美味しさの多様性
日本料理、フランス料理、イタリア料理、スペイン料理、中華料理、メキシコ料理、インド料理 etc.
世界には様々な食文化があって、そのそれぞれに多様な料理がある。
もっとミクロな視点で見れば、レストランの~料理、コンビニの~料理、親が作る~料理、自分で作る~料理など形はたくさんある。
では「美味しさ」とは何だろうか?
たまにこんなことを海外で言っている日本人がいる。
「日本食が世界で一番おいしい。この国の料理はまずい。」
日本食は美味しい。これはとてもわかる。みそ汁は大好きだし、焼き魚と白米の組み合わせは最高だ。
しかしながら、それは僕たちが日本に生まれ、日本で育ち、日本のものを日常的に食べ続けてきたからではないか。
もちろん日本食が好きな外国の人はいるし、世界中に日本食の店はあると思う。
だからと言って、ほかの国の料理はまずいと片付けていいのだろうか?
米ひとつとってもそうだ。
日本の米が世界一。少し引っかかる。
栽培環境などの要素は置いておいて、本当にそうなら世界中の人間が日本米を生産しているはずだ。
僕はそんな人に、「あなたの美味しさのベースは日本食にあるだけで、美味しさ自体はもっと多様なものではないか?」と問いたい。
僕はある国の料理の美味しさを理解するには、少なくとも一ヶ月、あるいはそれ以上の間それを食べ続けることが必要だと思っている。
最初は今まで食べてこなかったものに対して抵抗感を感じるかもしれないし、クソまずいと思うかもしれない。
しかし、実際そこの国の人はそれを食べて育ってきているし、おいしいと感じているはずだ。
食べ続けていると新しい味覚を身に着けられると思う。
そうやっていろいろな味覚を身につけることができれば美味しさの幅は広がって食体験がさらに楽しくなるのではないか。
例えば、パクチー。
好みが分かれると思う。
日本でのパクチーの使われ方は大体最後に料理にのせる感じだと思う。
ただ、パクチーは素材でもあり、調味料であると思う。調味料という感覚を持つのが大事な気がする。
誇張して言うなら、日本料理でいうところの醤油みたいな位置づけだと勝手に思っている。
日本人で醤油が嫌いだという人はあまりいないと思う。それと同じことなのかもしれない。
〜料理の違い、国によっての美味しさの違いについて書いてみたが、次はもう少しミクロな視点で見てみたい。
家の料理、レストランの料理、コンビニの惣菜、冷凍食品。
レストランでもチェーン店から高級店まで、一つの料理をとっても厚みがある。
では高級店だから美味しいと言うことはあるのか。
別にそんなことは無いと思う。
いいお店はそれはもちろん美味しい。
ただ、サイゼリヤのミラノ風ドリア、吉野家の牛丼(僕はすき家派、定食は松屋派)、丸亀製麺のうどん、みんな普通で美味しいとも思う。
世界で1番美味しいもの、と断定はできないかもしれないが、普通で美味しいという美味しさはあると思う。
現に、そうやって愛されてなければ長く続いていないはずだ。
次に、美味しさは料理の質だけでは決まらないと思う。
外で食べるなら、店の雰囲気、照明、食器、流れるBGM、盛り付け。
誰と食べるか、どんな日に食べるか。
誰が作ったものを食べるか、いつ食べるか。
どんな会話をしながら食べるのか。
思い出の味、なんかも美味しさの要素としてあるはずだ。
僕はよく小さい頃、おじいちゃんに連れられて、三軒茶屋のキャロットタワーに行っていた。
そこの展望台のソフトクリームをいつも食べていたのだが、特別美味しいわけではなくとも、当時はすごく美味しいと感じた。
みんなにも思い出の味はあると思う。
あとは情報。
食べログの点数、友達がおいしいと言っていた店、テレビで取り上げられた店。
情報で食べている。
そんな風に言われるほど情報は美味しさに影響しているのではないか?
このようないろんな要素が絡み合って美味しさは出来上がると思う。
もう一つ。
同じもの、同じようなものばかり食べ続けていると味覚は発達しないと思う。
前に訪問した寿司屋の店主さんが竹の子の炭火焼を出してくれたときにこのようなことを言っていた。
「この竹の子は少しえぐみがあるけれど、それも美味しさの一要素なんだよ。甘いもの、しょっぱいものばっかり食べてるとそれがわからない。」
舌が鈍るということだと思う。
美味しさについて色々考えてみた。
もちろん人には好みがある。
自分はこれが好きだから、ここの店のしか食べない。
その食体験が最高なら全然良いと思う。
ただ、だからといって他の料理を軽々しく美味しくないと断じたり、自分の嫌い=美味しくないとするのは良くないと思う。
好き嫌いは仕方ない。
ただ、美味しさの多様性、食文化の多様性は認めるべきだと思う。
自分の世界を狭めるのは構わないが、その世界が全てだと思ってはいけないと思う。
この世の全てを食べ尽くした上で断定するなら説得力はあるが、そんな人はいない。
個人的には食に関しては色々体験するほうが楽しいと思っている。
これから死ぬまでいろいろなものを食べ尽くしていきたい。
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