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TOMOO one-man live "Estuary"の感想

2022年8月7日(日)にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催された「TOMOO one-man live "Estuary"」に行ってきた。海と川の境目である河口を意とする<Estuary>というライブタイトルに相応しく、様々な曲や音が交錯する感動的なステージだった。

ライブに行ったきっかけ

今年(2022年)の1月に『Ginger』のライブ映像をYou Tubeでたまたま見かけて初めてTOMOOを知った。そして心地よいメロディー、リズム、そして声に一瞬で心掴まれてしまった。

ライブに行きたい!と思って調べてみると、何と2週間ほど後の2月6日に渋谷で予定されている。残念ながら既にチケットはソールドアウト。しかし、幸運にもチケットを譲って頂く機会に恵まれ、初めてのライブに参加することができた。

そのときはまだ数曲しか知らなかったが、これも素晴らしいライブで、次のライブも絶対に行きたいと思った。その時に発表されたのが今回のライブ"Estuary"だったというわけだ。すぐにチケットを取って待つこと約半年。コロナ禍でライブやイベントが中止を余儀されることが増える中、無事その日を迎えることができた。開催の数日前にはメジャー1stシングル『オセロ』がリリースされて期待に胸躍った。

会場は2000人規模のLINE CUBE渋谷。男女比率は男性が、年齢は若い人がやや多めに感じたけれど、自分の知ってる限りでは老若男女いろんな人がいるように感じた。

コンサート・短編映画・お祭りライブ

全体としては、一つのライブの中にコンサートと短編映画とお祭りライブがぎゅっと詰まり、その中に生まれるさまざまな感情が、最終的に何にも変え難い幸福感に昇華されていく。そんなライブだった。

セットリストは以下。

1.HONEY BOY
2.らしくもなくたっていいでしょう
3.酔ひもせす
4.雨でも花火に行こうよ
5.スコール
6.River
7.レモン
8.窓
9.泳げない
10.風に立つ
11.ロマンスをこえよう
12.オセロ
13.Friday
14.POP’N ROLL MUSIC
15.Ginger
en1.金色のかげ
en2.What’s Up
en3.恋する10秒

華やかで鮮やかな最初のパート

開演時間を少し遅れてOP映像の後にピアノのイントロが始まると『HONEY BOY』からスタート。Key、Gt、Ba、Drのバンドに、SaxとTbのブラスが加わった編成。照明の演出も相まって実に華やかなステージが目の前に現れる。2曲目『らしくもなくたっていいでしょう』3曲目『酔いもせす』とアップテンポでキャッチーな自然と体を揺らしたくなる春をイメージする曲が続いた。

もうこの時点で、楽しさに溢れていて、座ったまま観ているのが大変でしょうがなかった。今すぐ立ち上がりたい!!!

今回のライブはこれまで最大規模の会場、さらに夏休みの日曜日ということもあり、各地から初めてライブに参加したという人も多くいたように思う。
だから(これは個人的な感覚に過ぎないのだけれども)最初のパートはまだ、ステージと客席が互いにどう振舞っていいのかわからない状態だったように感じた。僕自信、高まったエネルギーをどう発散させていいかわからず、座ったまま揺れていたけれども「もし『POP'N ROLL MUSIC』が座りだったらどうしたらいいの?」などと余計な心配をしていた笑
(『POP'N ROLL MUSIC』はおそらくTOMOOの楽曲のなかで最もお祭り感があって体を揺らしたくなる曲。)

ミニマルな弾き語りパート

6曲目の『River』からはステージにはTOMOOだけが残り、ピアノ弾き語りのパートだった。元々はずっと弾き語りで活動をしていたということで、少しリラックスしたモードで冗談めかしたMCも挟みながら3曲が演奏された。

それまでの華やかなステージとは打って変わって、スポットライトにピアノとTOMOOだけが照らし出されるミニマルな演出に僕もただ耳を傾ける。

『レモン』の前には、かつて参加したコンテストのアー写に顔写真が使えなかったためレモンに彫刻刀でTと彫ったというエピソードが明かされる。一緒にライブに参加した友人(席は離れている)が直前に「レモンを聴きたい」といっていたので良かったねと思う。

新曲『窓』はウーリッツァーと呼ばれる電子鍵盤で1番を、2番からはピアノで披露された。初めての曲でもう記憶が朧げなのだけれど、メロディーの雰囲気が他曲と少し違った感じの素敵な曲だった。

短編映画のような壮大なパート

泳げない

ライブのタイトル<Estuary>を表現する水の映像の後に始まったのは『泳げない』。紗幕に水の映像を映すことによって、歌詞の通り水中で演奏しているかのうような演出、4名のストリングスの演奏も加わって、曲の世界に会場全が飲み込まれていくような、鳥肌もののパフォーマンスだった。個人的にこの日のライブで最も聴きたかった曲『泳げない』だったこともあり、感激で自然と涙が流れてくる。

