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ジェイミーの感想-ディーンについて-

推し、あまりにも、あまりにもだったから分けましたわよ…まとめきれない乱文。

ディーン

ディーンサイテ~~なんだけど、最低になった背景を想像させる最低さがありました。私は急用で矢部ディーンは観れなくて、もっぱら流司ディーンを観ました。流司さんがパンフレットでディーンのことを「人が大好きなことがわかる」と言ってたのが、素敵な感性だなと。演じていて嫌になるくらい最低な役を思い切り最低に見せられる徹底ぶり。そしてディーンが最低になる背景を、劇中で描かれないからこそ含ませて見せる絶妙さ。あとこれは本人の持つ気質なのか、絶妙に片田舎のクソガキ感もあり観ていて楽しかったです。
ディーンは、厳格な家庭に生まれた何かと不自由の多い子で、自分でも年齢を重ねるにつれて(もちろん反抗期真っ只中のそれもあり、そしてミミーを見てからはさらに加速して)その不自由さのおかしさに気づきながらも対処法がわからないままの子なんじゃないか…と感じさせるものがありました。ベッカは黒人だし、徹底的な差別感情は彼自身はそもそもそんなにないんじゃないかと。

ジェイミーがプリティにハイヒール見せた場面で、暇つぶしのついでのように乱入してくるディーンのいけすかなさ。ジェイミーの「ディーンあっちいってよ、あなた面白くないわ」「いや面白いさ、最高に面白い」というやり取りは一見ただの口喧嘩だけど、自分が学校の頂点に立って最高であることが自分らしさであり無意識のうちに義務になっていたディーンに思えてちょっと哀れに見える。この時点でわたしいろいろ大丈夫か?笑

『Work of Art』は唯一ディーンのソロがあり、ジェイミーの大きな壁として仁王立ちで立ちはだかるディーン、佇まいも歌声も強さ、硬さ、重さが伝わってきて非常~~~~にしびれました。颯ジェイミーは恐怖を抱きながらも勇気を出して戦わなきゃ!という感じで、ウィンジェイミーはかかってこい!という感じ。どちらも非常にひりひりする場面でとっても好きです。ディーンは「期待してるぜ」と歌いながらも上手くできたら認めてやるよみたいな余地は一切ないのが本当に嫌ですね。こういう人間そのものから出る感情を歌に乗せるの本当、うまい。

ジェイミーがやっとの思いでステージに立つのに、直前で心折りにくるディーン。ジェイミーにとって、ハイヒールは大切な誕生日プレゼントであり自分のアイデンティティであり武器。それを奪い見もせずにあっさり投げ捨てるディーン。クソですね~~クソですわ。これは演出のジェフリーさんによる発案で、アフト回で「外道すぎる」と流司さんに好評でしたが、嫌になるほど怖いいじめっ子を徹底してるのが本当にしびれる。ジェイミーにとって一世一代の初陣は、ディーンにとって馬鹿なやつを見下す余興程度でしかない。でもこの対比、終盤で逆転してるんですよね。

私は上手側のお席が多かったので、一幕最後の場面はディーンの背中をよく見てたんですが、冷やかしにきたディーンが、背中から自分とは正反対の人間が正反対の方法で自分をさらけ出す様を観てしまって、逆に自分のおかしさに気づいてしまい「違和感を抱いてしまった」みたいなのが背中から漏れてるのが印象に残ってます。解釈しすぎかな 笑

『Everybody’s Talking About Jamie』でまくしたてる11年生たちの中、一人面白くないディーン。メイクしてミミーとして登校したジェイミーに皆がわっとなる中ディーンは一人だけ何か叫ぶんだけど、ここが聞き取れなくて。私は「先生!」に聞こえたんですけど、子供らしいなと思いました。自分の思い通りにならないものに対して、大人に縋ろうとする。それに対して、ひとつ壁を越えてミミーになったジェイミーは何も怖くない。ディーンが面白くないのは嫌いな奴が人気者になってることだけじゃないんですよね。ジェイミーと生徒達を見ていて、自分のなにかが揺らぐのが彼自身戸惑いながらどう対処したらいいかわからないんじゃないか…と私は思ったんだけど。「お前なんか全然特別じゃない!」と吠えた後に「ミミー、そいつも特別じゃない」と吐き捨てるのも絞り出すように言った回もあって、理解できないものに自分の根幹を揺らがされる戸惑い…みたいなのを感じてしまった。この子もどうしようもない状況にあることを考えると辛くなります。

