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短歌で小説作ってみた

短歌名「観覧車 回れよ回れ 想ひ出は 君には一日 我には一生」

主人公:葵(20歳女子大学生)
=田舎町に暮らす、ごく普通の女子大学生。
19歳の春、同じ大学に進学する翼と付き合い始め、素敵なキャンパスライフを過ごしていた。ただ、
その一年後、脳に腫瘍が見つかる。無事手術は
成功するも、そのまた一年後癌が再発し、さらに
余命宣告を受ける。切なくも淡い、男女の愛を描いた
田舎町のある物語。

第6話【人生計画】

〜最後くらい自分の為に生きていい〜
その事に気づいた時、私の残り少ない人生計画が決まった。
「痛っ」
ふと我に返ると、手から血が出ていた。手にマメができ、そこから出血するまで無我夢中でペンを走らせていた。ノートはB5サイズだったが、見開き2ページにびっしりと私の文字が並んでいる。これが約1ヶ月の人生計画だ。その内容には、家族のため、翼のため、友人のためなんか1文字も書かれていなかった。2ページ全て私の為の計画だった。
「ふふっ」
ノートを見返した後、失笑した。思わず笑みが溢れた。ベッドの前にある鏡に私の顔が映る。毎朝化粧をする時に鏡は必ず見る。そこに映っていた私の顔は、今まで生きてきた中で1度もみた事がなかった。この笑顔を他人が見ると、おそらく引かれるだろう。ただ、私は物凄く嬉しかった。
「心の底からの笑顔って、こんなにブスなんだ(笑)」
今まで、どんな人にも笑顔を振りまいていた。眉間にしわを寄せたことなんて1度もなかった。ただ、その笑顔は全て偽の笑顔だった。その笑みに感情は全くない。
初めて感情が表に出る瞬間だった。またすぐにペンを
取り、ノートに文字を書いていく。ペンを止めた時、
ページ数は4枚目に突入していた。
「...ちゃん。葵ちゃん!」
「あ、みかさん。ごめん、全然気づかなかった」
「ノックしても、名前呼んでもずっとノートとにらめっこしてて気づかなかったから、ちょっと大きな声出しちゃった。ごはん持ってきたよ」
「ありがとう。美味しそう」
「いえいえ。ゆっくり食べてね」
ゆかさんが病室から出て行った後も、ずっとノートを読み返していた。余命宣告を受けたあの日以来の眠れない夜だった。


2月20日。強い日差しで目が覚めた。昼間は、以前と比べて暖かくなってきた。何故かは分からないが、短い人生の中で1番気持ちの良い目覚めだった。再びノートを取り、携帯を開く。
「今日、病院これる?暇すぎて死にそう」
華恋、恵、千春の3人に同じメッセージを送信した。しばらくすると、携帯の通知が鳴った。
「仕方ないなー。バイトさぼって参上します。6時くらいになるかも」
「丁度見舞いに行こうと思ってた!5時過ぎに到着しまーす」
「了解!千春と恵も誘ってみるね。あ、恵バイトだから来れないかも!とりあえず聞いてみる」
3人とも、同じタイミングで返信が来た。
「後3時間くらいか」
返信を確認した後、ペンを手に取りノートを開く。読み返す度に書き直し、また読み返した。それを何度も何度も繰り返す。手はマメだらけで既に限界を迎えていたが、そんな事は気にもとめず、ひたすらペンを走らせた。
丁度最後の4ページ目を修正した頃、窓の外から楽しげな笑い声が聞こえてきた。その笑い声は一旦聞こえなくなる。すぐにまた笑い声が聞こえるようになり、どんどん病室の方に近づいてくる。ガラガラと扉の開く音と共に、千春と華恋が病室に入ってきた。
「ごめーん。ちょっと遅くなった。華恋が彼氏とイチャイチャするから」
「千春だって駿君と喋ってたじゃない。駿君はライバル多いぞー」
「千春って駿君の事好きだったんだ!退院するまでに付き合えたら何か奢ってあげる(笑)」
「言ったね!必ずあのイケメンを落として見せるから!」
さっきまで窓の外から聞こえてきた笑い声が病室に響き渡る。それにつられて、私も一緒になって笑う。すると、2人が妙な表情を浮かべた。
「葵、なんか笑い方変だよ?ちょっと怖い」
「気のせいだよ。病院で笑う事あんまりないから、ちょっと変わっただけだよ」
「、、、そうだよね。病院、暇すぎて死にそうなくらい何もする事ないもんね」
「そうそう(笑)死にたくなるくらい」
「え、縁起でもないこと言わないでよ(笑)」
さっきまでの事が嘘かのように病室は一気に静まり返った。鳥の囀りが鮮明に聞こえるほどだった。この雰囲気に耐えられなくなった華恋が口を開く。
「あ、そうだ!恵ちょっと遅れるって。バイトどうやってサボるか考えてた。今週2回も休んでるから、流石に3回目はしっかり理由作らないといけないんだって」
「じゃあさ、過去と未来の黒歴史ゲームやろうよ!」
提案したのは千春だった。後に、このゲームを提案したことを後悔することになるとは、千春はもちろん誰も予想していなかった。ただ1人、私を除いては。


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徐々に葵の変化に違和感を覚え出す千春と華恋。雰囲気をよくする為に、軽い気持ちで始まった
【過去と未来の黒歴史ゲーム】
このゲームで、覚えた違和感がだんだんと確信に変わっていく。残り約1ヶ月の人生計画はどのような形で幕を閉じるのか。
【過去と未来の黒歴史ゲーム】
その結末とは。

7話に続く
12/4投稿予定

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