『泳げない』は歌詞も素晴らしいのだけれども、歌詞をよく知らなくても断片的な言葉と歌唱・演奏だけで、ドラマティックに聴く人の感情を沸き起こされる。クラシックの名盤のような曲だと思う。

風に立つ

続いて『風に立つ』が披露される。この曲は歌詞とメロディーから映像を強制的にイメージさせる力があって、特に2番Aメロを聴くと、夏の色鮮やかな情景が目に浮かべずにはいられない。(映画『風立ちぬ』の影響もあるのでしょう。)

18の夏休み あの子と見た映画の中の
草の色と青空 飛んでいく零戦
ああたぶんあの夏に 心を少し置いてきてしまったよ

間奏〜落ちサビは、セリフパートを境目に主人公の止まっていた時間が再び動き出し、加速するように楽器の音が増えていく。それにしてもセリフパートの最後「風を待ってた」には痺れた。

ロマンスを越えよう

ストリングスが来場し、フルート隊が登場すると『ロマンスを越えよう』へと続く。

前の2曲と同様にドラマを感じる曲だけれども『ロマンスを越えよう』の歌詞は言葉が具体的で、登場人物の動きや気持ちが細やかに浮かんでくる。「生活する中で起こる小さなできごと」に対する愛おしさに溢れていて、「生活」を大切にするからタイトルが「ロマンスを越えよう」なのだろうか。幸せな雰囲気と寂しい雰囲気が混在しているのもあって色々な解釈ができる曲だと思う。

『泳げない』『風に立つ』『ロマンスを越えよう』の3曲はどれも短編映画を観たかのようなドラマ性があり、受け取るものがめちゃくちゃ大きかった。この高まった感情を一気に発散させたのが次の『オセロ』だ。

お祭りタイムの楽しいパート

MCを挟んで最新曲『オセロ』が始まる。秋を連想させる明るさと暗さを両方持った曲は、中盤の感動的なパートから終盤の楽しいパートへとつなぐのにもこれ以上ない。

さらにTOMOOが控えめに「ここからみんなとギアを上げたいんだけど……立ってみます?」と促してくれる。最初のパートで立ち上がりたくてしょうがなかったので、これは心の底から嬉しかった。

ここからはもうノリノリ。ここまでの演奏で受け取ったものをステージ上の演者に返すかのように、皆思い思いの動きや表情で楽しんだんじゃないだろうか。最初の、心なしかぎこちなかったような空間が何というか、幸福感と躍動感に満ちていたように感じた。

「ここからはお祭りタイム」と煽ると『Friday』『POP’N ROLL MUSIC』と続く。楽しすぎる!最高!

「もう、好きにするよ」の歌詞とダンスで盛り上げてからのサビの歌詞が以下なんだけれど、まさにこの曲のライブの演者と観客の関係が溶け合うライブが表現されている。

はじける私に面食らってしまえ レイディースアンドジェントルメン
はじけるあなたに面食らいたいのさ レイディースアンドジェントルメン

『POP’N ROLL MUSIC』はサビが短いこともあり、1回では全然物足りない。3回やってもいいと思う。(結構本気)

そして「最後はやっぱり!」の掛け声とともに本編ラスト『Ginger』が始まる。会場にクラップが鳴り響き一体感は最高潮に達した。終盤では銀テープが盛大に発射されてフィニッシュ。

会場の熱気は止まず、早く再登場してくれと言わんばかりに、速いテンポのクラップが打たれる。(リズムが全然乱れなかったの地味にすごかった。)

アンコール

アンコールに答えてTOMOOが再登場すると、なんとストリングスを再び呼んでくれた。そこから最初期の曲『金色のかげ』を披露。ピアノとストリングスのシンプルな編成がグッとくる。

MCを挟むと今度はバンドとブラスメンバーが呼び戻されて『What's Up』『恋する10秒』が披露される。ブラスメンバーは楽器を吹いている時はもちろん、そうでない時も、実に楽しそうな動きで客席を盛り上げてくれた。

『恋する10秒』は瑞々しいラブソングで、歌詞に対する共感はあまりない歌だった。だけど、ライブの一番最後に披露されたことで、歌詞が自分のその時の気持ちをそのまま代弁してることに感動してまた号泣してしまった。(自分だけじゃなくて会場の多くの人が同じように感じたんじゃないだろうか)

10秒20秒長く あなたといられることがこんなにも うれしくて
~
この10秒20秒間を 二度とわすれないでしょう
~
ああ 今度いつ会えるかな

ここまで、最高のライブをしてくれて、さらにアンコールで3曲もやってくれてマジで嬉しい!ありがとう!この体験忘れたくない!次のライブいつだろう!そんな気持ち。

そうしたらその後すぐに次のライブの告知が。伏線回収がきっちりできている。次も絶対行きたいと思える最高のライブだった。

退場BGMは本編ではやらなかった『いってらっしゃい』が。最後の最後まで演出の素敵さを感じながら会場を後にした。

プレイリスト

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