ブラック企業で下積み仕事を経験した人の胸をえぐる映画「アシスタント」

こんにちは。テレワークの会社員です。

最近は、週に3~4本、映画を観ています。うち、映画館で1~2本、家で動画配信サービスで観るのが1~2本ぐらい。徒歩圏内に、シネコン、ミニシアターの両方があり、どちらも通っています。

最近観たなかでひときわ胸をえぐられた、映画「アシスタント」について、記録します。

予告編はこちら。

2019年製作のアメリカ映画。監督は、ドキュメンタリー出身のキティ・グリーンです。

セクハラで告発されたハリウッドの映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインをボスに持つ(とにおわせている)、新人アシスタント・ジェーンの苦悩の1日を淡々と描いているのですが、観客は自然とジェーンに感情移入をし、その1日を異様な緊張感で疑似体験してしまう、という映画です。

ハリウッドで絶大な権力を持っていたハーヴェイ・ワインスタインの、30年に渡るセクハラを告発したニューヨークタイムズの記事が出たのが、2017年。その後、ワインスタインが女優を含む80人以上からセクハラ告発を受け、16年の禁固刑を言い渡されたのが2020年。

「#Me Too」運動の只中で製作されたのが、「アシスタント」です。ただし、ボスのセクハラ行為はほのめかされているけれど実名は出ないし、明確な描写はありません。

対照的なのが、同じくワインスタインへの告発をテーマにした「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」、2022年製作。

予告編はこちら。

この映画は、ニューヨークタイムズの記者を主役とし、記者たちがワインスタインのセクハラの被害者たちに取材をして記事を公開するまでを描いています。こちらは、しっかり実名が出ており、エンターテインメントとして盛り上がる映画です。ワインスタインにセクハラ被害を受けた女優のアシュレイ・ジャッドが本人役で出演しているし、グウィネス・パルトローも電話で出演します。

一方の「アシスタント」は、新人女性アシスタントであるジェーンの一日の仕事(というか、作業)を、ジェーン目線で淡々と描いています。セクハラがはびこる会社は、抑圧的な環境であり、当然パワハラも起こっているのです。過去にブラック企業で下積み的な長時間労働をしたことのある者(私)には、ひときわ胸にしみる手法です。

私の場合は、ビジョンを語るのがうまい上司につられて働いてしまっていたんだけれど(いわゆるやりがい搾取か)、つらいのは長時間労働ではない。やっていることが成果になる実感がないのがつらかった。成果の実感があれば、いくら長時間労働をしても、それはブラックではない(そもそも社畜タイプ?)。

ジェーンの場合は、「いつかプロデューサーになりたい」という気持ち以外、救われる部分が何もない。自分と対等に会話してくれる社員がいないこと、終わることのない雑用、失敗するたびにボスに罵声を浴びせられて謝罪メールを書かされること。

まだ夜明け前に出勤し、電気やPCをつけて周り、ボスの部屋の掃除、配達物(水とか)の配置、会議資料の印刷、配布といった大量の雑用。労働時間はおそらく1日15時間ぐらい、加えて休日出勤。アシスタントチームの先輩2人はジェーンを仲間に入れず、用事があるときは紙屑を投げつけて呼び、クレーム電話等の雑用をすべて押し付ける。ボスに謝罪メールを書くときだけは飛んできて謝罪のテンプレを教えてくれるが、ジェーンに辞められたら自分たちが雑用をするはめになるのが困るからか?

全社員が退勤し、ボスから「帰っていい」と許可が出てから退勤ができる。いつかプロデューサーになりたいジェーンは、そんな毎日に耐えているけど、自分より年若いアシスタントとして採用された子がボスのセクハラに遭っているのではと気づいてから、ある行動を起こし、、というのが山場。ジェーンの1日は終わりをつげるが、セクハラの組織的な隠ぺいに押しつぶされるのか、それとも?

セクハラ・パワハラを引き起こす会社の内部の闇を、淡々と強烈に見せてくれる映画です。

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