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化石のようなルール

障がいのある人が日中に活動する事業所や生活をするホームの経営をしています。もともとは直接支援にかかわる仕事をしていました。そこから数えると30年以上が経ちます。30年が経過して、いろいろな場面をそつなくこなすことができるようになりました。その反面、私のやりやすいように流れを作ってしまうという欠点もあります。以前の支援は、支援者が主体でした。しかし、今、支援は常に、利用者主体でなければいけません。

支援現場には、化石のようなルールや支援者が存在します。私もその化石になじんでしまい、気がつかないことがあります。

日中活動事業所でよく見かける光景に、昼食時、全員そろって「いただきます」と「ごちそうさま」というのがあります。食べ始める前、全員が席に着くまで全員で待ちます。全員がそろうと日直が号令をかけます。「気おつけ、令」「いただきます」そこで昼食が始まります。

以前、プライベートで外食をしているとき、店内に大きな声が響きました。「気をつけ、令、いただきまーす」
障がいのある人がガイドヘルパーと一緒に食事に来ていました。たぶんその人はその号令があたりまえになってしまったのだと思います。

私の事業所では、だいたいそろったら、各自で「いただきます」を口にして食べるようになりました。しかし、利用されている人の中には、号令生活が長すぎたため「気をつけ、令、いただきます」がセットになってしまっている人もいます。

「ごちそうさま」も同じです。全員が食べ終わるまで席に座って待たされていたことがあります。その間、待ちきれない人は声を出したり、また空のお皿を口にして注意されます。支援は理にかなったものでなければいけません。

以前、この不合理を指摘すると、バラバラにごちそうさまをするとまだ食べている人が落ち着いて食べられなくなるという説明がありました。そうであるならば、静かに待つ方法を考えた方が理にかなっています。

改善を始めた頃は混乱をしました。しかし、一週間もしないうちに落ち着きました。食べ終わった人は、テーブルに顔をつけて寝ていたり、別の場所で横になったり、食べている人の顔をながめていたり、それぞれで適切なすごし方を決めました。

以前は、利用者のためという題目のもと、支援者が管理しやすいようにすべてのプログラムが作られていました。しかし今、それらはすべて化石です。私は、自分が化石にならないように、ときどきふりかえります。

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