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ジャガイモ丸ごとの味噌汁

「髙橋家(私の家)の味噌汁にはジャガイモが丸ごと入っているらしい…」以前、事業所に来るボランティアさんたちの間でそんな噂が流れていました。

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。今は、理事長です。しかし、以前は、直接支援にあたる現場の支援者でした。私がこの仕事に就いたころの話です。

調理当番

当時の事業所は、社会福祉法人になる前の小さな無認可の小規模作業所でした。そこでは毎日のお昼ご飯を、利用者と支援者がボランティアさんと一緒に作っていました。事業所の活動の一つに「調理当番」があり、全員が交代で調理当番をすることになっていました。

利用者の中には、調理当番が本意でない人や、調理器具を持つことさえできない人もいます。しかしそのころの福祉は、全員が同じことをすることが正しい、決められた活動に参加できるようにすることが絶対的な目標でした。また、同じようにすることが平等だと思っていました。そのため、調理当番に不向きな人にも調理をする日がやってきました。

どうやって調理に参加するか

私たち支援者は、利用者の得意そうな仕草や行動から調理のメニューを考えました。

私が一緒に調理をする人は、支援をしなければいけないことがたくさんありました。同じ場所に長時間立っていたり、何かを持って作業をすることが難しい人でした。

その利用者の動きは、何かをつかんでは、手を放すその繰り返しでした。ただし、水が大好きで水の中に手を入れてバシャバシャすることが好きでした。そこで、小ぶりのジャガイモを買って来て、それを大きめのボールの中でバシャバシャする、一緒にたわしでこすって洗う、それが調理になりました。しかし、そこで限界だったので、そのまま鍋に入れてみそ汁になりました。

レパートリーが広がる

しばらくはジャガイモだけでした。しかし、私も少しづつその利用者と一緒に調理することに余裕が出てきました。ちょっとだけ一緒に包丁を持つことができるようになりました。その結果、野菜のレパートリーが増えました。ただし、増えたとはいえ、長ネギのぶつ切り、玉ねぎのざく切り程度です。

そんな調理を一年も続けていると、もっと余裕が出てきて、一回の調理で複数の野菜をあつかえるようになりました。そこでできあがったのがポトフです。鍋の中にはぶつ切りの野菜がゴロゴロしていました。しかし、立派な一品にまで成長しました。

このポトフが作れるようになってから、一気にレパートリーが広がりました。カレーにもシチューにもトマト味にも、いくらでもアレンジ利くようになりました。ただし、野菜の大きさはゴロゴロでした。

私のレシピ

私も利用者もいろいろな料理を作れるようになりました。しかし、一緒に調理をしたボランティアさんの間では、初期に作った丸ごとジャガイモが衝撃だったようです。あとあとまで語り継がれてしまいました。


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