若手の異動、新採の配置について

 4月1日から異動の方又は新たに都庁に入る新採の方は多くいるでしょう。
 中には出先に異動、配属になって落ち込んでいる方、本庁に異動、配属になって喜んでいる方、様々いると思います。
 少し長くなりますが、中堅~ベテランの域に差し掛かった私が若手の異動などについて感じていることを綴ります。少しでも明日から前向きな気持ちになれば幸いです。
 私は人事を担当したこともなく、完全に経験に基づくものです。あらかじめご承知おきください。

 まず大前提の話ですが、本庁は都民の代表者である知事や議会で決まったことが都民に届くように出先が仕事をしやすくするためにかみ砕いて通知すること、出先は本庁からの通知に基づいた業務をしっかりと遂行するのが仕事です。通知だけ出ても直に都民と接する出先が仕事をしてくれないとまさに絵にかいた餅ですし、出先も通知なしでは業務に根拠がなくなり、何もできなくなってしまいます。このように、本庁には本庁の、出先には出先の役割があり、本庁と出先の間に優劣はありません。
 ただし、ミスをしたときにより大きな影響を及ぼすのはどちらかというとそれは本庁です。とある出先がこけても他の出先に影響はありませんが、本庁がこけると全ての出先がこけることになります。そうなると結果的にそうした責任が重たい職場=本庁には仕事ができる職員を配置する傾向にあります。

 本題に入りますが、まず新採の最初の配属先についてです。新採は都庁で働いた業績評価がされていないわけですから、どれくらいの戦力になるのかというのはわかりません。これくらい働いてくれそうだな、これくらいの能力ありそうだなと職歴や学歴を参考にして本庁に配属したりすることはあるかもしれません。これはプロ野球でいうドラフトのようなもので、過去の実績を勘案した期待値と考えて良いのではないかと思います。(この辺は局によって明らかに方針がそれぞれ異なります。一律に出先に配属する局もあれば本庁と出先半々にして2~3年後に交換する局などがあります。)
 しかし、過去は過去です。プロ野球の世界に入って、一回も一軍に出場することなく去っていくドラフト1位がいる一方でドラフト最下位で歴史に名を残すような名選手になる選手もいるのです。チャンスの回数こそ違うかもしれませんが、都庁の世界も入ってしまえば学歴、職歴一切関係ありません。どれだけ真摯に仕事に取り組むか、どれだけの成果を出すか、この点に尽きます。だから最初の配属先を気にしすぎる必要はないです。あくまで入った後勝負です。将来試験に受かりたい、管理職になりたいという方で本庁に配属された方はその期待に応えるように一生懸命頑張ってください。出先に配属になった方は今に見ていろと反発のエネルギーに変えてまずはその出先で一番の職員になることを目標に頑張ってください。

 そしてこの「どれだけ真摯に仕事に取り組むか、どれだけの成果を出すか」というのは新採に限らず、入都後数年経った若手にも共通することです。
 私は出先と本庁を何回か行き来していますが、特に出先にいるときに異動、配属されてきた若手に感じることです。本庁に行きたい。行きたかったという割に、仕事に一生懸命さが感じられないのです。大した努力や成果を出していないのに、なぜそうした責任が重たい部署にいけると思っているのか不思議でなりません。
 そういう若手の多くは内心こう思っているのではないでしょうか。「今の職場は希望していたところではない。希望していない部署ではやる気もおきない。希望の部署にいければもっと頑張れる。」と。

 甘いです。ものすごく甘いです。人事はそんな憶測や可能性で動きません。何の実績も積み重ねていない、周りからあの人は仕事ができると信頼を得られていない人の「希望の部署にいければもっと頑張れる」という言葉を信じる人がいると思いますか? 
 男女差別の風潮がある中でちょっと不適切な例えかもしれませんが、あなたが女性だとして、交際しているフリーターの彼氏が「結婚したら真面目に定職について働くから結婚しよう!」と言って来たら大半の人はこう思うのではないでしょうか。「だったらまずしっかり働けるというところを見せてくれ」と。
 ひどい人になると「職場復帰に当たっては職場環境を変えることが望ましい」という診断書を医者に書いてもらってまで異動しようとする人がいるそうです。パワハラなど人間関係でトラブルになってしまい、顔を合わさせると他の人の業務にまで支障が出るくらいの争いが起きるのであれば、異動させるというのも一つの解決策だと思いますが、診断書がそこの職場ではやる気が起きない、割り振られた分掌はやったことないから拒否したい、などの理由からくるものであれば、人事は絶対に異動させないと思われます。そんなにイヤイヤいうならそのまま3年間休職して辞めたら?くらいに思っているかもしれません。

 以上のように、もし行きたい部署があるのなら、口だけではなく、仮に今の職場に不平不満があったとしても、今の職場でしっかりと実績を残すことが最も重要です。実績を残すことで「自分はどんな職場でも頑張れる、成果を出せる。だから希望の部署にいけばもっとやる気が出て、さらに成果を出せます!」と暗にアピールするのです。
 都庁は特定の職員をずっと囲い込むことはできません。一般的に3年前後で必ず異動させなければなりません。そのときに「この責任が重たい部署は誰にやってもらおうかな。お、こんな仕事のできる人がいるじゃないか。しかもこの部署希望してる。じゃあこの人なら任せても大丈夫かな。」と人事に思わせられれば完勝です。

 希望していない職場に配属されたり、嫌な分掌をもたされたらモチベーションが落ちるのはわかります。しかし、その嫌な気分を引きずってしまって大した成果が出せなかった、出すつもりがないのであれば、それは出口の見えないトンネルの入り口に立ってしまったと考えるべきでしょう。
 モチベーション下がる⇒成果出せない⇒こんな人他のどこにも出せない⇒曲がりなりにも一応経験そのものはしているから同じような業務内容の別の部署又はなるべく都民や他の職員に影響の少ない部署へ異動させよう⇒さらにモチベーション下がる⇒成果出ない⇒・・・の繰り返しです。

 中堅以降はあまり分野を跨いで異動させることはなくなり、それまでに培った経験部署を中心に異動していくことになります。若いときに多くの職場を経験できないのは将来的にもデメリットが大きいと思います。
 若手にせよ新採にせよお伝えしたいことはただ一つ、「大事なのはどこに配属されたかではなく、配属された先で何をするか」です。

 新採の方、異動された方、残留された方、どなたもまた明日から心機一転頑張りましょう。私も頑張ります。