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”好き”を”言葉”にするアート思考は、どんな価値があるのか。

美意識が足りないから、経営はできないよ。

職場の先輩に言われた言葉が脳裏を離れない。論理の世界で生きてきた僕には、意味がさっぱり分からなかった。

でも、分かりたかった。

それから2週間、来る日も来る日も、"アート思考"が頭から離れなくて、毎晩アート思考について考えた。

そして1つの答えにたどり着いた。

論理の世界で生きてきた僕らしく、アート思考について説明してみようか。

1.なぜ僕たちは京都に惹かれるのか

夜の祇園

日本が誇る観光都市に京都がある。

ここで1つ問いを立てたい。


あなたは京都の魅力を説明できるだろうか。


(僕は上手く説明ができない…)


説明ができない魅力を求めて、決して安くはないお金を払い、僕たちは京都を訪れるし、海外からも京都に訪れる観光客は絶えない。

僕たちは見えない何かに、惹かれているのだ。


このように、本当に人の心を動かすものは、目に見えない。これが、果たして、アートとやらの正体なのだろうか。。。



2.京都が世界の京都になるまで

3つの世界

さて、京都が世界の京都になるまでのプロセスを振り返ってみよう。


①美を見つける
着物、神社、日本文化、竹林、建築物、上手く説明はできないけれど、心が動く何かに気が付き、それを創造した人がいる。

でも、それは京都に限るのだろうか。京都以外にも、心が動くような何かは日本中に多く存在したはずである。

なぜ一時代を築いた奈良ではなかったのか、鎌倉ではなかったのか、江戸ではなかったのか。


②街を作る
京文化の価値に気が付き、観光都市として、商業を成り立たせ、発展させた人がいる。

僕は歴史の専門家ではないので、仮説にしか過ぎないが、おそらく京文化の存在に気が付き、商業として発展させた人の存在がいるはずだ。

資本主義市場の世の中では、何某かの方法で美を金に変換しないと、日の目を浴びないまま、終わってしまうのだ。


3.街で働く
完成された京都の町に憧れ、ホテルを建てる人、飲食業を営む人、観光業を営む人がいる。

そして、点で存在した美が、街になった瞬間に、経済が生まれる。そこに人が集まってきて、商売が盛んにおこなわれる。

京都という街を舞台にして、多くの人が事業を作り、またその事業に魅力を感じて、多くの人が京都を訪れる。

こうして、京都は、世界の京都になる。


え、当たり前だって?

この当たり前を言葉にすることが大切なんだ。



3.FacebookがGAFAになるまで

※FacebookはInstagramも含みます

スマホ中毒

きっと、このnoteにたどり着いている時点で、あなたもSNS中毒なのではないかと思う。

そんなSNSの発端がFacebookであり、現代のエースがInstagramである。さて今日2つ目の問いだ。


Facebookのアプリを作るのは難しいか?


僕はエンジニアではないので、明言はできないが、まあ簡単ではないだろう。

しかし、Googleのアルゴリズム、Amazonの流通網、iphoneの経済圏と比べたら、遥かに簡単に作れるのは、想像に易いのではないか。

そんなFacebook(Instagram)が世界を席巻しているのだ。よく考えたら、異質な存在である。


そして、Facebookの起点も、実は京都の街作りと同じなのだ。


①美を見つける
自分のことをインターネットで発信して、反応が貰えることが”快感”だと気付いた人がいる。

SNSの起点はここであるように思う。現代人がこれ程までにSNSに熱中していることから、この"快感"を否定することはできないだろう。Facebookはこの瞬間の”快感”を知覚し、生まれたのだ。

