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モノゴトはべき乗則で動く

前から気になっていた本。
カオス理論とか、バタフライ効果とかもう少し学びたいなぁと思っていたので、読んでみた。

若干期待と違う内容でもあったものの、面白い気づきもあったので、
少しまとめてみようかと。
天狼院書店のWebサイトに掲載いただいた記事を一部加筆・修正しています)

未来予測とネット炎上

未来予測に関する取り組みはいろいろある。
何を予測するかにもよるが、批判を承知で非常に大雑把にまとめると、
「何%程度の確率で起こりそうか」というラフな予測はできるが、
●年後に戦争が起こる、あるいは●月●日に地震が起こる、
といった正確な予想は難しい。


なぜ難しいか、をお伝えするために、少し身近な例で考えてみたい。
インターネット上で”炎上”するか否か、だ。

例えば皆さんがSNSで友人の投稿を見かけたとしよう。
その投稿がSNS上で炎上するか否か、を見分けることはできるだろうか?

人種差別的な投稿であれば炎上する可能性が高い、といったように、
炎上しそうかどうか、の判断はつくだろう。

その投稿が実際に炎上するかどうかはわからない。
もっと言えば、同時に二人が同じ投稿をしたとして、
一方は炎上するが、一方は炎上しない可能性も十分に考えられる。
なぜそんなことが起こるのか?

炎上するか否かには、投稿内容だけではなく、
誰がその投稿を見かけるか、
投稿を見かけた人が拡散するかどうか、
誰が拡散された投稿を見かけるか、
拡散された投稿を見かけた人がさらに拡散するかどうか、
………
……………

炎上するか否か、は無限の連鎖によって決まっているのだ。

最初のころに投稿を見かけた人が拡散するかどうか、という小さな差が、
結果的には炎上するか否か、という大きな差になる。

カオス理論とサラエボ事件

こういった現象は、専門用語でカオス理論と呼ばれる。
カオス理論は、”バタフライ効果”という言葉で説明されることが多いが、
バタフライ効果とは、「ブラジルで1匹の蝶が羽ばたくことが、最終的にはテキサスの竜巻に繋がる」というカオス理論の比喩だ。
取るに足らない現象が、雪だるま式に重大な現象を引き起こすことを表す。

バズるかどうか、も炎上と同様だ。
類似の記事でも、タイミングや初期の閲覧者などわずかな違いが、
バズるかどうかを分けることになる。

「炎上するかどうか、バズるかどうかなんて、未来予測と何の関係もない」
と思われるかもしれないが、実は、戦争や地震が起こるかどうか、
も本質的な構造は同じだ。


「サラエボ事件」と聞くと、ピンとくる方も多いだろう。

中学、高校の歴史の授業でも出てくる事件で、
1914年、サラエボの病院に車で向かっていたオーストリア=ハンガリー皇太子夫妻が
ボスニアの青年に暗殺され、第一次世界大戦のきっかけとなった事件だ。


この事件には、歴史の教科書には触れられていない真相がある。
皇太子夫妻の乗った車両が、誤って予定とは違う角で曲がったことが、
事件が起こる原因だったのだ。

誤って曲がった道の先に、暗殺犯となった青年がいたのだった。

車両が正しいルートを通っていれば、サラエボ事件は起きなかった。
サラエボ事件がなければ第一次世界大戦はなかったかもしれないし、
1,000万人ともいわれる人々が命を落とすことはなかった。
さらに言えば、第二次世界大戦だってなかったかもしれない。
そうなれば、今の国際社会は全く違うものだっただろう。

曲がり角を間違えるという、何の変哲もない出来事が、
今の国際社会を形作ったのだ。

21世紀でも似た例はある。
2010年から2012年に発生したアラブ諸国で起こった大規模反政府デモ、通称”アラブの春”だ。

この事件のきっかけは、警察官がチュニジアの街頭で果物を販売していた青年に対し、
販売許可がないとして、商品を没収したことだった。

商品を没収された青年はガソリンをかぶって自ら火をつけ、焼身自殺を図った。

販売許可がないために商品を没収する、という出来事が、
複数の国で政権が打倒される歴史的な事態にまで発展した。

結局、世の中を動かすものは?

世の中は、何の変哲もない出来事がきっかけで大きく揺れ動く。
裏を返せば、未来を予測するためには、日々の膨大な出来事を検証し、
それぞれが世の中にどんな影響を及ぼすのかを予測していかなければならない。

戦争も天災も、そして炎上やバズも、
取るに足らない小さな出来事が、
世の中を形作っている。

だから未来を"正確に"予測するのは難しい。