あいうえおもいで 【か】

【か】階段(かいだん)

階段から派手に落ちたことがある。

3歳の頃だったか。
マンション共用部の階段を踏み外して7〜8段の高さから転げ落ち、フェンスの土台のコンクリートの角に額を打ちつけた。
さすがにその瞬間のことは記憶にないが、かなり出血したらしい。

母に急いで近くのクリニックへ連れて行かれ、結局3針縫ってもらった。
だいぶ後になってから母から聞いた話では、

・出血した私を抱き上げて、母のブラウスが赤く染まった。
・騒ぎを聞きつけた近所の人が慌ててタオルを用意して、私の傷口を抑えてくれた。
・いつも一緒に遊んでいた、同じマンションの年上の子どもたちが母の頼みを受けてうちの乳母車を取ってきてくれた。
・私はそれに乗せられて、マンションから徒歩約10分のクリニックへ連れて行かれた(大人になった今になって思うと、頭を打って出血して、そこは救急車じゃないんかいとツッコミを入れたいが)。
・お医者さん曰く、ちょっと骨も見えていたとか(それって頭蓋骨...)。

額を縫われる瞬間の記憶だけがうっすらある。
クリニックの白い天井と蛍光灯、お医者さんの「すぐ済むからね〜」という声。

切り傷は前髪の生え際のところだったので、もう傷跡もよく見ないとわからない。額のシワのひとつになったようなものだ。

「子どもの時に頭を打った体験がある」というのは美大生あるあるだと聞いたことがある。もしも打っていなかったら、今とはまた少し違う人生だっただろうか。


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