技術提携の行方

少し前の記事ですが、伊藤忠がノルウェーの新興バッテリーサプライヤーであるFreyrに鉱物資源を調達するという内容です。

伊藤忠は以前より、国内外問わずバッテリー分野への積極的な投資を進めています。

そしてFreyrは、設計・生産に必要な技術開発を自社では行わず、他社との提携やライセンスでそれらを獲得するという、割り切った戦略を採るバッテリーサプライヤーです。
FreyrのCTOは日産やダイソンのEV開発に関わった経緯をもつ日本の方だそうで、今回の伊藤忠との提携もそのような縁からかも知れません。他にも複数の日本企業と提携しているようです。

例えば住商メタレックス(住友商事グループの専門商社)も以前から同社に資本参加し、製造機器や材料のサプライチェーン構築を含むバッテリー製造ソリューションを提供しているようです。(今回の伊藤忠とはどのように棲み分けが成されるのでしょうか。)

また、Freyrは日本電産と合弁会社設立に向けた契約を締結し、日本電産のBESS(定置型蓄電システム)事業用のバッテリーを提供することになっています。

この記事でFreyrは「半固体」リチウムイオン電池メーカーと紹介されていますが、この「半固体」電極の技術を提供しているのがUSのBostonにある24M Technologiesで、伊藤忠はこちらの企業にも資本参加しています。
USの企業ですがCEOは日本の方です。
(半固体電極については、いずれ別の機会で触れたいと思います。)

そしてこの24M Technologiesも、以前から日本企業との提携を進めており、同社と2013年から共同開発を進め、クレイ型リチウムイオン蓄電池として2020年に製品化したのが京セラ。

積層チップ部品の製造プロセス技術があるので、電極塗工にその知見が活かせたのではと推測します。


そして最初の記事中に記載されていますが、Freyrと24M Technologiesの両社にLFP電極材料を供給するのが台湾のAleees。

複数の企業の名前が出てきて、企業間の提携関係が色々と複雑ですが、つまり、

  • AleeesのLFP材料と24M Technologiesの半固体電極技術を用いて作られたクレイ型LFP電池が、既に京セラで家庭用蓄電池として既に製品化され、

  • 同じくAleeesのLFP材料と24M Technologiesの半固体電極技術を用いて、Freyrとの合弁会社で製造された半固体LFP電池を、日本電産が産業用蓄電池として今後市場に投入する。

ということになり、日本市場における定置型用途での半固体LFP電池の割合の増加が予想されます。

三元系との比較で、LFPはエネルギー密度的には不利なものの、相対的な価格と安全性ではアドバンテージがあると言われており、容積的な制約が多くない用途では今後はLFPが主流になる可能性があります。

また車載用としても、容積的な制約が少ない、またはコストが優先される車種では採用が進むでしょう。実際中国ではLFP搭載のEVも多いですし、ASEANでEVが普及する場合はLFPが主流になると思います。

LFPでも既に中国勢に勢いが有りますが、出資や提携を活用して得た技術を活かして日本勢がアドバンテージを得ることが出来るのか、注目したいです。

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