簡単な「削除しました」に対する呆れ

こんばんは、久しぶりの投稿となります。

選挙や議員活動もデジタル化が進み文書の管理なども紙などではなく電子ファイル、クラウド保管になることが多くなっています。
その中で、問題ある文書のやりとりをしていた人たちが謝罪と同時に「もうすでに削除した」とおっしゃる事があります。

私は、少なからずデジタルの領域で仕事をしていた人間として
本当にちゃんと削除できてるのか、簡単に安全を担保したみたいに言わないでほしいと腹立ち混じりで思っています。
はっきりいってリテラシーが低いなとも思います。
では、なぜ「削除しました」がよくないのか、簡単にお話しします。

結論を言うと、「削除しました」と言って「それじゃあもう安全」となることはないです。
ですが、ひとまずの言い訳のように「削除しました」が使われ、なおかつある程度言い訳として通用してしまっていることは大変遺憾です。
ズルくない?って思っています。

削除できることはないから安心はできないと、不安を煽りたいわけではありません。
正しく調査及び説明責任を果たした上で発言をしてほしいのです。

1.「どうやって」削除したのか

まず削除の方法についてです。

皆さん、個人情報が載ったハガキや印刷物をそのまま透明なゴミ袋に入れて捨てますか?
多くの方が破棄するなり、シュレッダーにかけるなり、匿名性を担保できる捨て方をするかと思います。
つまり、捨て方と同じく削除にもどうやって消したのか、という点を確認できる事が重要です。

一般の感覚ではファイルの削除というと「ゴミ箱に入れる」→「ゴミ箱を空にする」です。
しかし、例えばiphoneなどわかりやすいのですが、寝ている間に勝手にバックアップが作成されます。
windowsなどでも設定によっては何日か分は復元ポイントが作成され、ファイルを削除する前の日付を選択すれば復元が可能です。
「削除しました」という方は、その復元ポイントやバックアップまで全て削除されているのか、又はそういったものが存在しないことを確認しているのでしょうか。

普段パソコンをお使いの方で、アクシデントでデータが消えた経験をされた方もいるかと思います。
そんな時、Googleで「データ 復元」などと検索するとソフトやら専門業者やらのページが検索結果に出てきます。
実例で言えば、2019年に神奈川県庁が被害にあった「2019年神奈川県HDD転売・情報流出事件」があります。
機密情報の入ったハードディスクの廃棄を業者に依頼したところ、
業者の従業員が個人で削除を行いそのハードディスクを転売、
購入した男性がデータに気づき、復元をかけたところ県の公文書を含むデータが大量に発見され、通報したという事件です。
もちろん、秘密保持契約に則りきちんと破棄を行う業者がほぼですが、
こういった形で復元ができる、といった例になります。

私もサイバーセキュリティの講習を受けた際に、ハードディスク(パソコンの記憶媒体)の捨て方についてはプラッタという部品をピンポイントにドリルで穴を開け、完全に破壊した上で廃棄することを推奨されました。

削除の方法として紙媒体を用心してシュレッダーにかけるように
デジタルにおいてはどこの情報をどのように削除していったかの把握と説明が重要に思います。

ただ、記憶媒体をしっかり削除したところでデータが残る場合があります。
昨今主流のSNSを含むログイン型サービス、クラウドです。
クラウドサービスやログイン型サービスの多くはデータ保管を行うのはインターネット回線上で繋がった先の事業者が用意したサーバで、
自分自身でデータの物理的破壊はできません。

2.物理削除、論理削除

物理削除か、論理削除という言葉があります。
物理削除は先ほど説明した「ゴミ箱を空にする」などを含んだ実際にファイルや送ったメッセージなどを消す方法です。
しかし、ログイン型サービスの場合、論理削除をいう方法があります。
例えば削除を行なったファイルやメッセージを保管しつつも「非表示」や「削除済み」といった情報を付加することでユーザーには見えないようにする、実質使用者にとっては見えないのですから削除されたのと同じ状態を疑似的に作り出す方法です。

なぜこんなにまどろっこしいことをするかというと、例えば誤って削除を行なってしまった場合、証拠保全のため、ユーザーの再入会を促すためなど理由は様々です。
また、サービスによってはファイル自体は容量が大きいから物理削除でメッセージなどは論理削除、又は論理削除から一定期間経ったら物理削除など、組み合わせて運用している場合もあります。

ただ、論理削除されているからといって消えない、流出することがあるかといえばそうではありません。
事業者のコンピューターは一般ユーザーのものよりセキュリティも強固です。
一時期Zoomのセキュリティが問題になった際には、その問題の一つとして中国のサーバにデータが送信されていて、中国は法律上、事業者への政府の情報提供要請に応じる義務があり、Zoomの通信が中国を経由しているためオンラインミーティングの内容が筒抜けになるのではという懸念からでした。
つまり、サーバーが設置されている、もしくは通信が経由する国の法律によって危険性が変わります。
加えて、事業者がどういった要請に対し情報提供するか、そのポリシーも関係します。

私は、論理削除なら削除できていないからよろしくない、復元できないから必ず端末を破壊せよ、といっているのではありません。
こういったことに対してきちんと情報の把握に努めることなく、
安易に削除しましたといって情報の取り扱いに対する責任を果たしたようにいう無責任ぶりに、強い憤りを覚えています。

3.デジタルは危険な側面も持つということ

いってしまえば、デジタル情報の伝播性は紙媒体の非ではありません。
1000ページの文書のコピーも、デジタルであればクリック数回で行えます。
また、一時ファイルなどが思わぬところに保存されていることもあります。
自分のコンピュータの中だけで作業しているようでもクラウドサービスを利用していれば海の向こうの何処かにデータが存在している瞬間もあります。
使い方を間違えれば利便性は裏返り、大きな脅威となり得ます。
しかし、だからと言って紙媒体へ逆行するのはあり得ません。

人類は火や刃物と言った危険性を孕んだ道具を使いこなすことで発展を遂げてきた生き物でもあります。
明日が今日よりも良くあるためには、
脅威や環境負荷などをコントロールしながら利便性を享受できるよう試行錯誤を続けるしかありません。

そんな中で、こう言った間違えた解釈で安全を担保できたと嘯き、
指摘されても半ば居直る方達というのはこれこそまさに前へ進むことにおいての弊害でしかありません。
自身のミステイクに対する偽りの安全性の確保という保身で
発展途上のテクノロジーの出鼻を挫くということは
ご自身の立場を一時的に優位にしても、要らぬ規制を増やし、飛躍の機会を失い社会という大きい括りでは自らの首を絞めているということを自覚すべきです。

誰が、であったり、どの問題で、とは言いません。
なぜならば私が議員になってから半年経たない間にこの点は複数の問題、
人物に対して指摘をしています。
指摘する側や見る側がリテラシーを上げる以外に正す方法はないようにも思えます。

有権者の方が現在当町や近隣自治体を騒がせている問題であったり、これから起こり得るデジタルがまつわる問題においても、厳しくも正しい目線を持って接していただけることが最大の未来への薬となるように思っています。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

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