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「ないしょ」が増える夏

私がまだ直接支援にたずさわっていたころの話です。夏になると、ないしょのできごとをいっぱい作っていました。夏は、秘密が増える季節です。今日のnoteはないしょの話です。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人の事業に日中活動を支援する事業所があります。そこでは、障がいのある人が、それぞれの得意な分野のプログラムを選んで活動しています。その中に受注活動のグループがあります。

真夏のダイレクトメール

受注活動では、いろいろな企業から仕事を受けています。その一つに、ダイレクトメール便という仕事があります。住所を見ながら、その家のポストにパンフレットやチラシ、資料を入れて回ります。それらは個人宛のものなので配り間違えは絶対にできません。神経を使う仕事です。さらにこの時期は暑さとの戦いです。

この活動を担う利用者と支援者は、毎日、外に出て行きます。件数が多いと午前も午後も外に出て行かなければいけません。熱中症対策で冷やす物、飲み物等を常備して出かけます。しかし、それらを超える暑さです。暑さが苦手な私には、全員が超人に見えてきます。

私が外活動をしていたころ

今の私は、理事長業務が主な仕事です。利用者の皆さんと一緒に外に出かけることはありません。しかし、私が直接支援にたずさわっていたころは、私も外活動に出かけていました。今よりも事業所が狭かったため、必ず2~3人の利用者と一緒に外に出かけるプログラムがありました。ただし、その内容は、ノルマのないゆる~い内容でした。

そのころの私は、利用者と一緒に「ないしょ」を作っていました。

当時の主な外活動は、給食の食材購入でした。私も利用者も若かったので、バス停6個分を歩いて大きなスーパーに行っていました。また、いつも私と一緒にいる利用者の一人がバスの運転席の後ろが大好きでそこに固執していました。そこに座れないと大きな声をだすことがありました。そのためスーパーまで歩いて行くことがほとんどでした。

「ないしょ、しました。」

そのスーパーにはフードコートがありました。暑い夏の日、歩いて買物に行くと咽がかわきます。冷たい物が欲しくなります。そこで休憩がてらおやつタイムをすることがありました。そのとき、私が言いました。「みんなにはないしょね」。この一言が余計な一言でした。

事業所に着くなり一人の利用者が言いました。「髙橋くん、ないしょしました。」この利用者とは、今でもいい付き合いをしています。このnoteに何度も登場している私より1歳年上のダウン症の男性です。

それ以来、買物行くと、その男性が私に言いました。「ないしょ、お願いします。」冷たい物が欲しくなる夏は「ないしょ」がたくさんできました。いつしか「公然のないしょ」になっていました。今では、活動中にそんなこともできません。その点では、私が現場に出ていたころはいい時代だったのかもしれません。「ないしょ」もだいじな思い出です。

毎朝、その日の天気や気温を確認しながら、外活動をする人たちのことを考えています。

連続投稿1000日まで、あと46日

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