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間合いの再発見

ニュースレターを始めることにしました。特にテーマを決めず、いろんなことを書きたいと思っています。月1〜2回発信が目標。Twitterのツイート以上、Webの記事未満くらいの感じで続けてみたいと思います。

ニュースレターは、SNSのタイムラインから距離を取りたいニーズに応えるものだと思っています。書く方は、自分のタイミングで気になっていることを発信することができます。読む方も、読みたい時に読んでいただければ嬉しいです。ちょっと、ゆっくりやりたいのです。

昨年までは、noteでセルフケアについて書いていたところから、VOCEでのメンズメイクについての連載につながり、思っていた以上にたくさんの方に読んでいただくことができました。これからコミックも刊行される予定です。本当に嬉しく思っていますし、貴重な体験をしていると、時々思い出したように実感します。

その一方で「セルフケアの人」「メンズメイクの人」として認識されることに、どこか違和感を持ってもいました。というのも、私はこれらのテーマについての専門家ではありません。生活の試行錯誤の中で、これらの考え方に出会ったに過ぎないのです。

そもそも私は大変な飽き性で、かつ天邪鬼でもありました。書いたものを褒めてほしいといつも思っていますし、実際に褒められると大喜びするのですが、商業媒体で取り上げてもらうような事態になると、なんだか胸がざわざわしてきて、無性に違うことを書きたくなってくるのです。

こういった気持ちをTwitterでつぶやくのも少々角が立ちますし、なんだか嫌味な感じもするので、しばらく我慢していたのですが、連載や書籍の作業も一段落したところで、こっそりと書いてみた次第でした。

と言いつつセルフケアの話をしますと、強制的にタイムラインと同期させられてしまうSNSから距離を取ることは、自分のリズムを乱されないためにも重要だと思っています。私たちには一人一人固有の身体のリズムがあるはずですが、できるだけ大量のアテンションを同時に集めようとするSNSにとっては、私たちの身体は邪魔なのです。

SNSのタイムラインは、一人一人のユーザが個別に編集したものに見えて、じつはそうでもないことは、目に飛び込んでくる広告や拡散された記事を挙げるまでもなく明らかでしょう。特に、複数のリプライが来たり、アクセス数の多い場所に自分の書いたものが掲載されたりすると、私の身体のリズムは吹き飛ばされてしまいます。

バズったり炎上したことがある人はわかると思うのですが、大量のアテンションが自分に向けられる経験は、仮にそれがポジティブなことであっても、体調をおかしくします。スマートフォンの画面から片時たりとも目を離せなくなり、寝ても覚めてもそのことを考え続けます。まるで、タイムラインに身体を乗っ取られたかのように。

これがリアルで行われる講演であったり、冠婚葬祭などの式典の類いであったら、もう少し準備や心構えをする時間がありますし、一見冗長に思えるプログラムや手続きによって、間接的に大量の注意を受け止められるような仕組みになっています。挨拶や司会、休憩もあれば時間制限もあります。これは、一人でたくさんの人の相手をするのは、端的に危険だからではないでしょうか。面倒にも思える儀礼作法の数々は、じつは出席者を守るための知恵だったのではないかと思います。



インターネット上のコミュニケーションにも、このような間接性を確保する仕組みが必要であることは、議論の余地がないように私には思えます。ニュースレターはその試みのひとつというわけです。

また、少し飛躍するのですが、間接的であることで、初めて語ることのできるような事柄があると考えています。たとえば、文学の表しているものがそうです。語らなくてはいけないけれど、様々な理由から直接的に語ることができないとき、選択肢のひとつとして考えられるのが、まさに虚構であり、比喩や象徴の働きを利用することです。

そのような高度な操作をおいそれとできるわけではないのですが、間接的であることについて考えることは、インターネット上にとどまらない、広い意味でのコミニケーションのモラルを考えることとつながっているような気がするのです。

年末年始、京都についてのテレビ番組を見たりしながら、そんなようなことを考えていました。コロナ禍の影響もあり、人と人との間合いのはかり方がこれほどまでに難しくなってしまった世の中で、一体どのようなモラルがあり得るのか。とても難しいけれど、これはどうしても考えなくてはならない問題だろうと思います。

こんなふうに、今考えていることをつらつらと書くニュースレターでよければ、ぜひご購読いただけると嬉しいです。

追記:ニュースレターはサービス閉鎖のため終了しましたが、文章は残しておきます。 

読んでいただいてありがとうございます。