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【これを読まずに今すぐ観て!】ライアン・マーフィー製作総指揮『POSE/ポーズ』(シーズン1)

 『glee』を製作したライアン・マーフィーがFOXからNetflixに移籍する前、FOXで最後に手掛けた作品。氏について僕は詳しく知らないが、なるほどNetflixがほしがりそうな人材なんだろうなあと愚考する。
 余談だが、日本FOX公式の宣伝文が本作の魅力(ひいてはLGBTQ)を全く理解してない無知な広報スタッフが書いたと思われるお下劣極まりないものなので注意。それよりかは幾分マシな広報的内容になっていると思うので気になった人は本稿を読み、NET FLIXで配信中の本作を見て欲しい。というかこの文章を読む暇があるなら今すぐ『POSE』を見よう。マジで。

「私が生まれた時から蝶だと?」

 本作の魅力は、まず圧倒的なLGBTQへの理解と敬意をもって細部に至るまで構築されている点だ。「シスジェンダー(身体と精神の性の一致した人)にトランスの役はやらせない」とのスタンスをもって製作されていると聞けば尚の事その徹底ぶりに舌を巻く。80年代のニューヨークを描いているとのことで、現代より更に苛烈な差別に遭う登場人物たちの境遇に心を痛める。(実際には「現代より更に」などということはないのかもしれないが……)本作では特にトランス女性たちが物語の中核におり、キリスト教、男性ジェンダーロール、HIVなど、彼らの愛を阻む様々な壁が現れる。

【超雑なノンネタバレなあらすじ】
 80年代のアメリカ。無理解に苦しむLGBTQの人々は「ボール」と呼ばれる仮装パーティだかダンスパーティだかなんだかわからないとにかく自己表現をぶつけ合う場で競い合っていた。この「ボール」に関してはシーズン1を最後まで見た僕にもよくわからない部分が多く、見て欲しいとしか言えない。ハウス・オブ・アバンダンス(LGBTQの人々は勘当されていることも少なく無く、同じ境遇の数人が擬似家族的コミュニティを築いていた)のマザー(ハウスの親役)であるエレクトラのもとにいたブランカは、自分のハウスを持つことを決意。同じハウスのエンジェルと共にハウス・オブ・エヴァンジェリスタを立ち上げる。
 ゲイであることを理由に親から勘当された青年・デイモンが路上で踊っているのをみつけたブランカは、彼をハウスへ引き入れる。そして親として、彼の「ダンサーになりたい」という夢と向き合っていく。
 ハウス(家族)のこと、病気(HIV)のこと、将来(夢)のこと、ブランカはさまざまな問題に直面する。友情や愛情、絆(文字にするとすごく薄っぺらいけど)がごく当たり前にブランカを支え、導いていく。

 テーマを聞いたときに「小難しい話が始まりそうだな?」と思ったあなた。それは間違いです。僕も見る前はそう思っていましたよ。この作品は至る所に「考えさせられる」要素が散りばめられながらも、基本的には王道なエンタメ作品としてわりかし頭使わなくても楽しめてしまうというなんとも美味しい作品なのです。だからこんな下手くそな文章を読んでいる暇があったら観るんだ! そして観終わってから、Twitterで僕に絡んで!

【一言コメント】
エレクトラが強い。かっこいい。すき。

****以下、ややネタバレのセリフメモ****

「そう、私はマザー失格だと反省しているところよ。私の子たちを見て。無謀なポールダンサー。こっちの能天気なバカはデカ尻のためにセメントを注射する。フェロシティ(凶暴)どころか歯応えすらない。ハウスを出ても私から逃れられない。その頭に私の声が届く”まだまだよ、頭の強さも魅力も足りずこの世界に残れない”。その声がシロアリのように蝕み貧弱なハウスを壊す。私がいなけりゃドアにもたどり着けない。あんたたちは腐り切った肉の塊よ。この高級なフィレ・ミニョンを拝みなさい。次に話すときは私がなぜか退屈を味わいたくなった時よ」

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