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製パン作業を始めた理由

以前、エクステンションセンター中野校で開講された「教える技術」において、学習における転移とは、習得した技術を別の文脈で活かすことだということを学びました。

私は障がいのある人を支援する事業所の経営をしています。3月は、新年度に向けて利用者と面談をします。そこで、来年度のグループ決めます。グループは、製パン、製菓、受注、創作など作業種ごとに分かれています。そのグループを決める際に、転移の視点が有効です。

事業所の利用者の中には、自分のやりたい活動を自分で意思表示できない人がいます。もしくは、支援者の質問にオウム返しに答えるため真意がわからない人がいます。そのときは、日ごろ積極的に取り組む行動や、ご本人が楽しそうにしている行動を、作業活動に転移させ活躍できる場面を増やします。

以前、企業からの請け負い仕事で、簡易な工程が繰り返されるわかりやすい仕事がありました。利用者からも好評でした。しかし、その仕事が急になくなってしまいました。すぐに他の作業を探しました。しかし、利用者の中には新しい作業になじめず、やること、できることを失ってしまった人がいました。

私の事業所では、製パン活動をしているグループがあります。製パンとはいえ、一日に焼くパンの種類は2種類が限界です。またその活動は、もともとパンを焼くことが目的ではありませんでした。

まだ事業所の規模が小さかったころ、昼食はボランティアさんが作っていました。利用者の中に、水を触るのが大好きな人がいます。さらに洗剤が大好きな人がいます。その人たちは、嬉しそうな声をあげて食事の洗い物をしていました。そこで思いついたのが、洗い物を増やす活動です。洗い物を増やすために始めたのがパン作りでした。

さらに他の利用者で、秤を使って計量をするのが得意な人がいます。その人も受注作業がなくなって困っていました。それがパン作りを始めたことで、粉を測ることができるようになりました。

支援者は、利用者に新しい技術を習得してもらう工夫をします。しかし、それだけではありません。その人がすでに持っている技術を他の活動に転移させ、利用者が輝ける場面を作っていくことも重要です。

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