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共振回路1(直列共振回路)

素子が直列に接続された時のインピーダンスはキルヒホッフの法則によって解くことができます(※キルヒホッフの法則についてはまだ書いてません、そのうち書くかも)。これを使って具体的な回路について検討していきたいと思います。最初の例としてコイルとコンデンサを直列につないだ直列共振回路と呼ばれるものについて考えていきます。

1.直列共振回路

直列共振回路はコイルLとコンデンサCを直列に接続した回路で、以下の図のような構成になります。ちなみに、コイルとコンデンサの位置が逆でも全く同じ動作になります。

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コイルのインピーダンスZ_LとコンデンサのインピーダンスZ_Cはそれぞれ以下の式で書くことができます。ここで、2πfを毎回書くのが面倒なので角周波数ω=2πfと省略して記述することとします。

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この回路は、低周波極限f→0ではコイルがただの線(Z=0Ω)に見えるため、コンデンサだけの回路のように動作し、インピーダンスが高くなります。逆に高周波極限f→∞ではコンデンサがただの線(Z=0Ω)に見えるためコイルだけの回路のように動作し、インピーダンスが高くなります。それでは、この間の周波数で何が起こっているのでしょう。これを知るためにはこの回路のインピーダンスを計算する必要があります。回路全体(コイルとコンデンサの直列接続を一つのブラックボックスとみたとき、そのブラックボックス)のインピーダンスは以下の式で記述されます。

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この式より、直列共振回路はω=ω_0というコンデンサの容量CとコイルのインダクタンスLで決まる周波数のときにインピーダンスが0となること、この周波数を境に分子の符号が変わるという特徴を持っていることがわかります。どうやらこの周波数で回路の動作の様子が大きく変わっているようです。この周波数f_0=ω_0/2πを共振周波数と呼び、共振周波数の信号が入力されたときに回路は直列共振状態にあると言います。共振周波数を約1kHzとしたときのインピーダンスのグラフは下図のようになります。

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共振周波数を境に分子の符号が変わることに対応して、共振周波数1kHz以下では位相が-90°とコンデンサ的な動作を、共振周波数1kHz以上では位相が+90°とコイル的な動作をしています。また、インピーダンスの絶対値について共振回路で使っているコンデンサとコイルについて重ね書きしたものが下図になります。低周波で直列共振回路はコンデンサのグラフと重なり、高周波でコイルのグラフと重なり、その交点が共振周波数となっていることがわかります。
以上をまとめると
・直列共振回路は共振周波数f_0を境に低周波ではコンデンサ、高周波ではコイルの動作をする。
・コイルとコンデンサのインピーダンスが同じとき、共振状態と呼ばれるコイル単体ともコンデンサ単体とも違う動作をする。
という動作をすることがわかりました。

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2.共振周波数上で起こっていること

共振周波数直上で何が起こっているのか少し見ていきましょう。共振周波数でのコイルとコンデンサのインピーダンスを計算すると、絶対値が同じで符号が逆になっていることがわかります。

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コイルとコンデンサに流れる電流は同じことから、(V=ZIの関係より)コイルで電圧降下が起こっているときにはコンデンサでは同じ分だけ電圧が上昇し、それぞれの効果が打ち消しあってあたかもコイルとコンデンサがないように見えるという状態になっています。

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また、エネルギー収支の瞬時値(電力)について考えると、コイルとコンデンサで値が逆になっており、ある時は電源からの電力がすべてコイルに吸われる代わりに全く同じ電力がコンデンサから吐き出されるという状態になっています。つまりエネルギーの観点からもお互いの影響を打ち消しあうような動作をしていることになります。

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3.直列共振回路の使い道

直列共振回路の使い道は幅広く、
 1.特定の周波数だけ通過させるバンドパスフィルタ(BPF)や同調回路
 2.インピーダンスの虚部をなくして効率よく電力を伝送する整合
 3.インピーダンスが極小となることを利用して電流を最大化できる
といった使い方がされます。

この中で最もイメージがつきやすいものとして1の同調回路をイメージ重視で考えてみましょう。同調回路のエッセンスだけ取り出すと下図のように電源から入力された信号を負荷に伝えたい回路の間に入れる場合となります。ここでいう電源はセンサであったりアンテナであったりマイクであったりと信号のもとになるものですが、ここではラジオのアンテナを考えてみましょう。また、負荷はCPU(のADC)であったりスピーカーであったりですが、ここではラジオの(検波回路を通したうえでの)スピーカーを考えます。

直列共振_BPF

ラジオの場合電源は空間からキャッチした電波のため様々な周波数が混じっています(関東では文化放送1134kHzだったりニッポン放送1242kHzだったり)。これらをそのまま検波してスピーカーに出力するとそれぞれのラジオの音が混じって聞こえてしまいます。そこで、間に直列共振回路を入れることで共振周波数の信号だけを負荷に送るといったことが行われます。
たとえば文化放送を聞きたい場合、共振周波数1134kHzの直列共振回路を間に入れ、1134kHz以外の周波数では共振回路が高インピーダンスとなり受信した信号がスピーカーに伝わらず、1134kHzの文化放送だけがスピーカーに伝わり、文化放送の音声だけを聞くことができます。実際には次回説明する並列共振回路を使って同調回路を作ることが多いようですが、動作のイメージは理解しやすいのではないかと思い、このような書き方をしてみました。

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