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マーケターに力を与える、マーケターのためのプラットフォーム【Marketo(マルケト)】

数年前からぐっと市場が伸びてきて、最近では国内企業の参入も増えてきているMA業界。その代表格とも言える「Marketo(マルケト)」のマーケティングトレースをしてみたいと思います。

「MAツール最近増えてるな」「各社何が違うんだろうか」と情報収集をしていたのですが・・

「集客に強い!」「最安値!」「BtoB特化!」「オフラインにも強い!」と各社異なる基準の比較表が出てきて、何が何だか分からなくなってきた・・競争めちゃめちゃ激化してるな・・と思い、自分の情報の整理を兼ねたマーケティングトレースです。

マーケティングトレースの祖、黒澤さんは過去に同じくMAツールのHubspot(ハブスポット)のマーケティングトレースをしていました。

「そもそもMAって?」「聞いたことあるけど・・」という方、そもそものMA(マーケティングオートメーション)について知りたい方は下記からどうぞ。


1.Marketo(マルケト)について

2018年10月にAdobe Systemsが買収したことでも話題となったMAツールのベンダーであるMarketoですが、導入社数は全世界で5000社以上。(2020年1月時点同社ウェブサイト)

歴史と辿ると、創業者のフィル・フェルナンデス氏はCRM製品のEpiphany (エピファニー)という会社でエンジニア出身。ITスキルがないと動かせないツールが多い中、マーケターが自分達で操作できるツールが必要だと考え、マーケティングツール開発を開始したとのこと。

「マーケターに力を与える、マーケターのためのプラットフォーム」を生み出すべく2006年にシリコンバレーで創業し、2013年にはナスダックに上場。2014年に日本支社設立。

日本でもリクルート、グロービス、Sansanを始めとした多くの企業に導入されており、ツールのシェア数などを調査する「Datanyze」ではシェア7.99%で第4位となっています。(シェア率のデータは各社指標や調査対象を変えて自社が上位に来るようにランキングを作製しており一概には言えないと思いますが・・)

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特徴としては、下記が挙げられ、特に外部連携を含めた「機能面」ではMAツールでNo.1と言っても過言ではないでしょう。

<位置付け>"顧客体験"全体を統合したプラットフォーム
<外部連携>700社の関連ソリューションと連携。
<コミュニティ>1800名を超える国内ユーザーコミュニティ
<短期導入>1-2ヶ月の短期間で導入可能。スモールスタートでデータを蓄積し、検証を繰り返しつつ活用を広げていくアプローチが可能。

2.MA(マーケティングオートメーション)市場に関して

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出典:矢野経済研究所「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーケティングオートメーション)サービス市場に関する調査(2017年)」https://www.powerweb.co.jp/column/marketing-automation-market.html

上記は、2017年のデータではありますが、2022年には530億の市場規模になると予想されている成長市場です。

3.5フォース分析


fiveforces-5フォース分析

MAツールの機能提供の難易度は、新規参入企業の多さを考えても低く、市場の伸びに比例して、新規参入は今後も増えていくと考えられます。

昨今流行りのSaaSプロダクトが顧客基盤を固めた後に、追加機能として提供してくるということも考えられます。

4.ポジショニングマップ

MAツール ポジショニングマップ

引用:https://www.ikkosha.co.jp/promarke/contents/solutions/?c=matool&p=4

調べてみると本当に多種多様なMAツールがあり、強みも異なるのですが、一例としては上記のようなポジショニングマップがありました。勝手な所感ですが、一言で表してみました。

<外資ツール>
・Marketo:MAツールとしての機能性No.1
・Hubspot:CRM、SFA、MAの「オールインワン」
・Pardot:Salesforceとの連携性No.1
・Oracle Marketing Cloud(Eloqua):16段階の詳細なスコアリング機能
<国産ツール>
・SATORI:プライベートDMPを内蔵の「集客に強い」ツール
・シャノンMarketing Platform:展示会などデジタルとアナログを統合したMA
・List Finder:BtoBメールマーケティングに強み
・Kairos3:必要最低限の機能のみを搭載した、低単価BtoB向けツール。

5.4P分析

fourp-4p分析

・Product
競合がひしめく中、製品としては自社の機能拡充以外にも、外部ツールとの連携や、親会社AdobeのAI機能の統合など、機能性を積極的に高めてる。
・Price
非公開となっており正確には不明だが、メール送信数ではなく、アカウント数での課金のため、スモールビジネスでも始めやすい。一方で、他社の機能を絞ったプロダクトと比べると高いとの情報も。
・Promotion
MAベンダーということもあり、コンテンツマーケティングが強い。ブログ→ホワイトペーパー → セミナー → 商談までの一連の流れを、Marketoを用いてナーチャリングしていると思われる。
・Place
採用情報を見ると自社での営業担当も抱えているが、販売パートナーとしても、Accenture、電通デジタル・Fujitsuといったマーケティング領域に強い企業との連携をしている。コンサル案件を手掛けながら、MAニーズがあれば紹介をして紹介フィーを得ていると考えられる。

