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特別養護老人ホームですごす夏

お袋が特別養護老人ホームに入居して一年が経ちました。ホームに入居したおかげで、私は暑い夏も心配なくすごすことができます。

今日は午前中にお袋のところに行きました。お袋のそばで、暑い、暑いとぼやく私にお袋は「ここに居たら暑いも寒いもなんもわからないよ。」と、言います。そんな言葉を聞くと申し訳なく思います。お袋は、ホームに閉じこもっているので、退屈しています。しかし、暑さに弱い私はお袋を連れ出すことができません。

お袋は、特別養護老人ホームに入居するまで一人で生活をしていました。デイサービスがない日は一日家のベッドの上で過ごしていました。ベッドに入ったままエアコンのリモコンを操作していると、ときどきリモコンのボタンを押し間違えます。すると真夏に熱い風が出て来たり、真冬に冷たい風が出て来ます。そうなると自分では停止ボタン押すことしかできません。私に電話がかかってくるので、私は緊急対応のヘルパーに電話を入れて駆けつけてもらっていました。それでもヘルパー到着までに10分ほどかかるので不安な日々でした。

一般的には、特別養護老人ホームに入居することで多くの安全や安心を手に入れることができると思われています。しかし、安全や安心を手に入れるのは本人ではなく介護者です。本人にとってみれば少々の危険や不安定さがあった方が人生らしいということです。

お袋に、「少し涼しくなったら出かけよう」と、言うと、「そうよ、あんた、お父さんのところ(お墓)に行ってあげなきゃ」と言われてしまいました。そういえば、去年の夏は、「お父さんが帰って来るところがなくなっちゃった」そんなことを言っていました。

特別養護老人ホームに入居するということは、人生の文脈も途切れてしまうということです。それをつなぐのも介護の一つなんですね。

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