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文章で迫力は出せるのか?

偶にはシナリオについて考えておきたい、恒石涼平です。

今日のテーマは「文章で迫力は出せるのか」

文章主体の作品におけるアクションなどの迫力のあるシーンは鬼門、簡単には書けない部分です。じゃあどうやったら迫力を出せるのか、そこについて自分の考えをまとえめていきます。

《そもそも迫力って何ぞや》

「迫力がすごい」だの「迫力のある演技」だの、作品ではよく『迫力』という言葉を聞く。当たり前のように使ってる言葉だけど、その意味や捉え方はどういうものなのか。

はく‐りょく【迫力】 の解説
見る人や聞く人の心に強く迫る力。「―のある演技」「―に欠ける」

迫力(はくりょく)の意味 - goo辞書

ひとまず辞書で調べるとこのように出てきました。「心に強く迫る」という意味合いは『感動』といった言葉に類似するイメージだね。

しかし感動の場合は「心を強く動かす」という意味。「迫る」と「動かす」はまた違う言葉、うーむ日本語ややこしい。

迫力を理解する為にも、まずはこの差について考えていきましょう。


《感動と迫力の差》

まずは『感動』について言語化してみましょう。なおここからは辞書から外れるので、あくまでも私見にはなるがご容赦いただきたい。


◆感動とは何か

心が動くというのは「感情そのものが動く」ということだ。

そもそも人間は常に複数の感情が揺れ動いている生き物で、良いことがあれば喜びが強くなり、悲しいことがあれば悲しみや怒りが強くなる。しかし喜びと怒りが混在する場合もあるから、感情もまた酷く複雑なものです。

感情に対して自分のイメージとしては「100%の中に様々な感情が入っており、割合が変化することで感情が表面化する」という風に捉えています。

楽しいことがあったら「楽しさ」の感情が20%増えたら、その分「怒り」「悲しみ」などの感情が20%減る……みたいな。

割合が高いものは分かりやすく感情として捉えており、低いものは感じてはいないが存在する。だからこそ人間は常に複数の感情が揺れ動いている、という感じ。

この感情の割合の増減が、短時間に多く変化する

それこそが私にとっての『感動』です。


◆迫力とは何か

では本題である『迫力』、その意味合いである「心に強く迫る」とは何なのか。

これを紐解く前に、「迫る」について知っていきましょう。

せま・る【迫る/×逼る】 の解説
[動ラ五(四)]
1 圧倒するような勢いで近づいてくる。押し寄せる。また、せり出している。
2 空間的、時間的に隔たりが小さくなる。接近する。
3 詰まって苦しむ。特に、呼吸が激しくなって息苦しくなる。感情が高ぶってきて胸がしめつけられる感じになる。
4 行き詰まってゆとりがなくなる。せっぱつまる。困窮する。
5 相手にこちらの考えを聞き入れるように積極的に求める。強い態度で要求する。強いる。

迫る/逼る(せまる)の意味 - goo辞書

複数の意味がありますが、今回の場合に当てはまるのは①と③かな。「圧倒する勢い」「押し寄せる」「詰まる」「感情が高ぶる」といった部分。

これらのイメージをまとめると「短時間で押し寄せることで、感情が高ぶる」という感じでしょうか。


◆感動と迫力の違いとは

先ほど挙げた感動と比べると「変化する」に対してこちらは「押し寄せる」になります。この差をどう捉えればいいのか、自分なりの見解は……

『感動』は100%の中へ割合が変化すること。

『迫力』は100%を超えて感情が増えること。

心の中で揺れ動くのが感動、心の外から感情を注がれて溢れ出すのが迫力。そんなイメージで私は『迫力』を理解しています。


《文章で迫力を出すには?》

ようやくテーマに戻ってきました、ここからは『文章で迫力を出すこと』を考えていきましょう。

先ほどまとめた内容を元にすると『文章を使って感情を増やし、100%を超えさせること』になります。映像作品であれば音や画を使って分かりやすい迫力を生み出すことができますが、文章ではどうしたらいいのか。

まだ仮定的ではあるんだけど……自分的には「読者の予想・理解していない感情を与えること」かなと思います。

想定外の展開だったり、予想を超えるような大きなことだったり、簡単には言語化しづらい(喜怒哀楽等に当てはまらない)感情を与えたり。突然書き方を変化させたり、破天荒な表現をしたりするのもアリですね。

例えば……






突然、空白を入れたりね。






これは文章としての表現から若干枠が外れてるかもしれませんが、他にも色々と読者の予想・理解していない感情を与えることは出来ると思います。

  • 日常からいきなりの戦闘で予想を超えた展開を作る

  • 現実世界にいきなり超常的なことが起こる

  • 仲間だったキャラが突然裏切る

  • 極端に句読点や改行が多くなる、少なくなる

  • 文章の言葉遣いが突然変わる

  • これまで使っていなかった言葉を多く使う

簡単な例でしかありませんが、こういう方法を駆使すれば文章だけでも『迫力』を作ることができます


《迫力を作るうえで大事なこと》

読者の予想・理解を超えることで迫力を作る。それは同時に「思っていたのと違う」「よく分からない」と読者が感じることでもあります。

なので迫力を作る際は『短時間・瞬間的な迫力』にすることが重要です。

一瞬だけ理解を超えて、その後から理解出来るように情報を補完する。そういったアフターケアを一緒に行うことで「読者の興味関心が減らないようにする」「読者が離れやすい状態にならないようにする」という点を意識していこう。

アクション映画とかでも常に爆発しまくる訳じゃないですからね。爆発→それに対する動き・話→爆発……といった形で調整がされてるのだ。


それにもう1つ。

より迫力を出したい場合は、その前に「一旦落とすこと」も重要になります。

いきなりの戦闘で迫力を出すならその前の日常はより穏やかなものに、仲間が裏切るのならその前に信頼が深まるエピソードを入れる、書き方を変えるのであればその前の文章はシンプルに分かりやすいものにする。

迫力の出し方に対して、その反対に位置するものを見せることでより突出させる。迫力だけに関わらず要素を目立たせる技ですので、こちらも意識していきましょう!


ということで本日は「文章で迫力は出せるのか」というテーマで私の考えをお伝えしてみました。創作に正解はありませんが、この知識があなた自身の正解を導き出す一助になれば幸いです。

ではまた次回お会いしましょう。よかったら個人制作の記事も読んでみてね!


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