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「髙橋くん、なんで…今日休みだよ」

2021年10月11日、月曜日、今日はお休みではありません。しかし、一部のカレンダーは赤く「スポーツの日」と記されたままになっています。また、そのカレンダーが壁にかけてあったことから大きな事態になってしまいました。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人にはは、日中活動を支援する事業所があります。そこには、障がいのある人が公共交通機関やガイドヘルパー、送迎車等でやって来ます。

朝から不機嫌でした

私は、毎朝、玄関に立って利用者を出迎えます。今日は、暖かな朝のため玄関の扉も開いたままでした。私が立っていると送迎車が入って来るのが見えました。送迎車からは、次々と利用者が飛び出して来ます。私は、あいさつをしながら人数を数えます。一人足りません。すると運転手さんが「降りてくれないんです」と言いに来ました。利用者の一人が、送迎車の中で不機嫌になっていました。そこに別の支援者が迎えに行き、やっと降りてくれました。

私は、玄関でその利用者に「おはようございます」と声をかけました。しかし、その利用者はそっぽを向いて「んー」と怒った声を出し、そのまま作業室に入って行きました。

「髙橋くん、今日休み、なんで?」

しばらくするとその利用者が私のところに来て言いました。
「髙橋くん、今日休み、なんで?」
その利用者は、壁にかけてあったカレンダーを手に持っていました。また、カレンダーを広げて私に言いました。
「髙橋くん、今日休みだよ、ダメだよぅ。」
そのカレンダーでは、10月11日はスポーツの日で赤くなっていました。私は、祝日が変更になったことをすっかり忘れていました。

その後、その利用者は1時間おきに私のところに来て、「髙橋くん、なんで…今日休みだよ。」を繰り返していました。私が、オリンピックのことを口にすると、すかさず「オリンピック、もう終わった。」と、もっと怒ってしまいました。きっと、他の人にも同じことを言われたのだと思います。

私と、その利用者のやり取りを見ていた別の支援者が、「そう、私も休みだと思っていたからショックだった。」と話に入って来てくれました。そのあとは、利用者と二人で文句を言ったり、なぐさめあったりしていました。

私は、今日が祝日表記になっているカレンダーがあるということをまったく意識していませんでした。私の手帳は平日になっていました。

休みを組み立てることができない

私たち支援者は、日中活動は利用者にとって仕事的なものと位置付けています。利用者にも「仕事の時間」と説明することがあります。支援者も利用者も労働です。ただし、大きな違いがあります。支援者には「有給休暇」があります。しかし、利用者には「有給休暇」がありません。毎日、日中活動に行かなければいけません。

利用者の家族は、日中は事業所に行って欲しいと思います。私たち事業所は、利用していただかないと収入にならないのでどうにかして来てもらおうとします。利用者の「今日はさぼりたい」という主張は認められません。

10月11日が赤くなっているカレンダーがあります。自分の意志で休日を組み立てられることができない利用者にとっては、だいじな休日だったはずです。それが都合で黒く塗り替えられてしまいました。その利用者は「髙橋くん、今日は休みだよ。」と言いながら帰って行きました。

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