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(2024/05/25/土)双脚状石製品(岩手県洋野町宿戸遺跡出土)



双脚状石製品(岩手県洋野町岩戸遺跡出土)

 こちらの岩手県洋野町の宿戸(しゅくのへ)遺跡から出土した、『双脚状石製品』と呼ばれる遺物です。

 おととい、作品製作の参考にしたいと思い、宮崎県都城市の上平遺跡出土の前平式土器に有る修正穴を見ていて、以前、宮崎県立博物館で開催された特別展「発掘された日本列島2022」で撮影した、こちらの石器を思い出したので、もう一度、調べてみる事にしました…。

写真を撮影したイベントについての情報
文化庁ホームページ>行事・シンポジウム >
「発掘された日本列島2022」展の開催のお知らせ

2022/12/11に撮影した写真
同じ遺跡で出土した遺物
2022/12/11に撮影した写真
こちらの石製品が、『双脚状石製品』です。


双脚状石製品とは?

 下記の本は、特別展「発掘された日本列島2022」で購入した図録です…。

 こちらの図録の33ページに、この石器に関する記事が有りましたが、画像は著作権の問題が有る為、備忘録として、文章のみ残します。

双脚状石製品
 横に貫通する穴が有り、垂飾品と考えられる。
 折れた部分を補修した穴が有る。
 早期末~前期初頭。※
 長さ4.5㌢。

※宿戸遺跡自体は、縄文時代早期中葉~前期初頭(約9500~6000年前)の遺跡の様です。

 双脚状石製品は北海道から富山県の範囲で6点しか見つかっていない希少な遺物です。
 形が特徴的ですが、起原は良く解っていません。

 玦状耳飾りはリングの一部が切れた形のもので、耳に穴を開けてピアスのように装着します。
 日本全国で多数の出土例が有りますが東北で出土する縄文前期の玦状耳飾葉ろう石岩製が多く、宿戸遺跡出土の玦状耳飾3点のうちの2点と双脚状石製品は葉ろう石岩製です。
 これらの石製品に用いられた葉ろう石岩の原産地はまだ分かっていません。

遺跡に関するお問合せ先:(公財)岩手県文化復興事業埋蔵文化財センター
TEL.019-638-7001

2022/12/11に撮影した写真
こちらの石製品が、『双脚状石製品』です。

 …つまり双脚状石製品は、遺物その物も、そのデザインの意匠も、石材の産地も、何一つ分かっていない、謎の遺物だと言う事が解りました…。

 そういえば…、この遺物を撮影した時に、文化庁の職員の方に、この遺物について聞いた時に、何も判っていないと言われた事を思い出しました。

 改めて、この文章を読んで、本当に何も解っていない、謎の遺物なんだな~……と、しみじみ感じました。



宿戸遺跡発掘調査報告書

 奈良文化財研究所 全国遺跡報告総覧のHPで、双脚状石製品が発掘された、宿戸遺跡の調査報告書を見つけたので、備忘録として、ここに残して置きたいと思います…。

 こちらの調査報告書には、双脚状石製品の写真と石材について掲載されていました…。

奈良文化財研究所 全国遺跡報告総覧

宿戸遺跡発掘調査報告書

90838_1_宿戸遺跡発掘調査報告書.pdf
ダウンロード( 40.9 MB ) モバイル版( 23.5 MB )
※双脚状石製品に関連するページ
巻頭カラー写真図版8
-88- 双脚状石製品が出土した5号住居跡(第16図)
-139- 4 石製品
(『類例として、釧路市北斗遺跡、苫小牧市美沢11遺跡、福島県獅子内遺跡、新潟県糸魚川市入山遺跡、石川県三引遺跡、長野県中越遺跡を確認した』との記載が有るので、今後少しづつ調べてみたいと思います…。)


90838_2_宿戸遺跡発掘調査報告書.pdf
ダウンロード( 84.5 MB ) モバイル版( 13.0 MB )
※双脚状石製品に関連するページ
-346- 第260図 石製品(2)
-416- (2) 石材の解説 葉蝋石岩
-418- (ページの下部に、写真と見取り図が掲載されている) 

