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幸せな瞬間

ある利用者さんが、事業所に来るなり私を相談室に連れて行きました。

「髙橋く~ん、チョット」

その利用者さんは何か困りごとがあると、私のところに来て相談室で話をします。普段は、利用者さん同士のケンカやちょっとした仲たがい、支援者に注意されたけれど納得がいかない、そんな話です。でも朝、来るなり相談室というのは初めてです。

その利用者さんの後について相談室に入ると、「髙橋く~ん、ここ座って」と正面に座るように私に指示をしてきました。なんだかいつも以上に落ち込んでいます。ためいきもついています。

「どうしたの?」

するとボソボソと話し始めました。

「お釣りが出てこないんだよ…お財布がカラ。」

朝、事業所に来るときに近所の自動販売機に500円を入れてコーヒーを買った。でもお釣りが出てこなかったというのです。幸い、その自動販売機が事業所のすぐそばだったこと、隣に販売店があったことから二人でそこまで行って、販売店の方にお話をしました。でも調べて連絡をすると言われしまい、いったん事業所に戻りました。その後、1時間ぐらいして店長さんがお釣りを持ってきてくれました。直接、ご本人にお釣りを渡してくださいました。

その日の帰り、その利用者さんが事務室に来て私に言いました。

「髙橋く~ん、いつもありがとうね。」

とても幸せになれた一瞬です。たぶん、この瞬間、瞬間の積み重ねがこの仕事の良さだと思います。それをこれからこの仕事に就く人たちに伝えたいと思うのです。

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