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ビジネスと看護観のジレンマ

施設看護師をしていて一番、直面するであろうジレンマはこれにあたると思う。利益を優先させるか、患者を優先させるか。

看護学校では「患者目線で」「患者最優先」と習う。
もちろん看護師として当然だと思うし、異論はない。

ただ、施設看護師としてすべてこれが成り立つかと言うとこればかりでない場合がある。
たとえばよく話題に出てくるのは
「施設は病院ではなく家庭の延長線上だから」と言う言葉だ。
これはどういう意味だろうか?
患者目線で考えるなら、患者がどこにいようと患者にとって一番良いものを選択する。それは患者の意思を尊重して良いものもあれば、時には患者の意思に背いても、医療的根拠から患者に説明し同意をとる必要も時にはある。

患者が「入浴をしたくない」と訴える。現場のスタッフが説得するも、納得されない。看護師が、入浴しないことは感染症のリスクも考えるとデメリットでしかないので入浴して頂くように患者に説明、同意を取るが、現場のスタッフには患者が嫌がっているのに無理やり入浴させられないと訴えがある。それが患者のためになると説明しても、そんなことが続くならここに勤められないと言う。会社は介護士を辞めさせてまでする必要はない。
「ここは病院ではなく、家庭の延長線上だから」

ある患者の傷の処置のために、購入してほしい物品を会社に依頼する。
「それは本当に必要なの?」
患者の創部の治りが悪く、この物品で処置したいのですが・・。
「それなら皮膚科に受診したら処置してくれるし、会社の出費はないじゃない(家族持ち)」
「ここは病院ではなく、家庭の延長線上だから」

看護観に会社の利益の有無を持ち出すと、何もしないが正解になるし、すべて病院に受診し、家族のコストで処置を行う。

施設の看護師の役割とは何なのか、ビジネスのために、人を助けているのか、もちろん給料なしでは看護師は続けられないし自分の家庭が崩壊する。
その給料は患者からの利益から、支払われていることだし、会社が赤字だと給料が支払われない。それは分かっているが、なぜか腑に落ちない。

看護とは、看護観とは私は何のために患者を助けたいと思うのか。ビジネスが合わさると分からなくなるのである。


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