90838_3_宿戸遺跡発掘調査報告書.pdf
ダウンロード( 93.4 MB ) モバイル版( 25.0 MB )
※双脚状石製品に関連するページ
-70- 第7表 石製品観察表 2692
-280- 写真図版208 石製品(1)

引用表記
(公財)岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センター 2021 『岩手県文化振興事業団埋蔵文化財調査報告書726:宿戸遺跡発掘調査報告書』国土交通省東北地方整備局三陸国道事務所他



双脚状石製品について書かれた資料

 …上記の図録に書かれた『双脚状石製品は北海道から富山県の範囲で6点しか見つかっていない希少な遺物』と言う文章と、『宿戸遺跡発掘調査報告書』から、以前にも出土例が有る事が分かりました。

 早速、他の出土例について調べる為、奈良文化財研究所 全国遺跡報告総覧のトップページで『双脚状石製品』について検索した所、一番上に、『寺宇根遺跡』(島根県奥出雲町)の調査報告書がヒットしました…。

 PDFファイルをDLして読んでみると、そこに双脚状石製品について考察された面白い記載が有ったので、備忘録として残して置きたいと思います…。

奈良文化財研究所 全国遺跡報告総覧

寺宇根遺跡

14525_1_寺宇根遺跡.pdf
ダウンロード( 56.9 MB ) モバイル版( 24.1 MB )
-92- 寺宇根遺跡出土双脚状石製品について
富山市教育委員会埋蔵文化財センター 藤田富士夫
※92~97ページの間に、双脚状石製品についての考察が書かれています。

引用表記
奥出雲町教育委員会(埋蔵文化財調査室) 2008 『尾原ダム関連埋蔵文化財発掘調査報告書6:寺宇根遺跡』奥出雲町教育委員会

 上記の文章で藤田富士夫氏は、『双脚状石製品』が他の遺跡で『岩偶』や『人形ペンダント』と言われている事を紹介されていています。

 その類例が多く掲載されている文章の為、大変為になりました。

 


直接見た事が有る岩遇(双脚状石製品の仲間?)

 上記の調査報告書で、『双脚状石製品』が他の遺跡で『岩偶』や『人形ペンダント』と言われていると言う事を紹介しましたが…

 私も岩遇については、以前、宮崎県埋蔵文化財センターで見た事が有るので、ここに備忘録として、岩遇が発掘された遺跡名と、遺物の写真を残して置きたいと思います…。
(現在(2024年5月時点)は展示内容が変わっていて、展示されていません。)

岩遇が発掘された竹ノ内遺跡(宮崎県宮崎市清武町)を紹介するパネル

2023/08/23に、宮崎県埋蔵文化財センター分館で撮影した写真です。

竹ノ内遺跡で出土した遺物を並べた展示ケースと、2体の岩遇。

2023/08/23に、宮崎県埋蔵文化財センター分館で撮影した写真です。
2023/08/23に、宮崎県埋蔵文化財センター分館で撮影した写真です。
2023/08/23に、宮崎県埋蔵文化財センター分館で撮影した写真です。
2023/08/23に、宮崎県埋蔵文化財センター分館で撮影した写真です。



感想

 今回、東北地方出土の『双脚状石製品』について調べましたが、それが、九州地方の『岩遇』に関連する可能性が有る遺物だと言う事を知る事になるとは思いませんでした…。

 こうやって、調査報告書等で遺物について調べていると、更に興味の有る遺物に関連する知識を得る事が出来るので面白く、辞められません…。

 又、今回、以前撮影した遺物を見返した事で、その中に、今後作品を作る際に、作品の作風に使えそうな表現や、作品として作れそうなカタチを多数見付ける事が出来ました…。

 今後、それらの遺物を使って、何か作品を造ってみたいと思います。


 





2024/05/24/金~2024/05/25/土/0933投稿
最近はただの日記になっていますが、自分自身と作りたい作品について更に突き詰めて行きたいので、この作業を暫く続けて行きたいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。 作品製作をしているので、サポートいただけたら創作活動に関する費用にしたいと思います。