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2019年に読んだ本から5冊ブックレビュー

あけましておめでとうございます。

例年、読んだ本を振り返っているので、今年も。(ただ、年の1/3ほど休養しており、その間本を読んでいなかったので、いつもより少なめです)

1.  『あなたの人生の科学』(デイヴィッド・ブルックス)

人間は誰しも「せーの」の合図もなく、気づけば生を授かり、誰から説明書を与えられるわけでもなく、よちよち歩きで人生を進んでいく。

輪廻転生をはじめ、生の向こう側になにがあるのかは、とりあえず誰にも与り知ることはない。つまり、全員が等しく“一回性の檻”に囚われたまま、自分の頭で考え、地図を記し、進んでいかなくてはならないのだ。

時には先人たちの声に耳を傾けたり、映画からなんらかのインスピレーションを受けることはあるだろう。だけども、そこで表象される人生の“かたち”もまた、一回性の檻をなぞる以上のものではないから、結局は自分の生を精一杯生きるほかはない。

前置きが長くなりました。ある意味で、厳かで穏やか。背反的な感情を抱かせるルールの外側から、「誕生・成長・出会い」から「結婚・仕事・旅立ち」という人間がたどる(ほぼほぼ普遍の)人生ルートを眺めさせてくれるのが本著です。

一回性の檻に閉じ込められた人間が(おそらく何世代にもわたって)繰り返し繰り返し、同じように悩み、葛藤し、決断し、人生を切り拓いてきた姿。誰しもが“ままならない”そのありようは、弱さとも取れるし、諦念をまとった、あるがままの姿なのかもしれない。

見えるものしか見えないし、聞こえるものしか聞こえない。大いなる制約の元に生きるのであれば、愛を配ることは意思決定そのものに他ならないと気づかせてくれる一冊でした。

2. 『「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日』(馬場康夫)

『ゲーテ(GOETHE)』の「ホリエモン特集」で堀江さんに取材させていただいたときに、恋愛の極意・要諦はこの一冊に詰まっていると教えていただき読んだ一冊。

ディズニーランドを日本に誘致するまでの舞台裏を、関係者の証言を元に炙り出していくノンフィクションで、本当の意味での「おもてなし」とは何かが具体のHOWで分かる。

先方を乗せたバスで、「なにかお飲みになられますか?」と尋ね、予め全員分の好みを抑えているので、全ての飲み物が揃っていたり。行き届いたホスピタリティは、考え尽くされた戦略に勝るとも劣らないことを教えてくれます。

3. 『えいやっ! と飛び出すあの一瞬を愛してる』(小山田咲子)

小山田さんのエッセイは、一編がしっかり1,000字を超えるものはむしろ少数で、数百字からなるまさに“断片的な”文章に溢れている。

大学の友達との会話、故郷の田舎への帰省、読んだ小説や鑑賞した映画。
ニュースで目にした国際情勢への自分なりの見解、億劫なんだけども一歩を踏み出せずには居られずに家を出て向かう海外。

小山田さんの言葉はそのどれをとっても、丸みを帯びていて、瑞々しくて美味しい。

何気なく過ぎていく日々ほど、断片的な瞬間ほど、光に満ちていて、後から振り返ったならば瑞々しい記憶はない。そう気づかさせてくれるし、心地よく胸をつん裂く読後感がある。

僕は小山田さんが、この世界を飛び立ってからしばらくの年月が空いていることを知っている。大学を出たばかりの小山田さんが、「えいや!」と日常の倦怠の先に飛び出したアルゼンチンの地で、客死したことを。

4. 『新記号論 脳とメディアが出会うとき』(石田英敬、東浩紀)

情報学環で石田先生の授業を受けたこともあったので懐かしくもなった。閉塞が叫ばれる、思想界ひいては人文学であるものの、石田先生が接続を試みる脳神経学的アプローチは思想に新たなアクチュアリティを付与する。衝撃の一冊。石田先生の注釈がいちいちエキサイティング。

先生から、お言葉も!

5. 『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス)

こちらは『ダイヤモンド・オンライン』さんに拙稿を寄稿しましたので、よろしければどうぞ。

僕はこの鮮やかな着地点を導いた本書のハイライトは、歴史的・社会的・文化的に複雑に絡み合った事象を一気にひもといてみせた第1章「なぜ、こんなに『格差』があるのか?」と第2章「市場社会の誕生」にあると思うのです。

「難しいこと」を優しく「易しく」語る、その流麗な語り口と、紙背に感じられる博覧強記な知識。ビジネス書をサプリメントとして服用していたことに背筋が伸び、思わず“知の尊さ”に嘆息してしまう。

ギリシャ危機を含む国家財務の実務経験、経済学者としてのアカデミズムでの実績、文学や詩への造詣も深いからこそ為せる筆致と構成。時代考証とはまた別次元の物語的アプローチから、読者を歴史と経済の奥深い、心地よい旅へ誘っていく。

これまで固く鍵がかかっていた、遠大な歴史の物語。その箱を、ゆっくりと開けてみませんか。

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去年の振り返りはこちら。

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以下、2019年に制作で参加させていただいた書籍一覧です!いずれも絶賛好評なので、ぜひ手に取ってみてください!



ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。