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ふと嫌な予感がした。また彼が女を連れ込んでいるような、そんな予感だ。 昔ながらの日本家屋の前で、滝本恵美は門扉を開かずにただ玄関を眺めていた。引き戸式になっている屋根付きの和風門扉から見える自宅は確かに彼女の家であったが、全く他人の家である雰囲気が所狭しに漂っていた。確認のために表札を見ると、しっかり『滝本』と書いてあったが、他人の家である雰囲気がやはりぬぐえなかった。 恵美は踵を返して自宅を後にした。用もないのに向かった先は近所のスーパーで、昨日数日分の買い物をしたに
電車の車窓を叩きつけるように、いくつもの雨粒が斜めに走りだした。降り出した雨は徐々に勢いを増していき、最寄りの駅へ着くころには大粒の雨に変わってザーザーと地面に降り注いでいた。 改札を抜けたところで藤嶋晶は足を止めた。あいにく傘を持っていない彼女は待ちぼうけをすることになった。それもこれも、予報になかった雨のせいだ。 改札前には彼女と同じく、待ちぼうけを食っている人が何人もいた。皆一様に藍色の空から降り注ぐ飴細工のように白い雨を眺めていた。中には濡れることを恐れぬ強者も