プラモデル製作記 ハセガワ 1/72 サーブ AJ37 ビゲン
ハセガワの「1/72 サーブ AJ37 ビゲン」を作りました。型番は「JS-026」です。
今回のキットは、たまたまリサイクルショップのプラモデル棚を眺めていたら、なかなか見ないハセガワのビゲンの古めの箱を見かけて購入したものです。
調べてみると、どうもこのキットが世に出たのは1970年代、箱の「スエーデン」の表記が古さを感じさせます。
(なお、この世代のマニュアルはパーツごとの名称まで細かく載っており、どのパーツが実際にはどういう用途なのかすぐ分かるため個人的に好感を持っています。)
中古プラモデルの陳列も最近は親切になり、何か問題のあるキットは透明シュリンクで中身の確認ができるようにして売られていました。
なるほど「デカール傷み」、この時点で嫌な予感はあります。自信のない方は手を出さない方が吉ですね。成形色はシルバーで、そのまま無塗装でも楽しむことができるかと思います。
「サーブ AJ37 ビゲン」とは、スウェーデンの航空機メーカー「サーブ」によって生産されたスウェーデン国産の戦闘機です。
スウェーデンは伝統的に中立政策をとっており、運用する兵器も自国で開発・生産した独特なものが多くみられます。
スウェーデン空軍では、有事の場合には各地に分散配備したシェルターから、高速道路の直線区間を滑走路として利用して迎撃するという運用をするため、ビゲンはSTOL(短距離離着陸)性の高い迎撃戦闘機として設計されました。
現在こそ「カナード翼+デルタ翼」という構成は欧州の戦闘機によくみられるものですが、ビゲンはこの構成の「先駆け」であったとも言えます。
また、STOL性を高めるために戦闘機としては珍しい「スラストリバーサー(逆噴射装置)」を搭載していることも特徴の一つです。
「AJ37」の「AJ」とは「Attack(攻撃)」「Jakt(戦闘)」を表し、主に対地攻撃任務を中心としたビゲンの初期生産型です。
さて、ハセガワの「AJ37」はこのキット以降も限定版としてデカール替え商品がごく稀に出ているものの、基本的に入手の困難なキットです。
ただし、そもそもが「ビゲン試作機」をベースとしたキットで、ここから金型が変更されていないという問題があります。
試作機と量産機の大きな外観上の違いは
主翼前縁形状とレーダー警戒器・翼端灯の位置
ベントラルフィン形状
カナード翼の上反角
などがあり、ハセガワのキットを使って量産機仕様にする場合は大幅な改造が必須となります。
幸いにもこのキットは試作機当時のデカールが豊富(といっても細かいものどころか計器盤すらないですが)、あえて量産機にすることもなく試作機として製作することとしました。
付属するデカールは
試作1号機 (fpl 37-1)
試作2号機 (fpl 37-2)
試作3号機 (fpl 37-3)
量産機 (FC 17)
となっていて、国籍マークと機体番号だけというシンプルなものです。
試作1号機には「ビゲン=雷神トールの槌『ミョルニル』によってもたらされる雷」と思われるシンボルマークがインテーク横に描かれています。
また、一応量産機のデカールが付いていますが、「FC (Försökscentralen=テストセンター)」とのことで、航空団への引渡し前の実験部隊マーキングのようです。
完成写真はこちら。背景は「紙模型工房」様の「背景支援」よりダウンロードしたものです。
今回は後述の吊るし物を付けるうえで、実際に兵装搭載テストを行った「試作2号機」マーキングとしました。
レドームの色は時期によってまちまちですが、見つけた写真をもとに黒塗装としています。
さすがにコックピット周りが寂しかったので、プラ板で計器盤周りを覆い、HUDを付けてみました。
さて、このキットを素組みしたときに目立つ点は「テイルコーン・エンジンノズル周り」です。実際の機体はエンジンノズルの後ろに特徴的なスラストリバーサーが取り付けられているため、奥まったノズルは外からは目立ちにくいのですが、リバーサーのドアがないため「ただの筒+平らな底」となっています。
まずは、円周上に三か所あるリバーサーのエグゾーストエジェクターからです。これはリバーサーの作動によらず自動開閉し、アフターバーナー作動時以外には開いた状態で追加推力を得られるシステムになっているとのことで、まずこちらをピンバイスとデザインカッターで開口しました。
続いてリバーサーを「開」もしくは「閉」にしますが、駐機状態で「閉」状態ならエンジンノズル内部はごまかせると思い、「閉」状態にするパーツを3Dプリンターで製作しました。
リバーサー作動時の写真を見ると完全には閉じないようで、製作したパーツも空隙を開けるようにしています。
ちょっと厚めに作りましたが、まあ何もないよりかははるかに見栄えが良くなったかと思います。
完成写真、後ろから見るとこのようになりました。
スラストリバーサーのドアの隙間から、向こう側が見えるのが分かるかと思います。
(ノズル周り、これ以上のディティールアップも可能ですが、私は今回はここまでとします)
さて、続いて「吊るし物」についてです。
キットにはスウェーデン国産の空対艦ミサイル「Rb 04」と500Lドロップタンクが付属しています。
ところで、ビゲンの兵装を語るうえで重要なものとして、スウェーデン国産の空対地ミサイル「Rb 05」があります。
このミサイルは初めからビゲンに搭載する前提で開発されたもので、始めに指令誘導式の「Rb 05A」が配備され、テレビ誘導方式にして射程を改善した「Rb 05B」の開発が行われましたが、コストの問題で「AGM-65 マーヴェリック」(Rb 75)に敗れました。
これらの空対地ミサイルは機首下面のパイロンに取り付けて運用されていましたが、キットには含まれていません。(箱絵には付いていますね…)
というわけで、機首下面パイロンを3Dプリンターで製作しました。
500Lタンクについては初期に運用されていたものと思われますが、なかなか実際の写真がヒットしないので取り付けていません。
Rb 05ですが、「試作2号機」の写真を探すと「機首下面パイロンにRb 05A 2発」に「主翼内側パイロンにRb 04E 2発」という重めの構成でテストをしていた様子が伺えます。
Rb 05A/BとRb 05用のランチャーも見繕い、Rb 04Eはキットをそのまま使用、と思いましたが、どうも実際のRb 04Eの寸法・仕様とは異なっているようで、こちらも新たに3Dプリンターで製作することにしました。
(キット付属のものは試作型「Rb 304」との記載を見ました。写真を探すと確かに似ていますが、信頼していい情報かわかりません)
Rb 04Eのランチャーはキットのパイロンと一体となったものを使用しましたが、追加で覆いのようなラック部品をプラ板で工作しておきました。
「傷み」デカールについては、いつものようにトップコートで保護してぬるま湯で剝がそうとしたところ、硬くなった糊がいつまでたっても剥がれず…かろうじて透明ニスの多い機体番号デカールは剥がれたものの、国籍デカールに至ってはほぼ使用不可な状態でした。
試しに1枚普通に貼ろうとしたらダメにしてしまいましたが、ビゲン試作機は主翼下面にラウンデルのない時期があったようでひと安心。
仕方なく台紙表面からカッターで薄皮一枚分ほど剥がし、水溶性の糊で固定しています。近くで見るとガタが目立ちますが、遠目に見る分にはなんとか…
古いキットはさすがに骨が折れますね。
今回製作したパーツは、いずれもBOOTHにて頒布しています。
ご入用の方は以下からどうぞ。
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