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(2023/07/24/月)十字型石器

十字型石器についての備忘録


昨日見に行った十字型石器について。

 昨日紹介致しました『十字型石器』は、『宮崎県立西都原考古学博物館』の壁側の一画に展示されている遺物です。

 同じ壁側に展示されている『十字型石器』以外の遺物は、『石棒』と『土偶』でいずれも縄文時代後期の祭祀具だと言われている遺物で、黒を基調とした展示スペースと、デザイン性の高い背景の雰囲気も相まって、重厚な雰囲気のある展示です。

 以前学芸員の方や県埋蔵文化財センターの方に聞いた話によると、この遺物が何か、正確には判らないと言う事でした。

『+』と『×』マーク

 この遺物は昨日書いた通り、縄文時代後期(約4.000年~3.000年前)の遺物です。

 この遺物は+の形その物ですが、古代~近代までの『+』と『×』マークの使われている事例は以前調べた本に写真付きで載っていて、本の著者はこの『+』『×』模様については下記の様に考えられている様です。

✖は有史以前から悪霊を断ち切り自己のの安全性を守る呪符だったと考えられる。

魔除け百科 かたちの謎を解く
著作者 岡田保造  
発行者 小林武彦  
発行所 丸善株式会社

 博物館の遺物に添えられた紹介ラベルにも『詳細は不明であるが、祭祀具、石斧、土堀具などの用途が考えられる。』と書かれているので、後世で使われた『+』と『×』のデザインの原型の遺物かも知れません。
(全く関係ない可能性も有りますが…)

 民族学者の柳田国男氏は『×』のデザインの事をアヤコ・アヤツコと呼び、彼が生きていた時代(1875~1962)にはまだ、宮参りの時等に魔除けとして子供の額に『×』印を書くと『阿也都古考(あやつここう)』で紹介されていますが…。

 上記の風習と、この縄文時代の遺物が造られた時代との間には、約4000年の開きが有るので、この縄文時代の石器の『×』デザインと、近代まで使われていた『×』デザインの目的や意味が、同じ意味で使われていた物かどうかは判りません…。
(縄文~現代まで歴史が移り変わる中で、文化・風習の断絶・変容が起こっている可能性を考えると、現代とはかなり違う意味を持つデザインの可能性も有るかもしれません。)

 発掘された遺物の意味や、使用用途について考える事がどれだけ難しいかについて、考古学者の方が書かれた文章を以前紹介したのでリンクを貼っておきたいと思います。

用途不明の遺物について言及された資料
間・遺跡・遺物 わが考古学論集1 昭和58年7月10日発行
編者・麻生優 製作・株式会社溪水社
119ページ トロトロ石器考 岡本東三
こちらのリンクは以前書いたnoteの記事へのリンクになります。

遺物を調べる理由 

 話が長くなりましたが、私はこの様な用途不明の祭器と言われる遺物やそのデザインに強く惹かれるので、この様な意味深なデザインを探したり調べたりしています。

 ……余談ですが、『祭器』と呼ばれる遺物の中には、用途不明で分類ができないので、資料として分類する為に『祭器』としてラベリングされている遺物も有ると、以前県埋蔵文化財センター職員の方に教えて頂きました。

 つまり、これらの用途不明の道具は、実際は斧の様な単なる道具であって、機能的な意味以外の意味は何も無い可能性も有り得ると言う事です。

 それもまた、面白デザインの道具を使っていた時代が有ると知る事ができると言う意味では凄く面白いと思います。

 変わった作品(発掘された遺物)にどの様な意味が有って、どの様な用途が有ったとしても、この様な面白いデザインの作品を作ったクリエーターが過去に居たと言う事自体が面白いと思います。

 又、色々と資料を調べる作業の過程で色々な人と有ったり、面白い資料と偶然に合う事が有るので、実際はこの遺物の意味その物と言うよりも、この遺物を調べる過程がかなり面白いので、今後もこの様な作業を行って行きたいと思います…。

 私は元々美術(彫金)について勉強していた者ですが、この様な考古学の分野(民俗学・文化人類学)も凄く面白いなーと思って色々と資料を漁っています。
(そこで得た知識やデザインを生かして物作りを行いたいと思います)

 又、この×印に関しては、×の描かれた遺物が出土した遺跡の正式名称自体は幾つか判っているので、遺跡名から調査報告書を調べて当時の考古学者の方々が、それに対しどの様な見解をしたのかを調べてみたいと思います…。
 
 日本国内で発掘が行われると『調査報告書』が作られてPDFで公開されるので、遺跡名がさえ判れば、当時の発掘の状況・発掘に関わった考古学者の方々の所見・その日の天気まで詳細に記載されているので面白いので私は好きです。

 図鑑や図録も見易くて面白いのですが、第一次情報を知りたい方は面白いと思います。

2023/07/24/1600頃(?)~1827



最後まで読んでいただきありがとうございます。 作品製作をしているので、サポートいただけたら創作活動に関する費用にしたいと思います。