退院へ

2021.6.3

熱はなんとか37℃台、相変わらず激しい咳が続く。
一度咳き込むと止まらなくなり、肺が痛い。
ほんとにこれで重症ではなくなったと言えるのだろうか。
またICUに戻ることになったらどうしようと不安になる。

相変わらず食事は半分ぐらいしか食べられない。
しかも半分食べるのに30分かかる。
飽きてくる。
夫が差し入れてくれたクロワッサンが美味しかった。
(本当はダメです、差し入れ)

首に縫い込まれていた管が2本外された。
すこーし動けるようになる。
寝てばかりもダメだと言われたので、動ける範囲で動く。
自分の足を見てびっくりした。
筋肉が落ちて、細くなっていた。愕然。

夕方、鼻の酸素吸入のチューブが取れた。
暖かいタオルをもらって顔を拭く。気持ちいい。
夜は相変わらず眠れない。睡眠時間は3時間ぐらい。

2021.6.4

明日明後日は土日で先生たちもお休みなのか、今日はたくさん回診があった。
朝イチで採血4本…。レントゲン。心電図。
結果を見て、茂木健一郎似の主治医は「まだだな」と一言。
リハビリの先生は「顔色が一日一日よくなってるから、もうちょっとですよ!」と励ましてくださる。
精神科の先生は「本当によかった、よかったですね」と。
看護師さんも「一時はどうなるかと思いましたよ、よかったですね!」という。

沢山の先生、看護師さん、医療従事者の皆さんに助けられて、私の命は踏みとどまっている。

2021.6.5

おしっこの管が抜けた!
これで一人でトイレに行ける。
と思ったら今日はまだ単独では行かせてもらえない。
転んで骨でも折ったらプラス入院2ヶ月な!って先生が笑う。
それはなんとしても避けたい。

2021.6.5

日曜日なのに回診。
いつもと違う先生。
治療薬をステロイド剤に変更。
毎食前に血糖値の検査をして、高かったらインスリンの注射をするのこと。
幸い、退院するまでインスリンのお世話にはならなかった。

リハビリの先生は今日も気分を前向きにしてくれる。
先生が利尻富士を普通のスニーカーで登った話で大笑い。

鼻の酸素マスクが取れた。
めちゃくちゃうれしい。
でも、まだベットから出てはいけない。
お茶を冷蔵庫から取ることさえナースコールでお願いしなければならない。
元気は出てきてるけど、咳はひどいからしょうがないのかな。

2021.6.6

ステロイド剤を順調に減らせて、高熱などのぶり返しも見られないので、退院をどうしましょうかね、という話が出る!うれしい!
退院できることは、もちろん嬉しいこと、
でも、まだ残るしつこい咳やしゃがれたままの声、食欲もない。
それでいいのかな。
あと、もう私は陰性なのかな。それが一番気になっている。

お風呂に入った。
と言ってもちゃんと洗えたのか?と思うくらいに腕が上がらず、体が重い。
でも、本当に気持ちよかった。
なにより1人で入れたことに感動した。

夕方。
退院に向けて動き出した。
退院するとここの病院とは無関係になり、また熱が出たら市の保健所に連絡してくださいと言われた。
あと、陰性かどうかではなく、感染してしばらく治療しているから大丈夫“だろう”というので退院らしい。検査はしないということ。
それって大丈夫なんですか?と聞くと、厚労省の決まりですと言われた。
そんなことでいいの??
声のことは、まだ1週間ほどだから、治る可能性はありますよ、と。
治らないかもしれないのか、と思った。

夜からご飯をやめてパンにしてもらった。
やっと初めて完食できた。

2021.6.7

夫が届けてくれたラジオ。
なかなかいままでのように楽しめないでいる。
テレビはほとんど見ない、ラジオ大好きだったのに。
ものすごく疲れてしまうのだ。
何も聴かずに外を見ているのが今は落ち着く。

昼前に大部屋に移動になる。
と言っても、誰もいない4人部屋。
綺麗に山が見える。気分が変わる。

午後、回診あり。
あさって退院に決まる。
よかった、生きて帰れる。
心からそう思った。

2021.6.8

退院に向けて書類を書いたり、荷物をまとめたり。
窓から見える山をぼーっと眺めたり。
ただただ退院した後のことが不安。

退院前にお風呂に入りたいと言ってみたけど、「退院してゆっくりおうちのお風呂に入ってください」と言われる。希望通らず。
患者の数は入院してきたよりかなり減っているというのに…介助が必要な訳では無いのに…。
がっかりした。

帰れるんだという喜びと、この咳や嗄声は治るのかという強烈な不安。
これからその不安と闘わなきゃならないんだな。

最後の夜、相部屋に同年代と思しき女性が入院してくる。つらそうな咳。会話は交わせないけれど、一緒に闘いましょうって言いたかった。

なかなか眠れず、夜が明ける。


2021.6.9

ROCKの日に退院だって。
そう思って忌野清志郎を聴いて迎えの夫を待つ。
夫は元気にむかえにきてくれるのだろうか。

待ち合わせの時間になり、看護助手さんが荷物を持って下さり、待ち合わせ場所まで連れていってくれた。
夫が、いた。
それだけで嬉しかった。なによりも。なによりも。

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