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女子会報告書①『単価交渉の乱〜恋愛と色恋は違うのよと誰かが言った〜』

俺には欠点というものが、人より少しばかり多く存在する。

例えばちょっと尻軽なところとか、毎月クレジットカードを使いすぎるところとか、同じような色のシャツを毎シーズン何枚も買ってしまうところとか、なんか変な藻が生えるまで皿洗いをサボってしまうところとか、ラブホテルで寝過ぎて超過料金をしょっちゅう取られてしまうところとか。

その最たるものに「酒を飲むと過剰に気が大きくなる」というものがある。
それは裏を返せば、シラフの時は気がたいへん小さいということでもある。

そう、俺は気が小さい。
それは仕事上でも同じことであって、クライアントとのやりとりもたいへん控えめである。そのためライターでありながら「単価交渉」というものをしたことがない。一度もない。常に言い値で仕事をしてきたし、単価上昇のタイミングも相手任せでやってきた。

色恋の駆け引きは得意だが、いやこの年齢で独り身ということはそれも実際怪しいが、お金の上での駆け引きはひどく不得手だ。東南アジアのマーケットでも、ほとんど値引き交渉ができなかった。東南アジアといえば次はタイのゴーゴーバーに行きたい。男性ストリッパーのパンツにチップをねじ込むのだ。

女子会…じゃなかった、定例会第1回目

話がまた逸れてしまった。すぐに話題が変わるのも俺の欠点のひとつである。男性ストリッパーの話はまた今度ゆっくりするとして。

自主企画チームメンバーのさとみさん・えいみさんとキックオフ以来、つまり正式には第1回目の定例会を開催した。毎月1回、フリーランス同士仕事についてフランクに語ることによって、仕事の質がどう変化するのか?というのが俺の検証テーマである。

検証テーマである、とか偉そうに書いてしまったが、酒を飲みながら参加しているので、後半の記憶はいつも朧げである。ああこれも俺の欠点だ。酔って記憶を無くす。だからしょっちゅう知らない裸の男がベッドで横にいる。
しかしありがたいことに他の2人が細かく内容をメモして、同じくnoteにまとめてくれているので、詳しい内容はそっちを読んでほしい。

さて、赤霧島のソーダ割りでゴキゲンな午前0時(宇多田ヒカルの歌詞にありそうなフレーズだな)すっかり気が大きくなった俺は2人の前でこう豪語した。

「来月の定例会までに人生初の単価交渉を行う」と。その時はできる気がした。その時は。

翌朝、二日酔いの頭でものすごく後悔した。飲み過ぎたことも後悔したが、酔いの勢いででかいことをまた言ってしまったことを、激しく後悔した。色恋に関しては常にチャレンジングな精神を持つ俺ではあるが、仕事関係になるとこうも萎縮してしまうのは何故なのか。はあ、気が重い。ついでに体も重いがそれは飲み過ぎのせいだろう。今夜は休肝日にしよう。

色恋のテクニックを、仕事に転用せよ!!

ランサーズで新規の仕事をとる時、提案文というのを書くけれど、あれ、マッチングアプリやってる時みたい気分になりません?
自分はこういう人間で、こうこうこういうことが得意で、こういう時間帯に連絡とりやすいです…って。完璧マッチングアプリやがな。

まあフリーランスの仕事というのはクライアントとの疑似恋愛みたいなところもあるので、あながち間違いでもない気もする。そして俺は夜毎その疑似恋愛を売って万札に変えるという、水商売の世界を生きてきた男だ。おっさんたちからチップをせしめまくったあの日々を思い出して、単価交渉に活用していこうと思う。いざ、営業開始である!

