騙されないために使う数学
8月21日水曜日、曇り
10年後には、ひとり当たり所得を150万円増やす。そんな景気のいいことを言った首相がいるらしい。
このツイートで(これから先10年、かわらず年間3%増えるとして)、現在の年収が436万円の人が150万円の増加を見込めると書いた。
(※ただしくは年収でなく所得が436万円の人です)
この436という数字がどこから出てくるか?
そう。こういうときに役に立つのが数学の知識。
実際に導出してみよう。
現在の所得をX万円とする。
これが年3%増える──つまり一年後には1.03倍のX×1.03万円、二年後はそのまた1.03倍……、ということで10年後には1.03の十乗がXの係数として乗ることになる。
X×1.03↑10 ── 10年後の所得
ところで「↑」は累乗の記号。↑の後ろの数だけ手前の数を掛ける演算。
つまり……
1.03↑1は1.03。
1.03↑2は1.03×1.03。
1.03↑3は1.03×1.03×1.03。
1.03↑4は1.03×1.03×1.03×1.03。
1.03↑5は1.03×1.03×1.03×1.03×1.03。
以下同様に続く。(高校数学で習います。ところで任意の数Yに対して「Y↑0=1」です。掛け算の単位元が1、という話がありまして……)
閑話休題。
あとは簡単。
十年後の所得と現在の所得の差が150万円になる所得Xを知りたいので
X×1.03↑10 - X = 150。
等式の左辺のXを括りだすと
(1.03↑10 - 1)X = 150。
辺々Xの係数で割って
X = 150 ÷ (1.03↑10 - 1)。
あとは電卓をたたけばいい。(「↑」の計算には関数電卓が必要だけど。電卓によっては x の右肩に y が乗っているボタンがあるんじゃないかな? なければ 150 / (1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 * 1.03 - 1) を計算しよう)
* * *
余談だけれど。
年3%の伸びがあっても、手取り収入が436万円ない人たちには150万円の増加は届かない。(ひょっとすると「平均値」で考えているのかもしれないけど、それって詐欺的)
現在無収入の人までもが150万円手に入れられるようになるとしたら、年3%どころの話じゃあないしね。
いずれにしても賃金が増えている実感のない昨今(むしろ今年なんて僕は減額されたよ)、年3%なんて信じられない。ほんと誠意のかんじられない虚言を弄す人がいるものだよ……。
発言に責任を持たなくてもいいだなんて、気楽な稼業もあったものだ。
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