勢の日本酒ファンと触れ合う。

正に大人の遠足だ。夢のような時間だった。


もちろん1日目の宿泊先は、この出会いの場となったあの宿。

店主から皆で美味しいお酒を振る舞われ、その日の酒蔵巡りの感想を語り合う。贅沢なひと時を過ごした。

まあ、どれほど酔っていたかは、宿で食べた夕食の写真のブレ具合でも想像できてしまうのだけれど。

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「また次回も参加しますんで」と店主と交わした二度目の約束は、去年そして今年とまつり自体が開催中止となり、いまだに果たされていない。

共に行った仲間とは、「今年もまた中止だね」と落胆しつつ思い出話を口にしていた。

そして遂に、このままいけば来年にはようやく開催されるという。


日本酒好きが集い、そして多くの酒蔵を巡って飲み歩くツアーは、正直このご時世で嫌われる内容なのかもしれない。

しかしそのツアーに堂々と参加できるということこそが、この世界がようやく次の段階へと移ったという証明なのだろう。

宿はというと、この時期はずっと休業をしており、来春にはリニューアルが完了するようだ。

新しくなった”酒鮮の宿”に皆でまた泊まれる日が、待ちきれない。


(おまけ)

日本三景・天橋立、そして伊根の舟屋の写真を掲載しておきます。

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