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日本の医療制度は本当に大丈夫なのか?あらためて思うこと。

エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー治療薬「レケンビ」が日本でも発売される。ニュースでは「レカネマブ」と言われているので、そちらの方が耳なじみがあるだろう。(一般名がレカネマブ)

価格は体重50キロの人の場合で年間約298万円の試算だ。日本国内の認知症患者は2025年に700万人になるとみられており、その7割を占めるのがアルツハイマー病である。今後レケンビを投与していくことになると、年間売上高がピークを迎える2031年には年間投与者は3.2万人、売上高は986億円になるとの予想だ。

年間298万円もするならお金に余裕のある人しか使えないじゃんと思う方もいるかもしれないが、このレケンビは公的医療保険適用のため、70歳以上、年収156万円から370万円の人で年間14万4000円が上限となる。つまりは280万円以上が国の補助、つまりは国民健康保険料や税金から補填されるということだ。「なんで薬はそんな高いの」と思う人、その通りである。原価はそれほど高いものではない。高い理由は「開発に莫大な費用が掛かっている」からだ。国はきちんとコストが回収できるような値段設定をするのである。でなければどんな企業も新薬開発などしない。しっかりコストを回収して尚儲けが出るから開発するのだ。つまりは、新薬が認められるということは(現状の健康保険体制を維持する限り)それだけ国のお金が使われるという意味である。

今でも公的保険財政は厳しいと言われているのに、これ以上負担を増やして大丈夫なのだろうか?と思った人も多いだろう。私もそう思う。

特に、このレケンビは「アルツハイマーを完治させる薬」ではなく「進行を遅らせる薬」である。エーザイの臨床試験では投与18か月でアルツハイマー病の進行を27%抑制し認知機能の低下を5.3か月遅らせたとしている。しかしながら本人や家族が実感できた効果は限られたものであるようだ。結果につては懐疑的な見方をする専門家もいる。

「そんな薬に国のお金(まあ、国民負担だよね)を使うの?」という意見もあるが、エーザイは「レケンビは介護の負担につながり、一人当たり年間468万円の医療・介護費用を削減する」としている。計算上では支出の削減になる理論だ。

確かに介護には時間もお金がかかる。介護される人だけではなく、介護離職が示すように介護する側が負担をするリスクも高い。介護する人の負担が減るのであれば、それだけの経済効果も見込めるかもしれない。

私自身は介護の経験はないが、同世代で親の介護をしている人も大勢いる。経験談を聞くと想像を超えるくらい大変だ。たまに「自分の親の面倒も見ず施設に預けるなんて」という人もいるが、それは間違いだ。お互い「親と子」の情を保っていたいから預けるのである。親は認知症で自分の子供のことが分からなくなったとしても、心の奥底では必ず「子供に迷惑をかけたくない」と思っているはずだ。

そういう人たちにとっては「進行を遅らせる」薬であっても、大きな希望だと思う。ゆっくりと病状が進行するのであれば、死ぬときに自分の子供が分からないといった悲しい現実だって減るだろう。もし自分がアルツハイマーになったとしても、子供の顔を覚えているうちに死にたいと思う。

レケンビの効果が懐疑的だとしても、エーザイの介護費用軽減が机上の空論だとしても、それは多くの患者さんにとって「希望」である。それはこれから老いていく人達にとっても同様なはずだ。

高齢化が確実な日本では、病気に対する備えは確実に取り組んでいかなければならない問題である。新しい薬が認められ、開発費を回収できる基盤がなければ、それ以上の効果のある新薬も生まれない。

私個人的には、この分野に関しては経費を削減するべきではないと思っている。また同様に、少子化対策についても経費を削減するではないと思っている。

どちらも「希望」にかける経費と言えるからだ。

きれいごとなのかもしれないが「希望」は人を前に進ませる力があると思っている。

実際に財政を考えている人(政治家とか官僚とか日銀だとか、色々な人達)
は今の日本の状況は大変だと思うのだが、日本が「希望」を感じられる国であってほしいと願っている。他力本願で申し訳ないけど。

今日はここまで。

引き続き、どうぞよろしく!

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