甘え営業

「文字単価、あげて欲しいなぁ~♡にゃんにゃん♡」

俺は今年35歳である。却下。しかしあと10歳若ければ本当にやったかもしれない自分が恐ろしい。

メンヘラ営業

「は?文字単価あげてくれないんだ?もういいよ。俺なんてこの世に必要ない存在だもんね。消えればいいんでしょ?それでみんな満足なんでしょどうせ?」

…地雷ランサーとしてランサーズ運営に通報される気がするので却下。

枕営業(冗談です)

「あなたの身体に、僕の文字単価、思い知らせてあげますよ…」

最近変な性病も流行ってるので、よく知らない人と寝るのはあんまり良くないと思います(自戒)
あと普通にセクハラなので、却下。

陰キャ営業

「好きな作家は太宰治です…僕は人間失格なんですが、情けだと思って文字単価あげてくれませんか…」

金だけ欲しがる陰キャっていうのもな。控えめに言ってかなりいやな感じだ。気が滅入る。却下。

カラオケ営業

「残酷な単価のテーゼ♪窓辺からやがて上昇♪」

却下だろ。

飲み営業

「nxuあっfnxさcにcんsk;@・zんけdxcxさ!!!文字単価!!!!!!」

酒癖が悪いので、酔ってクライアントに連絡は取らないことにしています。却下。

DV営業

「おい文字単価あげろよ!ああ!?予算がない!?だったらお前のジンゾーでもスイゾーでも売って、金作ってこいや!!!!」

こういう人が身近に本当にいたら、警察に通報してください。却下。

なんだこれは、ろくなものがないじゃないか

俺の長らく身につけたり、目の当たりにしてきた水商売スキルは、どうも単価交渉の場においてはあまり活用できないのではないか、という気がしてきた。
しょせん擬似恋愛は疑似恋愛。嘘っぱちの飾り立てた言葉で、昼の世界の人々は動かせないのだろう。

まともなスキルも資格も経験もない俺からこれを取ったら、他のライターさんたちと、何を武器に戦えばいいのか。絶望的な気分だ。

しかし数少ない俺の長所には「言ったことは最後までやる」というものがある。

散々悩んだ挙句、結局俺は誠心誠意、心を込めて「そろそろ単価あげて欲しいんですけど、どうすればあがりますかね?」みたいなことを数カ所に書いて送りつけることにした。超普通だ。こんなの、誰にでも書けるじゃないか。これでいいのか俺。

だけど単価はあがったのだった、めでたしめでたし

その結果、どうなったかというと、文字単価はあがった。
「そっすねー、そろそろあげどきですよねー、じゃ次回から◯円でおねしゃす!」みたいな超軽いノリであげてもらった。なんだこれは。

ところで欠点の話に戻るが、俺は恋人に対してつい「不機嫌アピール」をしてしまうという、これまたデカめの欠点がある。
不機嫌に振る舞うことで、相手に抱く不満などを察してもらおうとするものだ。
これをやってしまうのは、俺だけではないだろう。そういう人、結構多いと思う。

しかしこれをやっていると、カップルというのは基本的にうまくいかない。破局まっしぐらか、どちらかの浮気コースである。経験則で語るが、俺の恋愛失敗経験値は、それなりに当てにしてくれていい。

だから最近はできるだけ、要求や、ムカつくことがあっても、態度で示すのではなく「ここが嫌なのでやめてくれ」「こうしてほしい」とちゃんと言うようにしている。

そう、俺が色恋や恋愛で学んできたこと、それはただひとつなのかもしれない。「小細工なしで、言葉にしてはっきり伝えること」
それでダメになってしまうこともあるけれど、いつまでも悶々としているよりはずっといいだろう。まだ若いし、まあまあハンサムだし、次の相手は他にも見つかるだろう。恋人も、クライアントも。

やっぱり色恋と仕事は似ている。

小賢しいモテテクニックなど、夜の繁華街でラブアフェアの相手を探すときや、単発の依頼を受けるときにでも使えばよい。それはそれで必要なスキルだろう。そう思えるのは、俺の前向きでとても良いところだ。

さて単価もあがったことだし、今夜はよく冷えたシャンパンでも開けて、お祝いしよう。え?二日酔い?休肝日?なんの話?(欠点)

執筆中BGM:杏里「WINDY SUMMER」


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