しかし、当時からブログも存在したし、テレビも存在したし、リアルの場でも良かった。なぜSNSだったのか。

実は他にも、心の機微が存在した。

・不特定多数の人に見られるのが怖い
・コメントをするのは恥ずかしい
・文章を書いて批判されるのは怖い

このような様々な人間が持つ感性を統合してできたのが、ソーシャルネットワークサービス(SNS)のFacebookであった。


②街を作る
広告収益モデルというビジネスモデルを設計し、マネタイズに成功した。

そしてこの”快感”をビジネスに昇華したことで、Facebookが誕生した。

例えば、友人に自分の話をして、聞いてもらう時間も同様の"快感"を味わうことができるが、それは大きなビジネスにはならない。

こうして、”快感”と”市場”を結びつけて、お金の流れが生まれることで、事業(街)が作られる。


③街で働く
営業が広告を売り、エンジニアがサービスを作り、マーケターがプロモーションを行う。

Facebookという街ができたら、そこからはその街で決めたルールに従って仕事が発生する。

Facebook街のルールは「ユーザーが増えて、広告枠を多く獲得する」ことであるから、ユーザーが喜ぶサービスを開発するためにエンジニアが雇われ、広めるためにマーケターが雇われ、それを売るために営業が雇われるのだ。


このように、世界は

創造:感情の動きに気が付く
設計:価値をマーケットに適合させる
対話:1対1の課題を解決する

3つの世界概要

の3つの世界から成り立っている。

次は、具体的な事例を見てみよう。



4.タピオカはなぜ流行ったのか

タピオカ

記憶に新しい空前のタピオカブーム。

ここで3つ目の問いが生まれる。


なぜタピオカはこのタイミングで流行ったのか?


(しばし僕の仮説にお付き合いください)
(別の仮説もあるみたいです。)


仮説:Instagram映えするから

タピオカが流行ったのは、2017年前後だと思われる。味が美味しかったのであれば、以前から人気になっているはずだ。だから別の何かがあるはず。

ここで着想した。


タピオカの真の価値は、SNSに載せることで、トレンドを先取りしていると他人に見せつけられる優越感なのではないか。

だからInstagramの流行と同じ時期に、ブレイクしたに違いない!


思えば、前述のnoteの通り、その前はスタバのフラペチーノが流行っていたし、同時期にチーズダッカルビも流行っていた気がする…!

圧倒的に、映えるっ……………!

チーズダッカルビ

つまり、この仮説が正しいとすると、創造の起点になる0→1の発想としては、

SNSの写真を通して自己アピールしたい
┗できれば流行を先取りしたい
┗できれば写真は美しい方がいい
┗自慢みたいになるのは避けたい

Instagramの登場によって、今までになかった上記のような"快感"の味わい方が生まれたと説明できる。


少し逆説的に考えてみる。


上記のインサイトに気が付いた人が、

・新しい
・売りやすい(物質として存在)
・自慢にならない程度に庶民的
・シェアして映える→広告費を削減

というビジネスが成立するための条件を満たしたうえで、台湾や韓国から「タピオカ」と「チーズダッカルビ」という刺客を送り込んだと解釈することもできる。

3つの世界概要

またに、創造(インサイトに気付く)と設計(ビジネス要件を満たす)の世界である。

そして、ご存知の通りだろう。

最近タピオカを見ることは少なくなった。

タピオカが味だけで商売が成立していたら、流行は終わらなかったはずだ。

>タピオカの真の価値は、SNSに載せることで、トレンドを先取りしていると他人に見せつけられる優越感なのではないか。

情緒的な価値に訴えかけていたから、それがドトールなどで一般的に売られてしまった今、価値が下がってしまったのである。


長い前置きはここまでだ。

ここから、アート思考の正体に迫っていこう。



5.多くの起点は感情から生まれる

ここまで京都、Facebook、タピオカと3つの例を挙げてきた。その3つの共通点について、もはや問うまでもない。

全て感情が起点になっているのだ。

感情起点

つまり、多くの場合において、人の心を動かす何かを創りあげるためには、感情を起点とする必要がある。


更に、人は飽きる生き物だ。

タピオカが廃れてしまったように、定量的な市場調査(何が売れているのか)を行ったとしても、それは過去のデータでしかなく、人の趣向は移り変わる。

人間は飽きる生き物であるから、常に新しい”感動体験”を作り上げないと、人の心は動かない。

>人間は、予定調和のことをされても響かないんですね。
出典:秋元康の仕事学


ゆえに、感情の正体に迫ることが、価値の起点を作ることになるのだ。



6.知覚せよ、言語化せよ。

>「常識」や「正解」に捉われず、「自分の内側にある興味」をもとに、「自分のものの見方」で世界ととらえ、「自分なりの探究」をし続けることがアート思考。
出典:13歳からのアート思考

