青猫先生

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神様からの手紙

私の前を歩いている女性を見ていた。 その人はダボダボのスニーカーを引きずって歩いていた。 歩くたびに、 ずっ、ずっ、 と音がしていた。 その脚は腕のようにか細くて、 足はスニーカーの中で泳ぐほどに痩せていて、 サングラスを掛けた視線のその先は、 ずっと遠くの彼方をぼんやりと眺めているようで、 魂が抜けて痩せ細った身体だけが、 まるでからくり人形のように動いていた。 暫くして、その女性は ある家の中に消えていった。 その家は地元の旧家で、私が知っている家族が住んでいる

    • Piano man

      これは私の記憶に残された或る人のお話です。  毎年、夏休みになると、私は両親の故郷である地方都市に家族で帰省するのが慣わしでした。 母方の実家には祖母と伯父、義理の伯母と従姉妹達がいて、子供ながらに少々居心地の悪い気持ちで数日を過ごすのです。  そんな何度目かの夏のことです。 5つ年上のいとこは高校生になり、思春期で両親と対立するようになっていました。その人は美しくて聡明でとても優しい人でした。 母の実家に滞在する私の所在なさに気がついたのか、いとこは私を気にかけて話

    神様からの手紙