ルールを守らない大人が守れと言うのはおかしい──どう答えるとよかったのか

1月3日金曜日、晴れ

三日目、おせち料理の最後。

とくに何をするというのでもなく、ひたすらにぐうたらして過ごす。
あ。また一人、出していなかった人からの年賀状に返信を書いた。これが唯一したらしいしたことかもしれない。いや雑煮はつくったし、洗い物はすべて引き受けたっけ。

ヴァイオリンをぎしぎし擦って、あとはひたすらDiablo 3。レベルが70を超えたら固くなったのか、それとも装備がよくなって攻撃力が上がったためか、昨日まで感じていた溶けやすさがかなり改善される。これならイケル! と難易度をトーメント2に変え挑戦してみる。なんとか……イケるが、やっぱり敵が固い。気を抜くと溶かされそうである。
シーズンセットボーナスを得るためにはトーメント4でいくつかイベントをこなさなければならないのだけれど、もうしばらくは厳しそう。

* * *

「なんで大人はルールを守れっていうのに、当の大人がルールを守らないのかな」と、娘が憤懣やるかたなさげにいう。

これに対してつい、人を殺しちゃいけないという大人が人を殺す──みたいには考えないよね? それをする人と言う人は違うのに一緒にするのはおかしいんだよ。などと答えてしまう。(たぶんこの応答は間違い)

「世代」、「人種」、「国」とか「性別」で大きく括って(本当は存在しない)対立を見つけてしまうのは、わりとよくある錯誤だとおもう。感情を害された自意識が、わかりやすい(でも間違った)筋道で論理を組み立ててしまうのだろう。

感情を害されることは、そしてそれに不満を訴えることは特段間違ったことではない、とおもう。そしてそれをできるだけカジュアルに表明できる暮らしのほうが(そうでないより)いいだろう。
だからこそ、表明されたときに表明したものに対して「それは間違っている」と諭すのはおかしい。欲っしているものが共感と慰撫だろうところに、論理が間違っていると説明してなんになるか。

* * *

あるいは例えば僕は男に生まれた。そして、男はけだものだ、いるだけで襲われるんじゃないかと不安になる、すぐに暴力に訴える──などなど一部男性がしでかすあれこれで「男は××」などと容赦なく断罪する言葉をたびたび目にする。
僕を名指しして責めている言葉ではないのだと深呼吸するけれど心中穏やかではいられない。「犯罪者を捕まえる腕力を持ちながら見過ごすのは同様に犯罪者」などというアクロバットを見ると、そうか弱者の味方にならない僕は犯罪者なんだと自責の念に駆られたりもする。

あるいはまがりなりに先進国のうちに生まれ電気ガス水道など社会インフラが整った中で安楽に暮らしていることを、そうでない国の人たちから「お前たちはずるい」と謗られることをどう考えるか。

好きでこの立場に生まれたわけでない

これは確かだけれど、これまた一方で確かに生まれた立場をときに無自覚に、ある時は自覚的に享受している。

責める側は疑いなく辛さを味わっており、だから非難の声を上げる正当な理由がある。そしてその声は(どれだけ言葉が拙かろうと)掬いとり、しかるべき手当てをされるべきものだろう。
声を投げかけられた者は、それが身に覚えのないものだったとしても耳を傾け、そしてそのときに無理なく「できるだけ」の助力をするのがよいのだろう。(「その非難は間違っている」などと傷ついた当人に返さないよう口をつぐむ、というのも「できるだけ」のことに数えていいとおもう)

できれば不幸を背負った人をまるっと救えたらいいけれど、それはあまりに荷が重いので。できるだけのことを、できるだけの範囲で。
責められたと感じて「済まなかった」と自ら持てるあれこれを投げうち、自分の暮らしまでをも不幸のただなかに落とすのでなく、できる範囲で手を差し伸べ、できる範囲で世界をより良い(と感じられる)方向に進めること。

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