感情の正体に迫るためには、自らが感情を知覚する必要がある。


・どのアーティストが好きなのか
・どの景色が好きなのか
・どのご飯が美味しいのか
・どんな時に感動するのか
・どんな時に悲しいのか

すぐに説明するのは至難の業なので、まずは好きか、嫌いか、心が動いたか、否かだけをしっかりと知覚する。


恐らく、この段階で言語化はできないはずだ。

何でこの音楽が好きなんだろう、何でこの映画が好きなんだろう、と考えても、きっと「何となく好き」に留まるのではないか。

それでいいのだ。僕たちは「何となく好き」か「何となく嫌いか」を基に、夜ご飯を考えるし、音楽を聴く。

この「何となく好き」と「何となく嫌い」の数が増えるほど、後に役立ってくる。


知覚が増えると言葉になる

画像9

「何となく好き」と「何となく嫌い」が言葉になる瞬間がある。

比較である。

図の例のように、似て異なる2つの街並みについて、片方は「何となく好き」でもう片方が「何となく嫌い」だと知覚していたとすると、言葉によって理由を探ることができる。


屋根がない方が好きだなあ。
┗もしかして、光が好きなのかな。
┗いや、でも電機が付いててもダメだ。

┗やっぱり、開放感が好きなのか?
┗そういえば家より外で遊ぶのが好きだったな

このように、知覚が増えていくと、言葉に起こすことができるようになる。人が無意識に感じていたことを、意識下に引っ張り出すことで、狙って再現できるようになるのだ。

解像度

画像右のレベルで言語化ができると、表現を行うことができる。

動画作成の時に、時間がたつごとに景気の色を変えてみることで、視聴者が飽きずに楽しめるのではないか。

そんな仮説を持つことができる。

目に見えないものを、見ることができると、世界が変わるのだ。


振り返ってみて、観光都市京都が生まれたのも、京文化を知覚した存在があったのは、間違いないだろう。

3つの世界


アーティストの仕事は、そんな感情の機微を知覚し、時には歌として、時には絵として、時には音楽として、「何となく好き」になる作品を作り上げることなのではないかと思う。

本来は言語に留まらず、このように表現できるのが望ましいのだろうが、専門領域ではないので、書籍に紹介にとどめておくこととする。


「センス」とは、この知覚や言語化を繰り返すことで、磨かれた自分の内なる感覚だと解釈している。


知覚し、言語化する。言い換えると、

「好きを言葉にする」だけのことだ。



7.感情の種を、設計する。

知覚と言語化で生まれた感情の種だが、単体では花を咲かせることができない。京文化を、観光都市京都として、設計する必要があるのだ。

そこで必要なのが、資本主義市場(マーケット)の理解である。

感情起点

どのような仕組みを作れば、お金が巡るのか、多くの人が喜ぶのか、京文化が街として機能するのかを設計する必要がある。

ここで論理の出番だ。


・他の体験と比べてどんな価値があるのか
・どれくらいの人に「感情の種」が刺さるか
・形にするのにどのくらい金がかかるか

などを現実的に組み立てて、設計することになる。

そうやって、1人が知覚した京文化の感動体験が、観光都市京都として発展し、経済が回っていくのである。



8.個人の好きに価値はあるのか

さて、知覚と、言語化の過程を経て、設計を行うなんて、綺麗な話をしたところで、こんな問いが生まれる。


自分の好きが、価値にならなそうな場合、どうすればいいんですか?


