noteの街で
私はしがないサラリーマンである。『しがないサラリーマン』という言葉にはなんとなく昭和の悲哀を感じる。その響きに酔ってしまうくらいだ。
そして、私は現実に弱い。けれど意外と強い。その上、気が短く、気が長い。きっと、読んでいる人はわけが分からないだろうが、家族など、私を良く知っている人は『そうだね』と思うだろう。
向き不向きでいうと、私はサラリーマンには向いていないようだ。もうすぐ、働き始めて30年だ。よくがんばったと思う。
働き始めて10年目くらいが本当に辛かった。どうやったら、この仕事をせずに生きていけるのだろう、と日々考えていた。仕事中も、気が抜けたような時はずっと考えていた。
たまに「喫茶店を開いたらどうなるだろう…」と妄想することもあった。お店の名前はどうしようか、と考えて『rustica』がいいな、と思った。
私は、仕事を始めて間もない頃、街でフィアットパンダを見かけて一目惚れをした。それはイタリアの古い車で、見かけたものはベージュのとてもしゃれたものだった。
気になって仕方がなくて調べると、開発時の名前が『rustica』だった。"田舎の、素朴な"という意味で、私はその名前もとても気に入った。
私はnoteを始めたときにIDを『rustica』にした。
noteは「街」のような場所でクリエイターは住人。いろいろな人が、いろいろな形で住んでいる。
私はその街の一角で暮らし始めた。最初はあまり部屋から出ず、一人で過ごしていた。そのうち、街の人たちの会話を聞きに行ったり、本屋さんや喫茶店のような場所に行ったりするようになった。
そうしているうちに、私も少しずつ開かれていった。見出し部分にイラストや写真をつけるようになり、日々の暮らしのこともつぶやくようになった。
そうして喫茶店のような場所になってきたな、とぼんやり思えてきた。お店の名前は『rustica』だ。
記事の見出しに使わせていただいている絵は、喫茶『rustica』に飾っている絵画だと思っている。いつ見ても、とてもワクワクする。
自分で写真を撮ったらそれを披露してもいい。そして、自分の考えていることや、あった出来事を話す。それがお店の雰囲気となる。
お客さんはよく来てくれる人もいるし、ふらりとのぞいてくれる人もいる。やっぱりきてくれる人がいるとうれしい。
あと、やってみたいのは音楽と本についてだ。
音楽は大好きだけれど、自分の好きな音楽について語るのは思い入れが強すぎて、恥ずかしいし難しい。けれど、喫茶店に音楽が流れるように、少しずつ記事が書ければいいな、と思っている。
そして、どんな本や雑誌を置くか…。好きな本や雑誌についても書いてみたい。
私は好きなもの、面白いものを味わい尽くすのが生きがいなのだろう。楽しい日々も、辛い日々も、情けない日々も過ぎ去ればそれは面白い日々となる。そういう日々のことを集めた場所でもある。
昔は文章を書いて生計を立てられれば、どんなにいいだろうと思っていたけれど、今は自由に書けるこの場所があってとてもうれしい。
あんなに辞めたかった仕事も、自由に文章を書くために仕事は続けようかな、とも思ったりもする(圧倒的に辞めたくなる時もある)。
それに浮世離れしすぎると、本当に人と関わらなくなるので、人の世界と私を繋ぎ止めるための仕事なのだ、とも思えてきた。
半ば強引ではあるが、割と真剣にそう思っている。