プロムのディーン、言わずもがなとってもオシャレ。星柄のセットアップはクロップド丈で足首出して軽やかに、シルバーのネックレスじゃらじゃら着けて、今日の俺サイコー!と家のドアを蹴破ってきたことでしょう。プロムソングのイントロで肩だけジャケット脱いで登場するのなんて、ずるいくらい華やか。こういうちょっとした仕草が本当にセンスいい。
『The Prom Song』他の男子のセリフが「あの子イケるかも!恋の魔法かけるぜ!」なのにディーンは「なんだよその服!」なのほんとクソガキだなと思います(ほめてる)。私はディーンの解釈が厳格な家庭家庭に産まれて他者より優位に立つことでしか自己を保てない子が、自分と正反対の家庭環境で自己肯定感を育まれた子が着たい服を着てやりたいようにやってるのがマジで毒で気に食わない状態だと思ってるので、ディーンが元気にクソガキやってると安心する。

プリティに言い負かされてからのディーン、いつも泣きそうで、背中から漂う惨めさ。。何を思ってるんだろう。ジェイミーの三者面談を笑って高みの見物してた時とはえらい違い。ここの立ち回りも見事で、ヒューゴがディーンを(二人は面識ないはず)警戒しているようにも同情しているようにも見えるし、ミス・ヘッジがディーンを庇うようにも見える。
小西さんのアフト回レポで「皆がジェイミーコールしてる時のディーンは、昔はいじめだったのが今は声援に変わってるのを聞いて、昔馴染みの記憶を思い返して切なくなってる」という流司さんの意図があることを知って、彼はディーンを人が大好きな子として演じてるんだなと思いました。
ジェイミーとディーン二人きりになって「俺のこと惨めだと思ってんだろ」が小声すぎて一瞬ジェイミーに聞き取ってもらえなくてもう一度同じこと言わされるの、残酷ですね。ここはハラハラしながら見ています。ここまできて自分の気持ちがまだ整理できない(16歳ならそれで当然なんだけど)ディーンに屈託のない態度で「今僕人気者だしチャンスだよ!」と手を差し伸べるジェイミー、なんて良い子なんだろう。

「俺はゲイじゃない」の苦しさも。喉の奥から一音ずつ絞り出すしかできないような。本当に流司さん、生きている人間ゆえのきれいじゃない感情表現がうまい。ジェイミーが出した手をディーンが掴むという構図ですが、8/15のマチネから突如跪くようになったんですよね。大胆すぎるだろ〜〜と叫びそうになった。この跪くのも恐る恐るやってみるみたいな回も、一発覚悟決めてからいく回もありました。ジャケット着直して仕切り直して、今までのケジメとして臨んだ後に「違うよディーン!僕がリードするの!」と引っ張られて「やってみろ!」と吠えるのが何とも微笑ましいハッピーエンドです。あんなに泣きそうでやっとケジメ着けて臨んで、ジェイミーの一言でいつものいじめっ子のディーンが戻ってくるんだもの。東京楽では跪く前に一瞬微笑んだので、あそこで心が軽くなったのかなと。
ディーンに関しては、ただの性格悪いクソガキに思えない。性格悪いクソガキなのだが、産まれてしまった家庭に従いながら、自分なりに抵抗するなかで更にジェイミーと11年生達によってその間違いに気づきながらも、しがらみが強すぎて踏み出せず、他人より優位に立つことでしか自分を保てなかったことから解放される話だと思った。
ジェイミーはディーンを救おうとして救ったのか?というと、誰もが見捨てたディーンを彼は最後まで見捨てなかったという、ジェイミーの人間性そのものと二人の11年間の関係性から出来た行動な気がします。なんて良い子なんだろう。

ジェイミーが開幕して蓋を開けたら、流司ディーンもバチバチの金髪で息の根を止められたんですけど、だんだんプリンになっていったのも片田舎のクソガキ感が出てて良かったです。東京公演が終わってから一瞬黒髪に戻ったのでどうするのかな…と思ってたら大阪はさらに白金になってました。毛根の限界に挑戦すな。眉毛までバチバチに細く明るく、相変わらず限界まで走っておられる。

ジェイミーに関する流司さんのインタビューを読んでて思うのが「下ネタは言い慣れないし、やってて嫌になるくらいの役だ」と言いながらも「企画書を読んで今やるべき作品だと思って出演を決めた」と言ってくれてるのが、そして実際これほどまでに演じてくれるのが本当に嬉しいし、がんばってるなあ…と思います。コンセプトも演出も文句ない素晴らしい作品に、お芝居もビジュアルも最高の状態の推しが出てるの、胸いっぱいになる。開幕前にインタビュー読んでいて、これは絶対に良い経験になるな~などと上から気味に思っていたのが、逆に私が作品を通して考えたことや学んだことがたくさんあって、私が良い経験させてもらいました。こんなに深く考えられる程にディーンを演じてくれたことが本当に嬉しいです。

東京公演のおしゃしん↓

そのほかの登場人物の解釈↓

作品全体の感想はこちらで↓