確かに、この問いはいい問いだ。

よくホリエモンが「好きなことだけしろ」というが、東大卒でIT黎明期にプログラミングが好きだったホリエモンの話は、説得力に欠ける気はしなくもない。

寝るのが好きです!!!

なんて感性は、果たして役に立つのか。


問いに返答する。

それも突き詰めてみれば、いいと思う。

本当に何もせずにベットの上に1日中いられるのか。違うだろう。

緊張状態から解放されて、何も考えずにゆっくりできる時間が好き。

なのかもしれない。本当に好きなのは、睡眠なのか?

自室と、授業中の机と、カプセルホテルと、寝袋と、他人の部屋と、高級ホテルで寝てみて、どれが1番気持ちよかったのか、試してみたらいい。

実は自室での睡眠が1番気持ちよかった。

なんて、知覚するかもしれない。


そうして、些細な好きの知覚から、自分の好きを発見していくとが、きっと誰かの「何となく好き」に繋がっていくのだと思う。



9.3つの世界:解説編

ここから先は、全体像について解説する。

3つの世界

社会には、創造の世界、設計の世界、対話の世界が存在する。

誰かの”美(ビジョン:理想とする世界)”から、サービスの種が生まれ、美と市場が上手く適合された場合のみ、街(会社・組織)ができる。

街が生まれると、そこに経済が生まれる。

Yahoo街が生まれたことで、

・Yahoo街を発展させる人(社員)
・Yahoo街に店を出す隣町の人(広告・SEO)
・Yahoo街の店を支援する街を作る人
(SEOコンサル)
・Yahoo街を真似する人(Google社)
・Yahoo街を利用する人(一般人)

が生まれ、街で働く住人が増える。


・街への出店者を探す人(営業)
・街の魅力を伝える人(マーケター)
・街を発展させる人(エンジニア)
・街の住人を集める人(人事)
・街の住人をまとめる人(マネージャー)

などの住人が雇われる。

住人の役割は、対話である。

・取引先と1対1で話す人(営業)
・顧客とデータを通して話す人(マーケ)
・プログラミング言語と話す人(エンジニア)
・社外の人と話す人(人事)
・社内の色んな人と話す人(マネージャー)

答えの存在する具体的な課題に対して、対話を通して解決をしていくのが、対話の世界の住人の主な役割になる。


一方で、街は、時に発展し、時に人の幸福に貢献し、時に廃れる。

プロダクトライフサイクル

タピオカブームが過ぎ去ったように、”飽き”が存在する以上は、新しい”美”を生み出し続けないと、街は生き残ることができない。

その意味で、創造の世界で”美”を見つける過程は、連続的な発展において、必要不可欠なのである。



10.3つの世界:住人の解説

そして、この3つの世界では、求められるスキルが異なる。


天才を殺す凡人

出典:http://yuiga-k.hatenablog.com/entry/2018/02/23/113000

創造性:美を見つける人に求められる
再現性:
設計する人に求められる
共感性:
対話する人に求められる

のように、それぞれの世界の住人によって、求められる能力が異なるのだ。天才を殺す凡人は非常に面白い書籍なので、こちらも拝読して欲しい。


似たような概念で、アートクラフトサイエンスがあるが、こちらも上記の概念で説明できる。

アート:創造性
サイエンス:再現性
クラフト:共感性(実行力を指す場合が多い)



11.あなたはどの世界が好きか

3つの世界

創造の世界で生きたいか?

設計の世界で生きたいか?

対話の世界で生きたいか?

はたまた、全ての世界を縦横無尽に走り回りたいか?

自分に問いてみて欲しい。


もし、少しでも創造の世界に携わりたいのならば、きっと、アート思考は大切なんじゃないかなと思う。知覚と、言語化と、表現を通して、街作りの種を探す過程はきっと楽しいはずだ。


街で働き続けたいか?

街作りに携わりたいか?

僕は読者でなく、自分に問うている。

~fin~



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