農業における排熱の利用の例をご紹介
トクイテンでは新規の農地を探しています。土地の条件として以前二酸化炭素(CO2)が欲しいという話を書きましたが、暖房の補助になる熱源も欲しいです。今回は農業における排熱の利用例について紹介します。
🏭工場や焼却場の排熱利用
工場やゴミ焼却場の熱は今もプールやお風呂の加温、装置の予熱などに活用されていますが、農業でも活用されています。排熱でお湯を作りタンクに溜めておいて冬場の夜の暖房に使います。また外気より常に暖かくしておいてバナナやコーヒーやアボカドなど熱帯地域の作物を栽培する例もあります。
越後バナーナ - 排熱利用によるバナナ栽培
新潟県の雪国でバナナを栽培する「越後バナーナ」プロジェクト。ここでは、工場などから排出される余剰熱を活用してバナナを育てています。
特徴: 雪国特有の寒さを克服し、環境に配慮した持続可能な農業を実現しています。排熱利用により、温室効果ガスの削減にも寄与
トヨタの工場排熱利用によるイチゴ栽培
トヨタの施設では、工場の排熱とCO2を活用してトマトとイチゴを栽培しています。このプロジェクトは、営利ではなく、技術を用いた地域貢献を目的としています
八ヶ岳みらい菜園における排温水利用の事例
八ヶ岳みらい菜園は、カゴメ株式会社富士見工場の隣接する遊休農地で、新しい農地利用を目指して2015年10月に設立されました。約9ヘクタールの園内では、「カゴメ高リコピントマト」をはじめとする生鮮トマトの栽培や、ブロッコリーや寒締めホウレンソウなどの八ヶ岳高原野菜の露地栽培と販売が行われています。
技術的詳細: 八ヶ岳みらい菜園では、隣接する工場の排温水を利用して、高効率な暖房を実現しています。熱回収可能なヒートポンプを導入し、ハウス農園での生鮮トマト栽培の暖房に活用することで、省エネを達成しました。さらに、夏期にはこのヒートポンプを用いて夜間冷房を行い、収量のアップにも繋がっています。
コスト削減の効果: 導入により、ランニングコスト(暖房時)が約20%削減されました。冷房が無いハウス栽培に比べ、トマトの収量アップにも寄与し、これはビジネス面でも大きなメリットにつながっています。
PDF: https://www.jeh-center.org/asset/00032/monodukurinidenki/vol7_yatsugatake.pdf
佐賀市におけるCO2の再利用と農業でのカーボンニュートラル実現への取り組み
佐賀市では、ごみ処理場(廃棄物焼却施設)で発生するCO2を農業分野で有効活用するバイオマス事業を進めています。この取り組みは、資源循環型社会の創造を目指しています。
CO2の分離回収: 廃棄物焼却施設から分離回収されたCO2は、純度99.5%以上で、食品添加物の基準もクリアしています。
農業への応用: 分離回収したCO2は、清掃工場周辺の植物工場や藻類培養施設へ供給されています。この結果、キュウリの収量が全国平均の約4倍になるなど、農業分野でのCO2活用の有効性が証明されています。
経済的影響: このプロジェクトは、佐賀市清掃工場の周辺に新たな産業を生み出し、経済波及効果は54億円以上に上ると言われています。
♨️ 地熱・温泉熱の利用
日本は温泉が豊富なので温泉の利用は有力です。熱湯でなくても20度程度の水でも十分加温や保温に使えます。
鳥取市のスマート農業イノベーション「いちご栽培」
メイワファーム HYBRIDが、地下温泉熱を活用した環境に優しいIoT農業による「いちご」栽培を行っています。このプロジェクトでは、地下温泉熱を利用することで、ボイラーなどの暖房設備を使用せず、地球環境への負荷を軽減しています。また、IoT技術の導入により、データ管理・分析を通じて農業の省力化が達成されています
特徴: 地元の地下温泉熱を活用した環境に優しいIoT農業。いちご栽培などでボイラー等の暖房設備を使用せず、地球環境への負荷軽減に貢献
温泉熱を利用した熱帯果樹栽培
島根県松江市と島根大学が連携し、未利用の温泉熱を利用して熱帯果樹を栽培。
特徴: 温泉熱の活用により、環境への影響を最小限に抑えながら、地域の新たな特産品を創出しようとする試み。
🚰下水熱の利用
下水熱利用の研究概要(長岡技術科学大学大学院)
下水の持つ熱エネルギー(温度差)を利用することです。下水処理場には大量の下水が安定的に流入し、大きなエネルギーを持っています。下水処理場では、放流水の利用が可能で、バイオガス等と併用した活用ができます。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001324473.pdf
🐮堆肥熱の利用
堆肥の山は発酵により熱が発生します。条件によっては60-80℃程度まで上昇します。
バーク(樹皮)を用いた発酵熱エネルギーの利用
(株)吉良セイショーでは樹皮を中心とした堆肥を使い熱を発生させ、空気や温水という形で暖房に利用をしています。
PDF: https://k-rip.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2011/12/1955daed269e03610241def270f41e30.pdf
さいごに
重油代は30年前には25円程度だったものが現在は100円前後とかなりの高騰をしています。トクイテンではすでに堆肥熱の利用は実験を始めていますが、費用対策としても資源の活用という観点からも今後も継続して取り組んでまいります。
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