6.もし自分がCMOなら

・Product

<同質化戦略>
・機能性No.1のポジショニングを崩さず他社の差別化要因をどんどん追随して、Marketoでできないことは何も無い状態を作り上げていく。
・低価格、機能制限があるMAツールが増えてきているので、徐々に顧客側での不満や、もっとマーケティングを強化したいというニーズが出てくることが考えられる。
・そこで同質化を進めて、今後、MAツールの活用水準が高まると、他社ツールではかゆいところに手が届かない状態からMarketoへの移行を狙いたい。

<差別化戦略>
・現状MAツールは、「必要機能」「社内リソース」「費用」の観点で選択されている印象であり、代替が難しい選ばれる理由を作りに行きたい。
・Adobe SenseiなどAIを活かして、リードナーチャリングにおける最適解(画像・文章の長さ・アプローチ頻度)を提案するなど、他社に追随できず圧倒的に成果に繋がる強みをつけたい。(現在どこまでMarketoとAdobeの連携が進んでいるかはリサーチできていないです。)

・Price

<フリーミアム戦略>

・Productの戦略にて、スイッチングを狙うことを述べたが、短期的には移管は起こりにくく、継続率も非常に高いことから、如何に早くシェアを取るかは各社の至上命題であるだろう。

・そこで、現在導入社数15,000社を超えるHubspot社がCRM機能を無料で活用可能にしているように、導入社数をKPIとした動きを促進したい。(Hubspotが15,000社、Marketoが5,000社と大きな開きがあるが、売上や有効アカウント数などで比較すると案外差はないかもしれない。)

・Promotion

<会員の階段設計・コミュニティ活用>

・段階的にユーザーの興味関心のフェーズに応じた、コンテンツや課金プランを用意し、成果を出している事例として、才流 栗原さんがNoteにもしていた船井総合研究所が挙げられる。

・現在のユーザーコミュニティの会合で定期的にオープンな会を設けたり、マーケティング/インサイドセールスなどの成功事例を共有する研究会の会員など、初期接点を積極的に作りに行き、Marketoの啓蒙活動を行っていく。

・特にMarketoのコンセプトでもある「マーケターに力を与える、マーケターのためのプラットフォーム」として、マーケター向けのイベントやSNSキャンペーン・コンテンツマーケティングを積極化していきたい。

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引用元

<リスティング広告・SEOへの資本投下>

・現在WEB上で顧客が「MAツール 比較」「MAツール ランキング」「MAツール シェア」など、顧客が比較検討フェーズには、各社のリスティングやオウンドメディアの記事に行き着くことになるが、そこは各社のポジショニングトークが展開されている状況である。(もちろんMarketoが実施する際にもそうなるが)

・完成度の高い(客観的な)比較表を作成してしまい、国内MAツールが独自の基準を組み込む余地を減らしたい。

Place

正確な従業員数は不明だが、Marketo単体では従業員数は100名前後、マーケティング、インサイドセールス、営業、コンサルと各機能部門が存在することから営業の割合は2~3割ほどではないかと推測ができる。Marketoの対象顧客は中堅企業〜エンタープライズであり、営業リソースは圧倒的に少ないことが考えられる。

<パートナー戦略の強化>
・現在も行っているパートナー戦略であるが、これを強化したい。現在のパートナーシップ提携先の手掛ける案件は、おそらくエンタープライズが中心となっていると考えられ、SMBの案件強化のためパートナー数を全国に広げたい。特に販売まで行えるレベルまでパートナー企業との連携を進められるかがポイントになるだろう。

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・強固な情報ネットワークを持ち、各社との連携を密に行っている事例としては、日本M&Aセンターが挙げられる。下記の図にあるように、ほとんどの金融機関・会計事務所との提携をしており、注目すべき点としては、日本M&Aセンター側からの働き掛けである。

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・表彰制度
・出向者派遣/受け入れ
・研究会/研修/養成スクール
など、かなり手厚く支援をしている。

・これらを参考に、自社のマーケティング活動も強化したいBtoBマーケティングのコンサルティング企業を中心としてMarketoコンサルタントの派遣/受け入れを進めるなど、販売網を強化していく。

<自社営業リソースの強化>

・短期的には販売代理店で補強を進めるも、やはりフィーバックによる利益率の悪化やクオリティコントロールの観点で自社の営業リソースは補強する必要があるだろう。

・セールスフォース社は2024年には従業員数3,500名規模を目指しているように、(既に行われているかもしれないが)Adobeからの人員補填や自社採用の強化を進めたい。

7.まとめ

・競争の激化の進むMA市場であるが、まだ導入企業は全体の3割とも言われており、シェアをどう広げていくか、新規開拓にまだまだ焦点が当てられるフェーズであるだろう。

・シェアを獲得しきれていないMarketo社としては、Hubspot・Pardot・Eloquaといった外資系ツール以外にも国内MAツールの動向にも注視する必要があり、差別化は急務ではないだろうか。

・強いインサイドセールス・マーケティング部隊があるとしても、対面販売網の弱さを補う必要はあり、パートナーシップや自社営業人員の大幅な補填が必要であるだろう。

・Adobe買収後、どのように変化しているかあまりニュースで明るみになることはなく、数値的な動向も掴みにくいMarketo社であるが、機能的な強さだけでなく積極的なプロモーションでシェア獲得を急いでいきたい。





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