見出し画像

山陽新幹線こだまに乗る

山陽新幹線は新大阪から博多を結んでいる。東京駅から東海道新幹線を西へ進み、新大阪駅で路線名が変わり、運行会社も新大阪を境にJR東海から西日本へ変わる。

東海道新幹線から直通する「のぞみ」「ひかり」、九州新幹線へと直通する「みずほ」「さくら」が列車の大半を占める中、一時間に一本程度、細々と走るのが各駅停車の「こだま」である。文字どおり新幹線各駅に停車する。こだま号は東海道新幹線でも運転されている。

5月下旬の土曜日、新大阪から広島間をこだま号で往復した。言うまでもなく、のぞみ、みすぼ、さくら号で移動するのが時間的にも最短でであるが、今回はあえて「こだま」号で移動してみることにした。

久々の500系とほぼ満席の指定席

新大阪駅20番線。
往路は7:41発のこだま841号博多行きに乗車する。
乗車したのは500系8両編成V8編成。
1~3、7、8号車が自由席、4~6号車が指定席であり、
グリーン車は設定されていない。
指定席車両はひかりレールスター車両と同様の2列&2列シート、6号車は元グリーン車の座席を使用している。当日指定席はほぼ満席に近い予約であったが、新大阪始発時点では空席も目立っていた。

20番線は山陽・九州新幹線の列車が発着する。

500系新幹線との思い出

N700系が導入されるまで東海道・山陽新幹線「のぞみ」の最高速車両としてその座に君臨していた。現在は山陽新幹線の「こだま」号として活躍しており、新大阪より東に乗り入れることはない。
新大阪ー博多間を最高時速300㎞/h、最速2時間17分で結び、その俊足ぶりは当時としては国内最速、ギネス世界記録を更新している。
尖った先頭車両、塗色はグレーを基本にJR西日本のコポーレートカラーのブルーを入れ、すべてが斬新であった。8両編成に減車され、最高速度は285km/hに減速した上でこだま号として活躍する現在もなおその斬新さ、カッコよさは変わっていない。

撮影:新大阪駅
N700系列が主力となった今でも500系は異彩を放っている。

500系新幹線は筆者にとっても思い出深い新幹線車両の一つである。九州方面へ向かい際、700系ひかりレールスターもしくは500系を選んで乗車していた。当時300km/hの高速体験できるのは山陽新幹線、それも500系のぞみ号に限られていた。300km/hでのトンネル、駅通過は圧巻であった。

JR東日本E2系と並ぶ平成初期~中期を代表する新幹線車両であった。

元グリーン車の広々座席

今回、久々の500系乗車にあたり元グリーン車座席の着席にこだわった。
予約直前ではあったが、何とか抑えることができた。
さすがは元グリーン車、広々座席に感動した。今回は2時間半の乗車であるが、4時間程度なら全く苦には感じないのではないかと思った。

6号車の元グリーン車座席。現在グリーン車は設定されていない。

優等列車に線路を譲りながら、各駅を瞬間移動

さて、こだま841号は新大阪を発車し、新神戸、西明石、姫路と各駅に停車していく。広島まで11駅、2時間29分の乗車である。
途中姫路、相生、新倉敷、福山、新尾道、三原で後続の「のぞみ」「みずほ」「さくら」「ひかり」に道を譲る(いわゆる通過待ち)。概ね2~8分停車する。停車時間はそれほど長くはないが、少しの間ホームに降り立つ。
スロー新幹線旅ならではである。通常ではなかなか体験できない。
優等列車に道を譲った後は、一気にスピードを上げて西へ進む。何といっても新幹線である。こだま号と言えども各駅間は200km/h以上で走行するのだから当然ながら速い。
岡山駅からは短区間利用者を多く目にした。指定席が満席近い予約が入っていたのもこのためであった。
10:09、広島駅12番線に到着。500系新幹線の旅はこれにて終了である。
乗車した列車は10:10、博多へ向けて出発していった。

撮影:新尾道駅
短編成化してもなお、先頭部分の鋭さは不変である。
全体的に丸みを帯びた車両であることがわかる。

まだまだ現役?700系レールスターにも乗車

復路はこだま866号(博多発新大阪駅行き)で戻る。
広島駅13番線に乗車するこだま号が19:56に入線した。
車両は700系7000番台レールスター。500系車両の登場から数年後にデビューしている。
九州新幹線全通まではひかりレールスターとして、山陽新幹線を快適にのぞみに次いで、移動できる新幹線であった。
19:57に定刻通り発車した。
優等列車の通過待ちは東広島、福山、新倉敷、相生の4駅である。その他の各駅では概ね1分停車であり、新大阪まで2時間15分運転である。夜間帯の走行であり見える景色は限られるが、快適な時間を過ごすことができた。

700系はすでに東海道新幹線から引退しており、現役で営業運転しているのはレールスター編成のみである。

こだま=遅い?

ここで一つ考えてみたい。
こだま号は遅いのかである。
まずは時刻表を開いてみよう。
こだま号は博多・小倉間、新大阪・岡山間など短区間の運行も多いため、ここでは新大阪・博多間を直通する列車で考えてみたい。

新大阪・博多間を直通するこだま号とその所要時間は次のとおり。

下り
新大阪  7:40→博多12:04  4時間24分★
新大阪  9:32→博多13:51  4時間19分
新大阪10:37→博多14:51  4時間14分
新大阪11:37→博多15:51  4時間14分
新大阪17:37→博多21:51  4時間14分
新大阪18:37→博多22:51  4時間14分
新大阪19:37→博多23:39  4時間2分

上り
博多  6:21→新大阪10:25 4時間4分
博多  7:04→新大阪11:25 4時間21分
博多12:54→新大阪17:25 4時間31分
博多13:54→新大阪18:25 4時間31分
博多14:54→新大阪19:25 4時間31分
博多15:54→新大阪20:25 4時間31分
博多16:54→新大阪21:18 4時間24分
博多17:55→新大阪22:12 4時間15分★
博多19:25→新大阪23:18 3時間53分

※2023年3月18日現在、いずれも筆者の調べによる。
※★印は今回乗車した列車。

こうしてみると、こだま号の一部で3時間台の列車があるほかは概ね4時間超えでの運行となる。現在の山陽新幹線のこだま号は500系、700系レールスター、N700系を使用することで0系や100系が走っていた時代と比較しても時間短縮は図られている(今後、通過待ちの時間が長い列車が設定されれば別だが)。ものすごく長いとも遅いともいえないだろう。

撮影:新尾道駅
撮影:新倉敷駅
新幹線ホームに人がいない。主要駅ではまず見られない光景。

こだま号の旅にも良さはある

今回は新大阪・広島間をこだま号で往復した。のぞみに乗れば速く、効率的に移動できるのは言うまでもない。急ぐ場合なら「こだま」に乗ってる暇はない。
今回、こだま号で往復したことで新幹線各駅停車ならではの風景をたくさん目にすることができた。通過列車のために各駅で線路を譲り、後続列車に追いつかれんがために俊足で逃げ切る場面もあった。

時間があればこだま号で移動するのも悪くはない。新幹線=速いの概念を打ち壊すのがこだま号である。

東広島駅は大半の列車が通過するため、こだま号のみが停車する駅に降り立つことも醍醐味といってよい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?