【詩】2024.5.19 静かな乱雨

 「今日も一日、生きなきゃな」

 どよんと沈んだ景色を眺めて

 重苦しい胸をギュッと抑える

 静かな静かな明け方に

 シャァシャァと降る雨音だけが

 ただひたすらに、生きている

 空では

 暗く染まった雲たちが

 死んだようにホカホカと

 ただひたすらに、息をしている

 窓のサンには蟻が一匹

 ただひたすらに、眠っている

 直に熱が伝わって、胸が苦しくなる

 こんな世界の端っこで

 ただただ意味もなく

 生きている

 こんな僕の存在に

 価値は在るのだろうか

 そっと自分に問いかけてみる

 ギュッと唇を噛み締めると

 心臓から溢れ出すように

 大粒の涙が零れてきた

 その時 どこからか

 「涙雨だ、涙雨だ。あったかい」と

 嬉しそうな声が聞こえてきた

 見ると

 目覚めた蟻が

 雨の落とし物を

 ペロペロペロペロ舐めていた

 その姿に少しだけ

 僕の心が温まる

 「さぁ、今日も生きるか…!」

 パッと傘を広げて

 一歩外に踏み出すと

 冷たい冷たい雨が

 ポチョンと頬に落ちてきた

 けれど

 透明なフィルター越しに

 仰ぐ空は

 真っっ青だ

 どこまでも爽やかな

 綺麗な蒼色

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