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原稿をEPUB化して電子書籍を作るぞ! と思ったときに調べた情報の備忘録

 リフロー形式(小説などの電子書籍によくある、1ページの表示を端末の画面サイズに合わせてくれる)の電子書籍を作るうえで、EPUB化は外せません。

 なんといっても電子書籍用のファイル形式ですから。
 どの販売・配信サイトでも利用できて、しかもレイアウトが崩れにくい。またEPUBファイル自体を配布することもできますね(EPUBリーダーはたくさんあります)。


EPUBファイルを作成する方法

 KADOKAWA直営の電子書籍サイト「ブックウォーカー」が出しているセルフ電子出版の情報まとめを参考にしています
https://sites.google.com/a/bookwalker.co.jp/epubguide/


・ロマンサー
(Word→EPUB)
 ロマンサーは、まんまWordファイルをアップロードして変換してもらってEPUBファイルをダウンロードできるWEBサービスです。お手軽! 無料会員でも十分に機能が使えるので問題はないかと思います。
 Wordファイルでのルビ振りや目次がそのまま使えるので分かりやすくていいですね。
https://romancer.voyager.co.jp/


・一太郎
(原稿データ→EPUB)
 日本語ワープロソフトとして最強と名高い一太郎。
 同人誌発行にも強いと聞いていましたが、電子書籍にも使えるようです。cssの編集ができず不自由という声もありますが、基本的なレイアウトで構わない場合は良い選択肢に思います。
 メーカー製の有料ワープロソフトなので、紹介した中でメーカーサポートが受けられる唯一のソフトかも。
https://www.justsystems.com/jp/products/ichitaro/


・でんでんコンバーター(マークダウン記法のテキスト→EPUB)
 テキストファイルをEPUBに変換してくれるWEBサービス。
 独特なマークダウン記法(でんでんマークダウン記法)に従ってtxtファイルの文章全体を修飾する必要があります。
 とはいえ、マークダウン記法自体が「見出しや段落を簡単に設定する」ために設計されたものなので、とても簡単に作業が終わります。「##見出し」とか「{ルビ|るび}」みたいな記法ですね。
 cssファイルをアップロードすることもできますから自由度も高いと言えそうです。
https://conv.denshochan.com/


・Sigil(EPUBエディタ)
 EPUBエディタ。最初っからEPUBファイルを作成できるエディタです。
 ワープロソフトと似たような操作でxhtmlタグの編集ができるので直感的。EPUB3形式にも設定可能で、ルビ振りや目次の作成など必要な作業は全てSigilのなかで完結します。
 cssもxhtmlの編集もできるみたいなので自由度は最も高いでしょう。多機能なぶん複雑なので慣れるまでは大変そうです。
https://sigil-ebook.com/

 基本的にはSigilかでんでんコンバーターのどちらかを使うのがいいかなと思います(無料ですし)。


EPUBを作るコツめいたもの

 私はでんでんコンバーターを利用しましたので、でんでんコンバーター利用の上でのお話です。
 私も勉強中なので勘違いがあるかもしれませんが、EPUBファイルを作る上でのコツめいたものを。

・ファイル分割をちゃんとする
 改ページは「ファイル分割」で行います。(でんでんマークダウンでは「(空行)===(空行)」)
 普通に原稿を作るなら章ごとに分割することになると思います。
 乱発はしないほうがよさそう。

・目次ページの場所を入れ替えるときはEPUBを展開する
 こちらのページによくまとまっておりました。
でんでんコンバーターで目次を前書きの後ろに置きたいとき - 西海ハシル個人サイト~Life is Creativity

 EPUBファイルを展開し、content.opfというファイルのspineタグ内部を入れ替えるだけです。このタグ内の並び順で電子書籍が表示されているんですね。
 xhtmlファイルはChromeでも開けるので、内容をチラ見してファイル名を望む順序に並び替えてください。

※注意:Sigilは使わないで、という記載がありますが、2021年現在SigilはすでにEPUB3の日本語機能に対応しています(設定は必要なようです)。
 分からない場合はSigilを使っても良いと思います。

・ルビ振りは割る
 css次第かもしれませんが、単語すべてに一気に振るのではなく、なるべく一文字二文字ごとに振り分けるといいです。

「{東京特許許可局|とうきょうとっきょきょかきょく}」
「{東|とう}{京|きょう}{特|とっ}{許|きょ}{許|きょ}{可|か}{局|きょく}」

 ルビが振られた漢字はひとまとまりとして扱われるので、表示によっては改行されたときにゴッソリ次の行に持っていかれる場合があります。ルビを細かく振れば、ちゃんと分割されてくれるので楽ちん。
 でんでんマークダウンでは「{東京特許許可局|とう|きょう|とっ|きょ|きょ|か|きょく}」で自動的に各々の漢字へルビを割ってくれます。便利!


理屈で考える「良いEPUBファイルの作り方」

 Sigilの解説とかファイル分割とかでちょくちょく触れていたのですが、改めてきちんと解説します。

 EPUBファイルとは、特殊なルールで作成されたzipファイルです。(非圧縮のminetypeファイルが階層トップにあって、文書データなどを収めたフォルダが構成されている形)

 で、文書データはxhtml形式で保存されています。
 xhtmlとはウェブサイトなんかのソースに使うhtmlを機能拡張したものです。

 つまりリフロー型のEPUBは、ウェブサイトと同じ作りになっています。
 確かにウェブサイトも端末の画面に合わせて文字数表示を変えてくれますからね! 同じ理屈だったのか!
 実際、EPUBのフォントや行間なんかはcssファイルで定義します。まんまWEBサイトと同じですね。(もちろん完全に同じではなく、EPUBでは使えない機能などもたくさんありますけどね!)


 余談ですが。
 Wordファイルはxml言語といって、xhtml言語と共通祖先のマークアップ言語で文書データを保存しています。なのでWordファイルをxhtml言語(EPUBファイル)に変換することが可能ですし、Wordファイルで設定した一部修飾が変換後に消えてしまうことが起こります。
 分かればなんてこともない理屈ですね。


 さて、上記の理屈を下敷きに「良いEPUB」とは何か考えてみますと。
・エラーがない
・本文修飾はcssで一元管理されている
・一つ一つのxhtmlファイルが大きすぎない(ロードに時間がかかる)
・ファイルの数が無駄に多くない(メタデータの割合が増える)
 ……って感じが考えられそうですね。


 Sigilではこのxhtmlファイルを直接いじくり回すことができるようです。
 原稿データに関係ない作業を減らしたい場合はでんでんコンバーターを、
 作成物にきっちり手を入れたい場合はSigilを選ぶと良さそうですね。

 お好みで良いと思います。
 せっかく労力をかけて作るのですから、いいEPUBを作って快適な読書体験を提供しましょう!

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