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私は能力がある、人々は仲間だ

障がいのある方の支援をしています。もう30年以上も経ってしまいました。何年続けていても、ついおろそかになってしまうことがあります。大事なことを忘れないためにここに書き留めます。

障がいのある利用者の中にはいろいろな薬を飲んでいる人がいます。中には飲み忘れると、生命や生活に大きな支障をきたす薬もあります。たとえば、てんかんや心臓の発作を抑える薬です。薬の支援は重要な仕事です。しかし、それゆえパターナリズム的な対応におちいってしまいます。

私は、支援をふりかえるときの指針としてアドラー心理学を基本とする子育てにおける親の育成プログラム、パセージにある、心理面の目標を採用しています。心理面の目標は以下の二つです。
 1)私は能力がある。
 2)人々は私の仲間だ。

私たちが支援をしたとき、相手が心理面の目標に沿ってプラスの感情を持っていただけるかどうかを大事にしています。

私のお袋が寝たきりで、一人暮らしをしているときのことです。そのときは、毎日、ヘルパーが交代で巡回しお袋のケアをしてくれていました。いろいろな人がかかわるため、なかにはお袋にとって、苦手な人もいました。

お袋は、下半身を動かすことはできません。しかし上半身は普通に動きます。認知もしっかりしています。夜、私が夕食を届けたあと、一人で薬を飲んでいました。その後、ヘルパーが薬の確認をするため、薬のパッケージをテーブルの上に置いておくことが約束になっていました。そこまでは一般的な対応です。しかし、ヘルパーの中には過剰に慎重なヘルパーがいました。そのヘルパーは、お袋の口の中に薬が残っていないかどうか確認するというのです。お袋は、口の中に残っているかどうかぐらい自分でわかる、と怒っていました。

私たちは、安全を題目にして、利用者の人権を無視して支援をしてしまうことがあります。現場に立つたび、思い返す出来事の一つです。

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