世の中にはたくさんのルールがあるが、その中でも厄介なのが“暗黙のルール”というやつだ。例えばスーパーのチラシでよく見る ”卵一パック88円 一家族様一パックかぎり!!“ と大々的に載ることがよくある。1円でも安いものをと財布の中身を日々チェックする奥様たちは、チラシを見て、家事の合間にスーパーへ。そこに暗黙のルール君が颯爽と現れる。一家族様一パックと大きく書かれた紙を見て手に取るが、中にはレジで会計後、再度たまごを手にする輩がたまに現れる。彼らは ”私、初めて卵いただ
空になったスナック菓子の袋や漫画本、乱れたタオルケット。そして窓から初夏の太陽の熱気が部屋に入り込んでくる。 「あち―、この暑さどうにかしてくれ!」 短髪の男子が床に教科書を置き、足を延ばしている。 「うるさい大樹!声がでかい。余計に暑くなる」 黒髪の女子は下敷きで仰ぎ、だるそうにしている。 「大樹もリエもうるさい。人がせっかく勉強を教えてるんだから、まじめにやれ」 眼鏡男子は二人に対し大声をあげる。 「分かってるって。けど、こんな暑いとやる気が・・・」 「
またあの子たち来てる。 「今日も来たんだね、おはよう元気してた?」 ウミネコ二匹は私の顔をみて首をかしげている。毎日のように来るこの子達。そばによっても逃げない。人間になれているのかな? 「そろそろ仕事に戻らないと」 「じゃあまたね」 私はここの神社の巫女を数年前からしている。小さい頃からおばあちゃんに連れられてよく神社に来ていた。そこで働いている巫女さんに憧れを持ち、ようやく巫女になることが出来た。巫女の仕事は大変だけど、人と触れ合うことが出来るし、笑顔で帰られる人を見る
私はウミネ、彼女はミネコ、私たちは姉妹。二人で生活を共にしている。けどさみしいことはなかった。周りにはたくさんの仲間がいたし、食べ物にも困らなかった。 ある晴れた日の朝ミネコが 「今日風が気持ちいいから、ちょっと出かけない?」 と話しかけてきた。 「まだこんな時間よ。だれも起きてないじゃん」 「ウミネは起きてるでしょ?」 「あんたに起こされたの」 そう言うと私はまた眠りにつく。するとミネコが口バチで私の体をつついてきた。 「痛い」 「ほら、起きた。早く行こう」 「分かったわ
2021 6/9(水) 18:00更新 私は普通の会社員。彼女はおらず気ままな独身生活を送っている。(早く彼女が欲しいー・・) それは置いといて、私は温泉が好きで、仕事終わりや休日に出かけている。 今日行ったところは、地元の空港温泉。空港温泉というだけあって、近くに地元の空港がある。(当たり前ですが・・)そして米軍基地もあるため、地元の人や米軍、外国人や観光客がこぞって入ってくる。特に週末は繁盛している。値段は三百七十円とリーズナブル。入ると広い大浴場に泡風呂、電気風呂、
「カンパーイ」 「どうも」 オレは後輩を連れて行きつけの居酒屋にやってきた。 「そんな落ち込むなって、誰だって失敗はあるんだし」 「けど、俺のせいで取引なしになったって聞きました。俺の準備不足でこんなことに、すいませんでした。」 後輩はテーブルに手をつけ頭を下げた。 「ちょ、ちょっと頭上げて、みんなが見てるから。落ち込むのは分かる。俺も同じような失敗したことあるし」 「えっそうなんですか?先輩が?仕事いつも完璧じゃないですか!」 「そんなことないぞ、俺だって初めから
「いらっしゃい」 男がカウンターへと座る。 「バドワイザーを1つ」 「かしこまりました」 男は古びた腕時計を見る。そして客が何度も入ってくるたびに、男は振り向き深いため息をつく。 「恋人と待ち合わせですか?」 男に尋ねる。 「いや、友人です。古くからの付き合いでね、仕事が忙しくてなかなか会えなかったんだが、お互いようやく都合がついてね」 男の腕時計をふと見ると、針が8時42分で止まっていた。 「すいません、その時計って・・・」 そこへ一人の客がやってきて男の隣へと座っ
街中にあるコーヒー店。そこは地元の人たちの憩いの場となっている。私はそこで長い間ここに来る人達を見守っている。 私が生まれたのは大きな戦争が終わったころ。街は復旧し穏やかな生活を取り戻していた。 私は店のマスターに気に入られ、一緒に住むこととなった。 店にはいろいろな客がやってきた。 毎週木曜日午後、決まった時間に来る若い女性。 毎回奥のテーブル席へと座る。マスターがコーヒーを運んでくると、その女性は毎回頬を赤くし下を向く。女性はマスターのことを見つめるが、マスターが気
私は介護施設で責任者として利用者様の身体ケアのほかに、事務仕事や、お客様対応、現場スタッフの育成やメンタルケアを含む業務を管理者として従事してきた。他のスタッフに協力をお願いしようにも、私たちの施設も今の介護業界の実情のように人員が不足しており、忙しく一人で残って作業することが増えていった。体調的にも精神的にも悪くなっていったが、「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせてごまかしながら仕事を続けていた。案の定倒れて仕事を辞めることとなった。 退職してから、数日後、友人がある話をして
毎週日曜日の朝、港の市場に行き新鮮な野菜や魚を購入。そしていつのも店でコーヒーを買い、朝の町を一人眺めるのが好きだ。 おなかの大きな女性を優しくエスコートする男性 ベーグルをほおばりながら、次はどこに行こうかと楽しそうに話す少女たち 花を見ながら微笑んでいる老夫婦 みんな笑顔にあふれている。 そんな人たちを見ながらゆっくりコーヒーを飲む。 毎週日曜の朝、私のちいさな幸せ。
大きな大きな広いおうちに僕らみんなで暮らしている。僕らはこの広いおうちでのびのびと生きてるんだ。 食べ物には困らないんだよ。 だって空から降ってくるんだから。お兄ちゃんたちは 「神様が僕たちに食べ物を与えてくれるんだよ。そして大きくなったら神様が空へと導いてくれるんだ」 毎日のようにお兄ちゃんたちは僕らに物語を聞かせるかのように話をしてくれる。 そんなお兄ちゃんたちも神様に連れられて遠くに行っちゃったんだ。さみしいな。けどお兄ちゃんたちが戻ってこないのはきっと神様のところ
助手席を倒し、窓をあける。 木々や電柱、青空と雲が通りすぎるのがみえる。 彼はラブソングを聞きながら、私の手を握り運転する。 曲が終わり髭ダンの「I love」が流れた瞬間、太陽が顔を出す。 私は手をかざすと隙間から太陽を覗き込んだ。 暖かな日だまりと彼の優しい歌声に包まれながら、また青空や雲が通りすぎるのを、ただ見つめていく。 そして今日は自分にとって特別な日となった。
「お誕生日おめでとう」 ロウソクの火を消す。それと同時に部屋の明かりがついた。 「今日で何歳になるの?」 「26だよ」 そうか、もう26か。もうそんなになるのか。 友人は突然涙ぐむ。 「どうした?大丈夫?」 「いや、こうやって無事に誕生日を迎えることが出来たから、嬉しくて」 ありがとう、みんな。そうだよね、オレ、みんながいなかったら、あの時下手したら死んでたかもしれない。 あの事があって改めて思った。 オレはなんて恵まれているんだろう。 家族 友達 仕事