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利用者の買物について考える

本屋に行くと「円谷プロ作品 ポスターブック」という魅力的な本が売っていました。ウルトラマン、ウルトラセブン世代にはたまらない一冊です。この本を見たときにひとりの利用者の顔が浮かびました。「彼は絶対にこの本を欲しがる」私には確信がありました。買って行きたい、しかし、勝手に買うことはできません

長い付き合いの彼

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。今は理事長です。しかし、以前は現場の支援者でした。法人の事業所には、30年以上の付き合いになる男性利用者がいます。私よりも年齢が一つ上です。また、彼と私は、趣味がほとんど一緒です。若いころは、一緒に遊びに行ったり飲みに行ったりしていました。

その彼は、ダウン症という障害を持っています。ダウン症という障害を持っている人は、他の人たちに比べて老化が急速に進行します。私より一つ上の彼は、だいぶ老け込んでしまいました。体力がありません。また、コロナ禍においてガイドヘルパーとの外出もほとんどなく、休日もグループホームですごしています。なおさらです。

その彼もウルトラマンが大好きです。そこで彼にこの本を買って行きたいと思いました。しかし、勝手に買うことはできません。いくら本人が好きだとわかっていても支援者の判断だけで買うことはできません。手続きが必要です。まして私の場合、私から規程を破ることはできません。規程には、ご本人の許可なくして勝手に購入することや立て替えの禁止が書かれています。

不正事件

行政からは、支援者が利用者の金銭を不正にあつかった事件が報告されています。買物代行という支援があります。買い物代行は、支援者が利用者に代わって買物をする仕組みです。コロナ禍においては、ガイドヘルパーが活動を自粛したため、利用者の買物が支援できなくなりました。この支援が急増しました。事件はそれを悪用したものです。

事件は、支援者が利用者の買物をしたときに、自分の物を利用者のお金で支払っていました。それを複数の利用者に対して、数か月間続いていたと言います。

買物代行があたりまえになる危険性

このような犯罪に陥るケースはまれなケースです。しかし、買物代行には、ある程度の決まりを設けておかないと、善意からくる問題が生じます。支援者が利用者のためだからと言って、支援者の判断で買物をすることがあたりまえになってしまうことです

支援者が買って行くと、利用者は「ありがとう」と喜びます。その繰り返しで支援者が購入することがあたりまえになってしまいます。そのため最小限のルールは設けなければいけません。

今回は、担当支援者にご本人の手元にあるお金を確認したのち、ご本人と話をして本を買ってきました。

円谷プロ、最強です

ご本人に本を届けると、1ページ1ページ、ていねいにウルトラマンの名前を確認しながらながめていました。またお決まりのスペシューム光線のポーズをとって喜んでくれました。

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こんなふうに一緒に喜びをわかちあえる瞬間がこの仕事の楽しさです。

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